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第1章 2話 ギャレット

目が覚める。ようやく見慣れてきた天蓋が視界に映る。ベッドを飛び下りると窓の側まで移動し、ぐいと押し開けた。うららかな日差しとそよ風が心地いい。

ふと、目の前の(こずえ)にいたものと目が合った。蛇だ。小ちゃい可愛い蛇さんだ。私は特に苦手な生き物はいなくて、爬虫類も両生類も平気だし、むしろ好きだ。というか、動物は大体なんでも好きだったりする。

「蛇さん、私に何かご用かい?」

少しおどけた感じで話しかけてみた。

蛇はしばらくこちらを見つめていたが、やがてふっと顔を逸らして行ってしまった。ばいばい。


さてさて、今日はなんと、義兄(ぎけい)がロス家にやって来る日である。父は何度か向こうの家に行って会っているらしいが、私は今日が初めてだ。なのでかなりワクワクしている。お兄さんが優しい人だってことは既に知ってるからね!!

優しくて冷静で大人っぽくて、ミスをしても上手にカバーしてくれて、主人公はそんな彼を兄のように慕うと共にほのかな恋心を抱いてゆく。主人公は中々自分の気持ちに気づかなくて、じれったかったなあ。

我儘なエブリンにも優しくて、彼女もそんな兄に敬意と好意を抱いているようだった。それで主人公に取られまいとばかりに突っかかって来た。面倒ではあったが可愛いかったな。


「エブリン……?どうしたんだ、体調が悪いのか」

おっと、今は食事中だった。脳内の世界に浸りすぎてしまっていたようだ。

父が少しあわあわしながら覗き込んで来る。

「いや、大丈夫です、父様。ちょっと新しい兄様のことを考えていて。」

「良かった。緊張するかい?」

「そうですね………少し。でも、それより楽しみな気持ちの方が大きいです!」

「そうか」

父はほっと息をついた。

きりりとした目が優しく細められている。口元も緩んでいて、何だか締まりがない。私はこの人のこういう表情が好きだ。


朝食を終えると、父と共に応接間に向かった。ギャレットはモルガン家という所から来たそうだ。ちなみにモルガン家は伯爵家。尚、私は彼が養子に来た理由は知らない。

向こうは既に着いていて、中に居るらしかった。

「失礼するよ」

扉が開かれると、長椅子の前に(たたず )む彼の姿が見えた。肩につかないくらいの長さで切り揃えられた、辛色の真っ直ぐな髪。綺麗につり上がったアーモンド型の目。何処となく異国的な妖美さを纏った、その少年の姿が。


「おはようございます、ロス公爵。そちらがエブリン嬢ですね」

彼は一礼してから私を見て、少し微笑んだ。ほんのり大人っぽい色気がある。まだ十一の癖に。

「はじめまして。今日から貴方の兄になるギャレットです。これからよろしくお願いしますね」

「エブリン・ロスです。お目にかかれて嬉しいです。こちらこそ、よろしくお願いします」

私もお辞儀をして微笑み返す。


「じゃあ、私は執務があるから抜けるよ。今日は他に来客の予定も無いから、ゆっくり親交を深めなさい」


と、父はそのまま出て行ってしまった。

ギャレットは、それを見届けるとゆっくりと腰を下ろした。私も、彼の向かいの椅子に身を沈めた。


静寂が訪れる。気まずい。こういう時って、何を話せばいいのかね?


私の気持ちを読み取ったのか、彼が口を開いた。

「エブリン嬢……いや、エブリン。かしこまらなくて良いよ、僕たちはもう兄妹なんだからね」

「わかりました。では兄様と呼びますね」

笑顔が眩しい。


こちらを見つめる双眸(そうぼう)は、何処か遠い夕空を移しているように見えて、明るいようで暗いようで、深くて。陳腐な言い方だけれど、そのまま吸い込まれてしまいそうな。


「どうかした?」

「いえ、何でもありません!」

ぱっと目を逸らす。私今絶対呆けた顔してたな、恥ずっ。

不思議そうに首を傾げる様子があざとい。くそ。

一人百面相をしている私を見て、ギャレットはくすくすと笑った。やん、余計恥ずかしいじゃない。

「ごめん、気をそこねないで」

心を読んだかの様に謝ってくる。別にいいのよ、貴方は悪くないのよ。

気付けばその端正なお顔がすぐ近くにあった。

「ほあっ!?」

思わず変な声が出て、極端に仰け反ってしまう。また笑われた。消え入りたい。


ふと彼が手にしている物が目にとまった。それは一冊の古めかしい本だった。

私の視線に気付いたようで、彼はああ、と言った。

「この国に伝わる神話だよ。気になるかい?」

素早く頷いた。気になる気になる。

「難しい文章だから、僕が読んであげるね」

白く細長い指が、埃っぽい表紙を捲った。


ある程度主要キャラが出揃ったらキャラ紹介を載せます。


誤字脱字など有りましたら、ご指摘頂けると有難いです。


ギャレットは厳密には横髪だけ長いデザイン

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