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9条  作者: paparatchi
8/9

最後の武器

戦争に敗北した日本政府が、最後の抵抗に用いた武器。

それは、日本語です。


英文の9条を読む限り、日本の武装解除は必至であり、二度と軍を組織することなどあり得ませんでした。

しかし、今日、確かに自衛隊は存在し、「専守防衛」の下ではありますが、日本国を防衛し得ています。


では、如何にしてそれが実現しているのか。

その答えは、憲法9条の日本語の条文の中にあります。


ーーーーーーーーーーーーー

日本国憲法 

第9条


1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.


2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.

ーーーーーーーーーーーーー


9条に散見される「これ」という単語。

「国権の発動たる戦争」という不明瞭な言葉。

一見、英文と日本語文を読んだだけでは、わからない微妙な意味の違い。

これらは全て、日本政府がわざわざ挿入し、9条の意味を意図的にわかりにくくした上で、自衛隊の存在を合憲にしてしまう要素が見受けられています。


文中にある「これ」とは何を意味するのでしょうか。

英文を日本語訳しただけの読み方をするならば、「be」の和訳と捉える為、単に直前の文節にかかるものと取る事ができます。


しかし、英語を日本語に翻訳する場合、「be」という単語は本来前後の文脈で判断される単語であり、わざわざ「これ」と訳すことは稀と言えるでしょう。

加えて「これ」という単語は、「=be」という意味だけではなく、様々な使い方ができる、汎用性の高い単語です。


「国権の発動たる戦争」は「war as a sovereign right of the nation」に対応した文言であり、直訳すると「国の主権としての戦争」とするべき箇所になります。

すなわち、英語として読むのなら

「renounce(放棄)されるのはas a sovereign right of the nation(国の主権であるところの)war(戦争)である」

と読まれるべき文章であり、そこに「国権の発動」という単語は見受けられません。


「the threat or use of force as means of settling international disputes.」

という文節は、「国際紛争を解決する意味での力(force)での威嚇あるいは行使」という意味なので、


「国の主権であるところの戦争と、国際紛争を解決する意味での力での威嚇または行使を永遠に放棄する」

とする文言が、

「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」

と訳されていることになります。

英文の文言には一切コンマが入っていないのにも関わらず、日本語の文章には3箇所に句点が振られています。

この為、

「国際紛争を解決する手段として」

「永久に放棄する」

のは、

「国権の発動たる戦争」

「武力による威嚇又は武力の行使」

という意味が成立します。


そして、「国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使」を指す言葉に全て「これ」が当てられると考えるならばどうでしょう。


そうなれば2項の意味が変わります。

陸海空軍その他の戦力は、(存在はするが、)国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使を保持しない。

国の交戦権は、国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使を認めない。


9条が放棄すべしと謳っているのは、「国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争」であり、自衛のための戦争はこの範疇ではないという理論がこれで完成します。


つまり、9条は日本語と英語の文章で意味が違うのです。


こうした事情により、「先制攻撃」が放棄したはずの「国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争」と捉えられてしまうため、自衛隊が頑なに「専守防衛」を掲げているのです。

同時に、国の交戦権にも、「国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争と武力による威嚇または行使」が認められていない為、こちらも集団的自衛権への参加といった、他国に向けた先制攻撃の可能性のある事が出来ないことにもなっています。


日本国憲法は日本国の憲法である為、当然、日本語の条文が正文とみなされます。

それによれば先制攻撃こそ出来ないものの、自衛をする権利は保障されていることになります。


憲法第9条は、この英語と日本語に存在する若干の意味の差異を利用して、日本が自衛戦争をする権利を、UNから守りぬいた、先人の戦いの成果なのです。

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