表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/68

37話「銀の訪問者」

いよいよ連載再開です!


というわけで、ここからは第二部的な感じになります。

 いざ、ハンバーグを求める旅へ!


 ルルイェの歩く塔に乗って意気揚々(いきようよう)と旅に出た俺たちは、辺境の荒れ地で足止めを食っていた。

 この地の領主が法外な通行税を払えと言ってきたのだ。

 払わないと、実力行使に出るつもりらしい。


「踏ミ潰シテ行ケバヨイ」

「人間族は死んでもどうせすぐ増えるんですから(※公序良俗に反するワード続出のため以下検閲)」

「領主には彼我(ひが)の戦力差が理解できておりませぬ。無視する事はたやすいが、リーン王国全土を敵に回しますぞ」

「なんじゃその目は……? 私に人質役をやれと言うのか! そ、そんなのは恥ずかしいからイヤじゃっ、後で貴族連中から絶対バカにされる!」


 どれが誰の発言とはあえて言うまいが、皆の意見が出そろったところで、塔の主にどうするか尋ねた。


「……じゃあ、帰ろう」

「ハンバーグどうすんだ」

「誰か買ってきて」


 さすが千年のヒキコモリ。簡単に心が折れる。

 領主としては、脚の生えた塔で領地内を闊歩されてはたまらんだろうし、そもそもルルイェは宗教上の理由でリーン王国では嫌われ者なのだ。

 ふっかけてきたのは、それ故の嫌がらせなんだろう。

 彼我(ひが)の戦力差を理解していないという意見ももっともで、だからこそ無闇に強気な姿勢だった。


 ちなみに、そんな金はない。

 以前、イルファーレンの街で、バーサーカーと化した野菜売りの婆さんに金貨をばらまいて難を逃れた事があった。

 あの財布の中身がルルイェの全財産だったそうだ。


 とまあ、そんな情けない理由で、俺たちは人里離れた荒れ地で足止めされていたのだった。




「ただいまー」


 外から戻ると、キッチンにルルイェの姿はなく、かわりに見ず知らずの女の人がいた。

 美しい銀色の髪を床まで垂らした、座っているだけで気品の漂うやたら存在感のある女性だった。


「……誰か知らんが、超美人だ。ドレスの胸元が開いててエロい。なのに気品が損なわれないのすげー。髪が銀色だ。あれ地毛か? さっき超美人って言ったけど、実はまだ顔を見てない。斜め後ろ四十五度から観察してるだけだけど、見なくても分かる。絶対美人。百万円賭けてもいい」

「……」


 しまった。声に出して描写してしまっていた。

 超美人とか言われてプレッシャーを感じているのか、俺の気配に気付いた美女(推定)は振り返ろうとしない。

 その足下から、うめき声が聞こえた。


「た……すけ……て……」

「ライリスじゃん。なに美女に踏んでもらってんだ? そういうプレイ?」


 よく見ると、壁際でボスコンが倒れていてピクリとも動かない。おいおい、あれ生きてるか?

 すると、美女がようやく少しだけ首の角度をこちらへ向けた。

 片目と長いまつ毛、すらりと形のいい鼻先がかろうじて見えるようになる。

 まだ三分の一しか見えてないけど、想像以上の美人だ!


「……驚いたのなんて何百年ぶりかしら」


 美女(確定)は俺を流し目で見てそう言った。


「びっくりさせてすいません。キモい心理描写をうっかり口に出してしまってました」

「ここまで近づかれているのに、気配を感じなかったわ」

「あ、存在感ないって意味で驚いたんですか? 中学の頃からよく言われてます。主に悪口で」


 結構気にしてる事を初対面で言われて傷つく。

 エロいとか絶対美人だとか口に出した事の仕返しだろうか。


「……そう、あなたが。漂流者だったのね」


 美女が何か意味深な事を言っているが、俺の意識は大きく開いたドレスの胸元に集中していた。

 アイシャさんのように、本人が迂闊(うかつ)だから見えてしまうものじゃない。あれは見せている。自分のセクシーさを意識的に強調している、そういうファッションだ。

 だがしかし、それでも気品が損なわれていない。

 全身から漂うただならぬ上品さで、エロさより芸術のように見えてしまう。

 おかげでガン見しても大丈夫な感じがする。


「お姉さん、誰ですか? 痛そうなんでライリスを踏むの、そろそろやめてあげてくれません?」


 どうやらプレイでやってるわけじゃないようなので頼んでみる。

 けど、俺の言葉なんて聞こえてない様子で、ライリスのお尻をグリグリと踏むのをやめない。

 それでも気品が損なわれない事に、俺は感動すら覚えた。


 そこへ、アイシャさんが下の階から上がってきた。俺と一緒に、外へ水()みに出ていたのだ。


「どうしたんですか、タケル殿?」

「いや、なんかお客さんみたいなんですが……」

「? ……ッ!?」


 いつも通りにこやかだったアイシャさんの表情が一変し、


「我を守りし風の精霊よ――かの邪悪なる者を斬り裂け!」


 有無を言わさず魔法をぶっ放した!

 空気の刃が謎の美女に襲いかかる。


「ちょっ、いきなり何やってんすか!?」

「ふふ……」


 美女が薄く笑うと、岩をもズタボロに切り裂くカマイタチはそよ風に変わり、彼女の美しい銀髪をわずかにそよがせて消えた。


「ハイエルフの小娘風情が、私に攻撃を仕掛けるの?」

「ひっ……」


 アイシャさんは引きつった悲鳴を漏らすと同時に、その場に倒れてのたうち回った。

 股間を蹴り上げられた時の俺みたいな苦しみようだが、アイシャさんは女なので、多分そういう痛みを与える魔法を喰らったんだろう。


「今度から相手をよく見て噛みつくのね。でないと、死ぬほど苦しい目に遭うわよ、今みたいに。……それにしてもこの部屋、埃っぽいわね。オーガーの臭いもするわ」


 美女は不愉快そうに鼻をすんすんさせる。

 アイシャさんがのたうち回っているせいで、床に落ちていた灰が舞い上がっていた。


(……なんか分からんが、非常にヤバイ!)


 この美女が何者で何しに来たのか知らないが、絶対ヤバイ。


 下手すると俺、また死ぬ!

祝・連載再開~~~!!


というわけで、ルルたんが帰ってきたー!!


…まだ登場してませんが。


かわりに、謎の銀髪美女が。


タケル殿はまた死んでしまうのか?



次回、


38話「竜姫」


銀髪美女の正体は何者なんだ!!!(もうバレてる気がする)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ