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40話「進路」

 ゴシゴシゴシゴシ……。


「痛い痛い、ルルたんもういいって!」

「……ダメ。ドラちゃんのよだれがついてる」


 そう言ってルルイェは、俺の唇をしつこく擦る。

 皮がめくれて血が出そうだ。


「いいよ、よだれくらい」


 むしろ、ウェルカム。嬉しいくらいだ。

 ルルイェに拭き取られる前に味見しとこう。


「ドラゴンのよだれは猛毒ですよ?」


 まるで俺の内心を見透かしたように、アイシャさんが言った。


「……舐めるとどうなりますか?」

「普通に死ぬんじゃないでしょうか」

「くっ!」


 美女のよだれ! さらば!


 ドラゴニアが去った後、皆、急に元気になった。

 本人も言っていたが、ドラゴニアは呪いを操るそうで、いなくなって呪いが解けたのだ。

 アイシャさんなんか、仮病だったんじゃないかってくらいケロッとしている。


「古竜族が実在しておったとは……。神話の存在じゃと教わったぞ」


 ライリスが恨めしげに言う。

 ボスコンが恐縮しながら答える。


「私も、そう教えられて参りましたもので……」

「ドラゴンの一眠りのうちに、人間族は生まれて死んで、また次の代が生まれてきますからね。伝説としか思えなくても無理はないかと。ましてや相手はエンシェント・ドラゴン。我々ハイエルフでさえ、その姿を直に見た者はおそらく私が初めてです」


 神妙な顔で言ってから、アイシャさんは「里に帰ったら自慢しよっと。なんとあの竜姫に殺されかかっちゃったわ♪」などと、こっそり嬉しそうに付け足した。

 不老不死で長い時を生きていると、緊張感がなくなるんだろうか。


「エンシェント・ドラゴンってなんです? 普通のドラゴンと何か違うんですか?」

「ドラゴンがどうやって生まれてきたか、以前少しお話しましたよね」


 たしかドラゴンは古き者の魔物版で、ルルイェたち古き者が世界を形作る過程でできた歪みや淀みから生まれてきたとか言っていた気がする。


「ドラゴンの中でも、最初期に生まれた方々を、エンシェント・ドラゴンと呼びます。はっきり言って、神話の世界の住人です」


 とんでもねーな。

 それ言ったら、ルルイェも同類のはずだが威厳がまったくないのでそんな気がしない。


「ドラちゃんは呪いから生まれたドラゴン。人の嫌がる事を平気でする。性格が悪い。性根(しょうね)が腐ってる」

「散々な言いようだが、幼なじみなんだろ?」


 こくん。頷く。


「昔、ご近所さんだった」


 幼稚園から同じ組で、家が三軒隣りで、母親同士が仲良くてよく家に遊びにきてた。

 くらいの言い草だが、実際は千年以上前で山三つ越えた程度は離れてそうだ。


 そのドラゴニアの家まで二週間以内にいかないと、俺は死んでしまう。

 今や俺の所有者はドラゴニアであり、主人から五キロメートル以上離れた状態で二週間が過ぎると、“魂が地獄の炎で焼かれ、この世で最も恐るべき苦しみを味わって死ぬ”と契約書に書かれている。

 何度見てもワクワクしてくる文言だ。


 ルルイェはすくっと立ち上がると、階段を降りていく。


「どこ行くんだ?」

「……塔を動かす」


 皆、息を呑む。


「どっち方面へ?」

「ドラちゃんちの方」

「……いいのかそれで?」


 ルルイェは、俺に背を向けたまま一瞬黙り込んだ。


「タケタケが死んじゃったら……ハンバーグが食べられなくなる」


 俺氏、またもハンバーグに命を救われる!


 そんなわけで、俺たちを乗せた歩く塔は、伝説の銀竜が棲むという山へと進路を変えたのだった。

……この小説、いつになったらハンバーグを食べられるんだろう。


というわけで、タケルたちの新たな旅が始まるのだった。



次回、


41話「魔将ベルゼルム」


新展開ですぞ。

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