殺気が痛くても溺愛する。
修正しました。
君に惚れた。
俺は心の底からそう思った。
正確には、惚れ直した、だろうが。
「うん、運命だよ。」
俺はそう言い、道路に座ったままの光莉の手を取ると…
「でも今は急いでるからぁ!」
そう叫びながら走り出した。
風の音に混じって光莉の声が聞こえてくる。
「うわっ、ちょっと色々台無しー」
「わかってるよ、それは時間があるときいくらでもやってあげるから!」
後ろから聞こえてくる声に応える。
すると右手に学校の門が見えた。
門は当然閉まっていたので、
横にある小さい門を開け、
誰もいない昇降口へと飛び込む
靴を脱ぎ、上履きに履き替え、
教室へと走っていく。
光莉の手を引きながら、階段を駆け上がる。
俺たち、二年B組の教室札が見えてきた。
走っているとき聞いたが、光莉もこのクラスなんだそうだ。
教室へたどり着くと、
勢いよくドアを開けた。
クラスメイトが一斉にこちらを向く。
先生もいきなり現れた俺、そして光莉を交互に見ている。
担任の先生がいるのでまだホームルームのようだ。
「え〜と、おはようございます。
斎藤くん、それと東條さん、
二人とも遅刻ですね。」
一泊を置いて我に帰った担任の
鈴木詩乃理先生が挨拶をしてきた。
鈴木先生は、くるっとした目が特徴でショートボブの身長が低めの先生だ。
「「おはようございます。先生。」」
少し間が空いて、ほぼ二人同時に挨拶を返す。
クラスメイトの、特に男子の目線が痛い。
( ( ( どーゆー関係だ!) ) )
そんな目だ。
「えーと東條さん?遅刻理由を聞いても?」
俺の遅刻理由より光莉に聞いてきた。
少し考えていた光莉は何か悪巧みを思いついたような表情をしてから、満悦の笑顔に戻って。
「彼氏を起こしに、佑樹くんの家に行っていたら
遅くなりました。」
「「「「なっ!?」」」」
俺を含めクラスメイトが、奇鳴をあげた。
すぐさま男子から猛烈な目力を受ける。
その目は(((後で痛い目見せてやる!!)))
と言う彼女居ない男子からの殺気が主だった。
女子の転校生と言うワードを朝聞いて、
自分にもチャンスがあると思ったのだろう。
だがな、光莉は俺のモンだ!
「ソ、ソウデスカ。
一応遅刻は遅刻ですので、以後気をつけてください。」
先生はどこか諦めた様な顔をした、
こういうバカップルに何を言っても仕方が無いというのは、
確か二十八年の人生でわかっているのだろうか。
「はい!」
これまた満悦の笑みで返事をした。
いい返事だ、かわいい。
てれれれってってて♪男子の殺気が増した。
…やかましい。
「じゃあ斎藤くんは座ってくれる。」
「はい」
俺は返事をすると主人公席にドヤ顔で座ってやった。
それを確認した先生は黒板に光莉の名前を書いてから
「えー、今日から同じクラスで勉強する、
東條光莉さんです。」
「はい、東條光莉です。さっき、言ってわかったかもしれませんが、私は斎藤佑樹くんの、か!の!じょ!です。」
「ですので、佑樹くんを取ろうしたりした人は
かくごしてください、よろしくお願いします。」
ぺこり、と光莉はお辞儀した。
流石に殺すとかは言葉を選んだ様だ、でも笑顔の裏からほんのりと殺気が滲み出ている。
わかる人はわかるらしく、ちょっと身震いしたクラスメイトが、多少いる様だ。
隣の先生も引きつった笑みをしていた。
「じ、じゃあ…
えーと、斎藤くんの隣の席に座ってくれるかな。」
先生は話の途中で何か気づいた様だ。
俺の隣は今は空いている、「今は」というのは、
一ヶ月前までそこには相田さんと言う人の席だった、
30日ぴったり前に急きょ転向したのだ。
理由は俺は知らない、
まさかな…