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 俺は間違ってない。

 生きてるか死んでるか、さらに居場所も分からぬものを探すために危険を犯すなど……

 

 考えられない。

 

 

 同年 5月19日 11:00 千葉エリア

 

 初めは他人行儀だったディアとエマも、ルイスたちと言葉を交わしているうちにそれは薄れて行ったようだ。

 特に、子供好きのルイスにはいち早く懐いたんじゃないかと思う。彼女の言動はアレだが、他人思いの優しいやつだってのは俺もよく分かってる。

 

 そんな優しいやつがわざわざ死にに行こうとしてる。

 どうしたら止められる。

 考えても考えても、答えは出ない。

 

「ああ、クソ……」

 

 俺は皆も寝静まったであろう時刻、1人で水を飲んでいた。

 大昔、酒が貴重でない頃ならきっと酒に溺れていたに違いない。

 

「ねえ、ヴァル」

 

 ふと声をかけられ、顔を上げれば困ったように笑うエリスがいた。

 

「どうした?寝てたんじゃないのか?」

「ちょっと、寝付けなくて……」

「そうか。で、何の用だ?死地に行こうとしている姉を止めるアドバイスでもくれるのか?」

「それは、難しいね。でも――」

 

 彼女はそこで言葉を切り、俺の頭に触れる。

 

「お姉ちゃんがごめんね。痛かったでしょ?」

「あのときのか。安心しろ、そこまで強くされてない」

「そっかー」

 

 自分のせいでもないというのに、わざわざこんなことを言いに来るなんてエリスらしい。

 見えないところで支え合う姉妹の姿、か。

 

「私はさ、ヴァルが言ってることも、お姉ちゃんが言ってることも間違ってないって思ってる」

「なんだそれ。どっちでもいいってことか?」

「あはは、そうなのかもね。でさ、私は2人とも大好き。ううん、2人だけじゃない。家族みんなのことが大好き。誰にも死んで欲しくないって、心の底から思ってるの」

「だったらやはり帰るべきなんだ。ディアとエマには申し訳ないが、人探しは諦めてもらって――」

「だからこそだよ。あの子たちの立場になって考えてみるとさ、もうその人しか残ってないんだよ。私たちが代わりになってあげるのは出来なくはないのかもしれないけど、やっぱり本当の家族じゃないでしょ?そう考えると、あの子たちが可哀想っていうか……」

「お前も探しに行くつもりなのか?」

「分かんない。ヴァルが私たちを大切に思って、守ろうとしてくれてるのは知ってる。外はどうしたって危ないし、少し慣れてきたって言ってもまだ怖い。

 本心ではもう帰りたいって言ってるのかもしれないけど……んー、やっぱり分かんない」

 

 エリス自身、まだまだ考えが纏まっている感じでは無いらしい。

 足を揺らしながら、精一杯言葉を捻り出そうとしている。

 

「あーダメだー。私バカだから何にも考えらんないや。

 でもこれだけ、これだけは分かってる!」

 

 彼女は突然立ち上がり、俺をビシッと指さしてこう告げた。

 

「みんなみーんな大好き!ヴァルのこともお姉ちゃんのことも、他のみんなも。そしてディアとエマも。みんなが幸せになれる方を選んでね、リーダー!

 じゃ、おやすみー!」

 

「なんだよ、それ。結局は何も変わってないじゃないか」

 

 その部屋にもうエリスは居ない。

 真昼間だってのに、嵐のように騒がしいやつだった。

 

「幸せになれる方……諦めるか、探しに行くか。どっちだよ……」

 

 俺の呟きに答えるものは居ない。

 さらに深く迷う結果となり、何も決まらぬまま時間だけが過ぎてゆく。

 

 1時間

 

 2時間

 

「このままじゃダメだな。少し眠るか」

 

 1時間

 

 2時間

 

 3時間……

 

 刻限までおよそ3時間。

 目が覚めて広場に顔を出せばルイスが武器の手入れをしている。

 他には誰もいない。

 本当に1人でも行くつもりなのか……

 

 俺は鍛冶場に戻り、再び思考の海に潜る。

 

 ディアとエマのこれからを考えるなら、きっと探しに行くべきなんだろう。

 でもそれだと、あてのない旅になる。

 シェルターで待つ家族のこと、自分たちの命のことを考えるなら行くべきでは無い。

 あの子たちだって、無謀なことくらいは分かっているはず。

 でも、あんなに幼い子に我慢させるのか?

 

 1人の男、ヴァルとしての考えと、シェルターのリーダーとしての考え。

 どちらも俺の考え。

 心の中でシーソーのように揺れ続けている。

 どちらを取るべきか、未だ決めかねている。が、

 

 無情にも、時間は待ってくれない。

 

 

 同年 5月19日 19:00

 

 決断する時がきてしまった。


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