Quiet talk─episodeユアン─
今回は間話です。
聴いていた音楽に触発され一気に書いたお話です。
本編も頑張りますヽ(;▽;)ノ
彼女を例えるなら、月並みではあるけれど──太陽だと思う。
幼い頃、俺はひどく臆病で内向的な子供だった。
大人に何か言われれば母の後へ隠れ、兄達と遊ぼうにもすぐに泣く俺は仲間に入れてもらえず、置いていかれた。
小さな俺の世界は狭く、それを強引にこじ開け広げてくれるのは、いつだってリズだった。
家同士で親交があり、それこそ赤ん坊の頃からリズの家であるマンデルソン伯爵家と交流があったから歳の近い俺達は自然と一緒に過ごす事が多かった。
リズも末の子だったし俺を弟のように思い、まるで姉の様に振る舞っていたのだと思う。
彼女はいつも太陽の下、大きな口でそれは楽しそうに笑う。
かと思えばクシャクシャに顔を歪め大粒の涙を零しながら大泣きをする。
小さな口を尖らせて頬を膨らませれば怒っているのだとすぐ分かる。
いつでも全力で飾らず思ったままに過ごし、それでいて他者を思いやれる優しい彼女は、とても眩しかった。
だから、あの日。
俺を守ろうと小さな体で立ち向かう勇敢な彼女が。
まるで風に飛ばされた小さな枝の様に痛めつけられた彼女が。
自分にはとても――怖かった。
あの輝く太陽が奪われてしまうのだと思ったら、自分の中から恐ろしい程の絶望が溢れた。
今でもあの時を思い出すと心臓が騒つくほどだ。
それでも彼女は笑う。
傷だらけで血に濡れながら「良かった」と。
きっとこの時に芽生えてしまったんだろう。
彼女を失いたくない、大事な人だという想いと共に。
恋心と言うにはあまりに稚拙で歪なこの感情を。
人は初恋と呼ぶのだろう。
大切な彼女が幸せならそれでいい、とは思わない。
思えない。
陽だまりみたいな優しさも、溢れんばかりの笑顔も、激情に揺れる感情も、何もかも。
全てを自分のものにしたいと思う。
醜くて独善的で、優しさとは掛け離れた傲慢なこの想いは。
それでも愛と呼ぶのだろうか。
俺だけの太陽。
どうか早く堕ちてきて。
俺の腕の中へと。