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第5話



 まあ友梨佳は有名人だから俺が彼女とそういう関係になることは絶対にない。

 目のハイライトが戻った友梨佳は次の瞬間、むっとした顔になる。


「つまり、雄一を騙したということ?」

「まあ、そういうわけだ。それで、クラス全員に笑われてな。おまえみたいな陰キャオタクが告白されるわけねぇんだよ。ぶっ飛ばされたくなかったらさっさと帰れ、って言われてな」

「全員ボコしちゃった?」

「んなことするわけねぇだろ? こっちは普通の生活を送りたいんだからな。まあ、でもネット見ると、嘘の告白に騙されてっていうのもわりといるし、ある意味普通の生活なのかもな」


 だとしても、辛いんだけどな……。


「なにそれ、嫌な場所。高校辞めちゃえば?」

「辞めてどうするんだよ?」

「私が養う」

「……ヒモってことか?」

「うん。私に毎日おはよう、おやすみを言ってくれればそれでいい」

「なんつーダメ人間だよ」

「ダメでいいから、私のところに来てほしい」


 ぐいぐいと腕を引っ張ってくるが、俺は小さく息を吐いた。


「それは普通の生活じゃないから嫌だ」

「変な拘り」

「今まで普通の生活送れなかったからな、これからは普通に生活したいんだよ」

「ふーん……まあ、いいや。とりあえず、ごはん食べにいこ?」

「ああ、わかった」


 俺は彼女とともに外へと出て、近くの店へと向かった。



 〇



 俺が行きたかった店は、ディナーの食べ放題のお店だった。

 ……ランチでも高いのだが、ディナーになるとさらに値段が倍ほどに膨れ上がる。

 普段ならば絶対に来ない場所だ。


「……値段、たぶん三千円近いが、大丈夫か?」

「たぶん、カード使える?」

「……あ、ああ……大丈夫だな」

「それなら任せて。奢ってあげる」

「……ありがとうございます!」


 俺が両手を合わせると、友梨佳は自慢げに胸を張る。


「今のうちにたくさん貢いでおく作戦だから気にしないで」

「……み、貢いでおく? それは具体的に将来、どんな影響がでるんだ?」

「今までに奢った分の請求書と一緒に婚姻届を持っていく」

「ちらつかせるな!」

「別に? なんでもない」


 マスクで隠れていて口元は見えないが、目だけでも爆笑しているのがわかる。

 ……くそ。

 友梨佳とともに店へと入り、席へと案内される。


 思っていたよりも落ち着いた店だな。……基本的な食事はもちろん、普段俺が食べないようなものまで色々ある。


「……わぁ、肉たくさん」


 友梨佳は並んでいた様々な肉料理を見て、目を輝かせている。

 ……他の女性客たちは、ケーキやフルーツを見て、キャーキャー声をあげているんだが、やはり友梨佳はそのあたり違うな。


 彼女は皿を手に取ると、どんどん肉を持っていく。


「おまえ……ほら、もうちょっと盛り方ないのか?」

「腹に入ったら同じ」

「……な、なるほど。ほら、向こうの席の女子が――」

「私以外の女を見ないで」

「わかったから、首を無理やり回そうとするな! ……ほら、映えーな画像とか取らないのか?」

「SNSにあげるよう? ……なるほど、雄一ってツエッターやっているっけ?」

「登録はしているが……まあ、登録しているだけって感じだな」

「……なるほど。それじゃあ、私と同じように写真を撮って、ほとんど同じ時間で画像をアップしよう」

「……それで?」

「そこから私と雄一の関係を匂わせていく作戦……」

「やめろ! 俺のアカウントが炎上するだろ!」


 ……俺が全力で叫ぶと、友梨佳は楽しそうに笑っていた。

 それから彼女はマスクを外しながら、食事をしていく。……それでも、眼鏡と帽子をかけたままなので、周囲に気づかれている様子はない。


「……おいしいっ」

「そりゃあ良かった」


 ようやく、友梨佳の笑顔が見られたな。

 これだけ食欲もあれば、とりあえず精神面での影響はなさそうだな。


 問題は、友梨佳よりもあっちか。


 ――友梨佳の後をずっと追いかけてきた、男が一人いた。

 服装は一般的な社会人といった装いだ。だが、この店に一人で入ってきて、時々友梨佳のほうを見ていた。


 そして、今もずっとこちらをうかがうように見ている。

 俺はその男に気づかれないようにしながら――常にその男を見張っていた。


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[気になる点] 主人公のモノローグの淡白さに対してセリフと動きの陽キャ具合が違和感が強いというか痛い
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