二人の男
また、暗くなった。
自分が行動することによって、ここまで暗くなるとは、考えもしなかった。
罪悪感はない。逆に、もっとやりたい。そう考えていた。
狂っている。こうすることでしか、自分の望みをかなえることができなかったわけでもなかろうに。
結局めんどくさかったから、楽に済ませようと思っただけだったのだ。
でもこれが性に合っている。
金もない。する気力もない。
逆になぜこの状況で、こんな行動をとっているのか自分でも理解に苦しむ。
それでも。僕はこの行動をやめるつもりはない。
なぜなら。
もう、少しだけ、見えてきているからだ。
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「今夜、金剛武さん35歳が、体を強く打った死体で見つかりました」
そんな音声を背に、金剛剛はギターを弾いていた。
______関係ない。そう思っていた。
武は剛の兄だ。それでも、何も思えない。
何か理由があるに決まっているからだ。
剛と武は、別居していたが、それなりに関わりはあった。しかも、仲もよいほうだった。
しかし剛は理由があるものは憎まない、がモットーだ。
身内が殺されてしまったとしても、憎むことはなかった。
いや、憎めなかった、が正解だ。
自分の決まりを守らないといけないという義務感が人間らしい心より大きいのだ。
だから今までも、人並みに生きてこれなかった。
でも、剛はこれを悪いことだと思っていない。
自分の考え方に誇りがあったからだ。
だから剛はギターを弾き続けた。