尖閣諸島問題
先の竹島問題と同様の事例に、尖閣諸島問題があるのは、皆様もご存知のことと思います。
尖閣諸島問題はそれに輪をかけて複雑な様相を呈しています。
何故なら、尖閣諸島の係争先である台湾は先の朝鮮半島の事例と異なり、サンフランシスコ平和条約にて独立を保証された状態では無いからです。
尖閣諸島は、サンフランシスコ平和条約第3条が定めるところの、「北緯二十九度以南の南西諸島」に含まれる領域であり、現在日本国が実効支配している島嶼群になり、沖縄返還の1年前、1971年の、6月から台湾政府、12月から中国政府が領有権を主張しています。
はじめは、台湾との係争のある問題だったのです。
これが、近年では、なぜか中華人民共和国との領土係争が目立つ様になり、中国の海上保安組織、中国海警が、尖閣諸島の周辺に船を出し、現在も日本の海上保安庁と睨み合いの状態が続いています。
サンフランシスコ平和条約の元になった、カイロ宣言には、「満洲、台湾及び澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することに在り」とあります。
つまり、台湾は、もともと中華民国に返還される予定であった土地でした。
現在、台湾島を実効支配しているのは、中華民国政府でありますから、一見この道理は通っているように見受けられます。
しかし、実際には、この条文はUNが国共内戦中に認めたものである上、「清国人より盗取したる」という文言から、チャイナ、すなわち中国本土を実効支配している組織にその継承権があるとみなすことができます。
さて。何故私が、連合国、そして、国際連合という単語を今に至るまで用いず、あえて、ユナイテッド・ネイションズ(UN)という単語を用いてきたかを、ここでご説明致します。
第二次世界大戦中に連合国と呼ばれた組織と、現在、国際連合と呼ばれている組織は、同一のものであるからです。
日本人は、言葉に惑わされてこの事実を見落としがちであり、二つの言葉を使い分けてしまうと、話したい内容がぼやけてしまうため、あえて本文中ではUNと呼称してきました。
現在の国際連合は、安全保障理事会を筆頭とした国際組織であり、第二次世界大戦中にサンフランシスコ会議により成立しました。
現在、安全保障理事会には、5つの常任理事国と、10の非常任理事国の計15カ国で構成されています。
5つの常任理事国は、現在それぞれ、アメリカ合衆国、ロシア連邦、中華人民共和国、フランス共和国、イギリスこと、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国です。
カイロ宣言当時は、国共内戦の決着もついておらず、英米と共闘関係にあった蒋介石政権が、清国の継承政権としての地位にあったので、中華民国と記されています。
しかし、中華民国は国共内戦に敗れ、清国の継承政権は、中華人民共和国となり、中華民国は常任理事国の地位を剥奪され、UNから脱退します。
つまり、カイロ宣言の条文通りに解釈をするならば、台湾島は日本国から中華人民共和国に領有権が移っているはずであり、尖閣諸島は台湾島と日本の領土問題なのであるから、中華人民共和国と日本の領土問題である。
という理屈が、中国側に成立します。
つまり、尖閣諸島の領有を宣言している中国の、本当の狙いは別にあり、中国は日本と領土問題を争っている様に見えて、実は台湾の領有権を暗に主張しているのです。