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2 200X年

 200X年。地球人は異次元の住人との接触に成功した。


 しかしそれはパンドラの箱を開けることも意味していた。この接触によって、地球上の次元場が不安定になり、世界各地で次元の扉が突然開き、中から現れたモンスターによって甚大な被害を受ける『次元(ディメンション)災害(・ハザード)』が発生した。


 この次元災害の対応に頭を悩ませていた各国の首脳の前に現れたのは、『平行人類(ブラザー)』を名乗る異次元の住人たちだった。彼らは、自分たちは平行世界の人類だと説明した。実際、彼らの生物学的特徴は、地球人のそれとほとんど同じで、彼らも自分たちの星を地球と呼び、歴史もある時代までは同じだった。そのため地球人は、彼らを仲間と認めた。


 そして、平行人類はある問題に直面していた。それは、彼らの世界でも、次元災害が起こり、住む土地が失われつつあるということだ。そのため彼らは、地球への移住を希望した。その際、彼らが有する知識や技術を地球人と共有することを約束した。


 各国の首脳は集まって対応を協議。その結果、平行人類を受け入れることになった。また、彼らの移住に伴い、自分たちを『標準人類(スタンダード)』と呼ぶことに決めた。


 日本には、およそ一万人の『平行日本人』が移住を希望し、政府は彼らのための居住区『ネオつくば』を急いで整備した。また、その際、彼らの知識や技術を活かすため、各大学や企業の研究機関を誘致したところ、平行人類の科学技術の高さもあって、居住区は恐るべき速さで発展した。


 そして、200X+20年。平行日本人のさらなる移住や、周辺の市町村を吸収したこともあって、『ネオつくば』は『ネオつくば市』という巨大な都市へと変貌していた。さらに『ネオつくば市』は、標準人類を含む人口の約7割が超能力者という『異能都市』となっていた。


 超能力者の育成は、平行人類の得意とする分野だった。彼らは、超能力者の育成こそ、次元災害への有効な対策だと考えていたからだ。そして彼らの育成技術は、標準人類にも応用可能で、標準人類の超能力者も増加した。


 超能力者の増加に伴い、超能力者の管理、及び、能力に応じた適正な職務や報酬を与える必要性を感じた政府は、『超能力者ランク制度』を導入した。このランク制度は、19歳以上の超能力者が該当する『トップランク』と18歳以下の超能力者が該当する『ユースランク』に分けられた。


 トップランクでは、「個人の能力が、どれだけ社会に貢献したか」が評価の基準となっており、対モンスター戦での働きや能力を悪用する集団への対応、また、能力を活かした人助けや仕事内容などがポイント化され、レートに反映される。


 一方ユースランクは、「個人の能力の将来性」が重視され、ユースランクに関しては、対人戦での結果も評価の対象になる。


 なぜ、ユースランクでは、対人戦の結果も評価の対象になるのか?


 理由は主に二つある。一つ目は、トップランクほど対モンスター戦ができないためだ。モンスターとの戦いは、命を落としかねない危険な任務であるため、ユースは中々参加できない。そのため、同じ超能力者同士で戦うことで、能力の力量を見極めることにした。二つ目は、同年代の超能力者との戦いを通し、切磋琢磨して欲しいという願いからだった。


 もちろん、超能力者同士の戦いでも命を落とすことはある。そのため、対人戦を行うときは、一方が対戦を申し込み、もう一方がこれを了承、審判ロボットの前で互いに『決闘(デュエル)』を宣言することで、正式な対人戦として認められる。これ以外の対人戦は禁止され、罰則も設けられている。


 200X+10年から導入されたランク制度だが、導入直後から、上位ランクには、平行日本人もしくは平行日本人と標準日本人のハーフしかいなかった。超能力者の育成技術は、あくまでも平行人類向けであったため、標準人類に使えると言っても、素質を活かすまでには至らなかったのだ。標準人類と平行人類の生物学的特徴はほとんど同じである。しかしわずかな違いが、大きな差となって、2つの種族の間に存在し、標準人類が上位ランクに到達するのには、あと20年は掛かると言われていた。


 だから、山神修介が現れたときは、誰もが驚いた。修介は純粋な標準人類だったからだ。修介が現れるまでに、標準人類が記録した最高ランクと順位は、200X+16年に記録されたAランクの14位だったが、修介は中学2年のときにこの記録を塗り替え、Aランク1位でSランクへと昇格した。


 さらに人々を驚かせたのは、修介の対戦成績である。対人及び対モンスターの勝率はともに100%だった。修介は敗北を知らなかったのである。そのため『100%の男』と呼ばれ、標準人類の希望の存在として、誰もが修介の動向に注目した。


 ゆえに、修介がAランクへ降格したとの報を聞いたとき、残念がった者も多かった。


 ……当の本人は、喜んでいたのだが。

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