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エピローグ



 赤々と燃える美しい夕焼けが町を照らし、キラキラと反射する光もまた綺麗だ。

 わたしは連太郎と二人、校門の前で楓を待っていた。なんだかややこしい事件だから、諸々の事情を部員たちに訊きたいらしい。


「如月先輩……どうしてお茶碗を割っちゃったときに、素直に校長先生に謝らなかったんだろうね?」


 わたしは隣の連太郎に尋ねた。


「あんな真面目そうな人ならそうすると思うけど……。やっぱりめんどくさいと評判の校長先生が、連帯責任で部員のみんなにまで当たり散らすのが嫌だったのかな……?」


 連太郎は二、三回フィンガースナップを行うと、


「それもあるだろうけど……たぶん真面目だと周りに思われてるから、言い出せなかったんだよ」

「どういうこと?」

「真面目だったり優秀な人がミスをすると、周りは騒ぐでしょ。それが嫌だったんじゃないかな。もしかしたら、失望されるかもしれない、そう思ってしまった。まあ、考え過ぎな話ではあるけど、そういう人もいるさ」

「そっか……」


 なんとなく空を見上げる。橙色に染まっている空は何度見ても美しいと思う。


「ナッシー、間颶馬くーん」


 後ろから呼ばれた。振り向くと、手を振りながら楓が駆けてきていた。


「如月先輩、どうなった?」


 わたしが訊くと、楓は息を切らしながら答えた。


「停学とか、そういうのにはならないって。盗んだものは返したし、校長先生にも謝ったから……。校長は、話に聞いた通り面倒くさそうな感じになってたけど、まあ、とりあえず許してくれた。一部の教師を騒がしちゃったけど、実害をこうむったのは私だけだから、お咎めはなしだって」

「そう。それなら、よかったわね」


 ということは、楓は如月先輩のことを許しているのだろう。

 わたしたちは三人並んで歩き出した。そういえば、この三人で帰るのは初めてかもしれない。わたしは二人と友達だけれど、楓と連太郎は別に友達じゃないし。


 それに、連太郎と一緒に帰るときは楓が気を利かせていなくなるから……。連太郎と帰れないときは楓と帰っていた。けれど最近は部活とかで別々に帰ることが多い。


 坂を下っている途中で、楓が立ち止まった。


「二人とも」


 わたしたちは立ち止まって踵を返す。


「ん?」

「どうしたのよ?」


 楓は軽く頭を下げてきた。


「ありがとね。二人がいなかったら、私、ヤバかったかもしれない」


 二人といっても、わたしは殆どなにもしていないんだけどね。

 楓が連太郎を見ながら言う。


「それに、王子様は意外と近くにいたことがわかったし……」

「はあ……」


 連太郎はぽかんと返すが、わたしは愕然とした気持ちになった。それは、駄目じゃないかな。駄目だと思うよ。

 脳内が大暴走してしまう。


「でもまあ、二人もいるとは思わなかったけど」

「え? 二人?」


 わたしが呆然とした表情で尋ねると、楓は呆れたように笑った。


「間颶馬君と奈白よ。なに言ってるの?」

「いや、わたし女なんですけど」

「比喩よ比喩。二人とも王子様みたいだった、ってだけ」


 なんだ、比喩か……。よかった。別に連太郎を好きになったわけじゃないのね。

 しかし、


「でも、わたしなんにもできなかったけど」

「そんなことないだろ」


 連太郎が横から言った。


「奈白が一番必死に考えてたし、意見を出してくれたよ」

「そうそう。誰が解決したとかじゃなくて、こういうのは気持ちよ気持ち。私、奈白が頑張ってくれてるの、嬉しかったんだから。奈白に惚れる女の子の気持ちがちょっとわかったわよ」


 それわかっちゃ駄目なところ……。

 なんだか照れくさくなったわたしは、再び前を向き歩き出した。


「なんか今日は色々ありすぎて疲れちゃった。事件のこと考えてたから、授業内容全然憶えてないわ」

「ああ、それ私も」

「それはだめだろ、二人とも……。そうだ圭一に事件真相伝えないと」

「そっか、坂祝君も王子様なのよね。いや、そこまではいかないかな。白馬くらいね」

「梨慧さんにも教えとかないとね」


 こうしてわたしたちは家路についた。果たして、お次はどんな事件に巻き込まれるのか……不安でしょうがない。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

読者様の中には「なんだよこのトリック。上手くいくわけねえだろ」とお思いの方がいらっしゃるかもしれませんが、自分の家で三回ほど試した際にはすべて上手くいったので不可能ではないです。


まあ、なにはともあれ、お読みいただきありがとうございました。

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