2.
読んでいただきありがとうございます!
初めての作品なので、誤字脱字あったらごめんなさい。
楽しんで頂けますように…✩
とても明るい場所だった。
小さな部屋にあるソファに《私》は座っている。
ここはどこだろう?
……いや、ここは……《私》の部屋?
私は……《私》は、昔の私?
7歳の私の中に《私》の記憶が一気に流れ込んでくる。
ああ!私は《私》の生まれ変わりなんだわ!
全部がはっきり思い出せたわけじゃない。
7歳の私と過去の《私》が混ざって混乱もしている。
それでも私は《私》を思い出した。
今の7歳の私より大人の《私》。
毎日仕事を頑張っていた。
頑張った週末は大好きなドーナツを買って、大好きなゲームをするのがお決まりだった。
色んなゲームをしたけど、大人になってからは乙女ゲームなるものにハマっていた。
きっと仕事で恋愛から遠ざかっていたから、ゲームでときめくのが楽しかったんだと思う。
王子様や騎士、魔法使いに執事や商人。
最後の記憶にあるゲームは様々なイケメンと、庶民から突然貴族になった少女『主人公』が恋に落ちる、いわゆるお約束なゲーム。
それでもキャラデザインがとても綺麗で、お約束な内容でも人気があった。
どの攻略対象も好きだったけど、《私》のお気に入りは無口で影がある魔法使い。
長めの前髪がクールな印象を与えるけど、黒髪に紫の瞳がなんだか色気があって……。
…………。
………………あれ?
何か引っかかったような。
……………………いや。
いやいや。まさか。
髪と瞳の色が同じだけでしょ。
私の幼馴染は泣き虫で弱虫だし。
名前……何だったかしら。
ゲームの魔法使いの名前は……。
そこでソファに座っていた《私》がテーブルから何かを取り上げる。
私は《私》の中からそれを見ていた。
手にしていたのは、乙女ゲームのパッケージ。
そして《私》は衝撃的な言葉を口にした。
『はぁ……やっぱりユアン様が1番ステキねー♡』
ステキねー♡じゃなーーーい!!
まさか!まさか!!まさかぁぁ!!
ユアンて……あのユアンなの!?
やっぱり私は乙女ゲームの世界に生まれ変わったの!?
……あれ?
じゃあ私は一体どこのどなた?
自分がマンデルソン伯爵家の子女、リズベス・マンデルソンなのは分かってる。
でもゲームにそんなキャラがいた記憶はない。
ライバルキャラはいたけど、公爵家のお嬢様だった覚えが…。
混乱する私にかまわず《私》はうっとりとパッケージを見つめ独り言ちる。
パッケージのイラストには、もちろん乙女ゲームのユアンも描かれている。
『ユアン様のこの影あるところがこう、女心をくすぐるのよねー』
《私》の言葉に私は考える。
ユアンに影があるってのは、あれよね。
確か幼い頃に幼馴染を失ったトラウマから、他人を寄せ付けないとかいう設定で。
幼馴染を失ったって……
幼馴染って私!?
失ったって…………死んじゃうってこと!?
え、え、待って、待って。
私は《私》の生まれ変わりで、私の世界は《私》がプレイしていた乙女ゲームの世界で、ユアンは乙女ゲームの攻略対象で、私はユアンの心を傷つける死んじゃう幼馴染で…………。
それって…………。
そんなことって………。
私は思いっきり息を吸い、グッとお腹に力を込めた。
そしてー。
「モブキャラな上に死んでたまるかぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
力いっぱい叫んでやった。
途端に世界は暗転し、私なのか《私》なのかは分からないけど、足元から落ちていく。
バタバタと手足を動かしても触れるものもなく、落ちるままどうにも出来ない。
なんでこんなモブキャラなのかしら!
他にも色々転生先はあったでしょうに!
せめて主人公が行きつけの、カフェの店員あたりにして欲しかった……!!
だって攻略対象達と主人公を近くで拝めるし。
そんな考えを最後に、私の意識は遠のいていった。