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家族のかたち  作者: yoyo
19/48

兄弟だから⑵

この作品には、おねしょ描写や過呼吸描写が含まれます。

苦手な方は、ご遠慮ください。

「ヘックションッッ」

「幸司、大丈夫?風邪?」

 一緒にバイトをしている浅岡幸也(あさおかゆきや)に声をかけられる。


「いや……これは、誰かが噂してるな……」

「あはっ。1回だから褒められてるんじゃない?」

「どうだか……」




 今朝の勇の失敗を思い出していた。

 オレも勇くらいの時、おねしょやおもらしが酷くなった時期があった。


 確か……母さんがいなくなって、少したった頃……。


 勇が失敗して泣いている姿を見るたび、あの頃の苦い思い出が蘇り、少し胸がざわつく。

 漏らしちゃった朝は、恥ずかしくて悲しくて、罪悪感がいっぱいになった。

 小学生になって初めて盛大に漏らした時もそうだった。






 うそ……どうしよう……

 ぐっしょり濡れた布団とズボンを呆然と見つめる。

 幼稚園のときだって、ほとんどしてなかったのに……もう2年生なのに……それなのに……


 ドキ ドキ ドキ…

 怒られちゃう……怒られちゃう……



「幸?」

 急に後ろから父さんに声をかけられ、ビクンっと体が跳ね返る。


「あちゃ。漏らしちゃったのか。めずらしいな……」


 どうしよう……怒られる……どうしよう……

 父さんの方を見れない。



「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ハッハッハッ……」


 うまく息ができない……


「こう。落ち着いて。ゆーっくり息をして。大丈夫だから。お父さん、怒ってないよ。大丈夫」

 過呼吸を起こしかけていたオレを抱き寄せて、優しく背中をさすってくれる。



「はぁ……うっう……ごめん……なさい」

「幸はおねしょなんて、ほとんどしたことなかったから、ちょっとビックリしたな。でも、もう大丈夫だから。洗ったらすぐにきれいになるから、何も心配いらないよ」

「うっ…うっん…」

「さあ、、お風呂に行こう。このままじゃ風邪ひいちゃう」


 濡れるのを気にせず、オレをひょいと抱き上げて、お風呂場に向かった。









 そうだ……幸も盛大にやらかしてたな……確か……酷くなった時期があったんだ〟

 勇に幸司の話をしたら、昔の記憶が一気に蘇ってくる。

 あの時期は、僕も幸司も少ししんどかった。



 勇がいることで、あの時の苦さを思い出してしまうのも事実だ。

 幸司とは、勇を引き取る前に何度も話をして、決めていたけど、幸司に辛い思いをさせてしまっているかもと思うことはあった。


 それでも、勇を引き取ったことは、後悔していない。



「広くん?」

 心配そうに、勇が覗き込んでくる。


「ん?大丈夫だよ」

 勇の頭を軽く撫でる。


「うん……あ、あのやっぱりおなかすいちゃった」

「そうだね。うん。一緒に食べよう。勇、ちょっと手伝ってくれる?」

「うん!」

 笑顔になった勇を見ると、昔の苦さも吹き飛ぶ。

 そんな勇を促して、キッチンへと向かった。

閲覧ありがとうございます。

次回2月20日0時に更新予定です。

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