21~30
勇者様が登場したり、少年達が学校に通い始めたり!?
そして美少女の病気がついに治る…!?
21
教会、女僧侶の部屋
少年「おねーちゃん、勇者様かっこよかったよー!」
女僧侶「ふーん」ポリポリ
少年「菓子食いすぎー。胸じゃなくて腹でるんじゃね?」
女僧侶「おい、外出ろや」
少年「外出たら神父様に怒られちゃうよ」
女僧侶「じゃあ、ここで○す!」
少年「わー」キャッキャ
神父「うるさいですね!」イライラ
女僧侶「」
少年「かつてない怒り具合におねえちゃんがマジへこみしてる…」
神父「勇者様がいらっしゃいます。絶対に部屋から出ないように」
女僧侶「え、教会にですか?」
神父「ええ。もてなすのに充分な広い施設がこの村にはないのです。どうしてもと頭を下げられましてね」
女僧侶「え、教会でパーティーするのですか?」
神父「さすがにそれは許可できませんでしたから、村長と軽く挨拶をして話を聞くだけです」
女僧侶「なるほど」
神父「絶対に出てこないでくださいね」バタン
女僧侶「今思ったけど」
少年「ん?」
女僧侶「何でここまで私は危険人物扱いをされて面会謝絶状態にされているのでしょう?」
少年「んー。普段の行動?」
女僧侶「そこまで酷いのかしら…」
少年「菓子食べてごろごろしてられるんだからいいじゃん?」パリパリ
女僧侶「んー。まあそうですね…ってそれ私のお菓子!」
教会、集会室
村長「本日はようこそいらっしゃいました、小さい村ですが…」
勇者「いえ、まだ旅出たばかりで何もしてないのにこんなに歓迎してもらえてうれしいです」
村長「この村へは何をしに?」
勇者「旅の目的としては、魔王を倒すこと、そして今はその仲間を探しながら準備を整えています」
村長「ふむ」
勇者「そしてこの村へは、この村の近くにあるという洞窟の攻略のためにきました」
村長「なるほど。しかしこの周りの魔物に比べて洞窟の中の魔物は強いからのう…」
勇者「そうですね…そこで、その洞窟の間だけこの村の腕利きの方に力を貸していただけたらと思っているのですが…」
神父「(嫌な予感がする)」
教会、女僧侶の部屋
勇弟「話つまんないから抜け出しちゃった。ここは…」キィ
女僧侶「はぁ。さすがにあきてきました」ポリポリ
少年「早く終わらないかねー」モグモグ
女僧侶「んー。でも終わっても待ってるのは掃除と買い物ですからねぇ」パリポリ
勇弟「…」
女僧侶「ん?」
少年「あれ?勇者様の隣にいた…」
勇弟「おいしそう…」
女僧侶「食べますか?」スッ
勇弟「わぁ…」キラキラ
女僧侶「なんちゃって」サッ
勇弟「…」ジワァ
少年「それはさすがに…」
勇弟「うわーん!」
女僧侶「ちょ、そんなに泣いたらばれちゃう…仕方ない」ハァ
教会、集会室
ビエーン!
村長「なんじゃ!?」
勇者「勇弟!?いつのまに…!」ダッ
神父「ま さ か」
教会、女僧侶の部屋
勇者「ここか!勇弟!」バァン
勇弟「あ、兄ちゃん。これおいしいよ」モグモグ
女僧侶「誰ですか?人の部屋にいきなり…」モグモグ
少年「あ、勇者様だ」モグモグ
女僧侶「え」
勇者「これは…一体…」
神父「」
22
勇者「勇弟!何をしてるんだ!」バッ
勇弟「あっ!おいしいのに…」
勇者「みっともない事をするな!」
勇弟「ごめんなさい…」
女僧侶「ちょっと、一緒にお菓子を食べていただけなのに何がみっともないのですか?」
勇者「あ、いえ。人様のお菓子をもらったり、甘えたりするなという教育的な意味で…」
女僧侶「私がいいって言ったんです。問題は何もありません」
少年「おねえちゃん…やめておいた方が…」
女僧侶「いいえ、こういう人にはきちんと言って分からせないといけません。大体人様の部屋にノックもせずに…」
神父「…」ゴゴゴゴゴ
少年「おねえちゃん、おねえちゃん、勇者様の後ろに鬼が!鬼が見えるよ!」
女僧侶「鬼?というか、え?勇者様?」
勇者「はは…」
勇弟「兄ちゃん、何か怖い」ギュウ
村長「おお、ここにおりましたか。お、勇者様、例のお供にですが、そこの僧侶などいかがでしょう」
女僧侶「へ?」
神父「それはいけません!」
勇者「僧侶様ですか!いいですね!回復役の人がいてくれると心強い!」
女僧侶「何の話ですか?」
神父「ああ、もう…」ハァ
礼拝堂
少年「勇弟ー!待てー!」
勇弟「つかまらないよーだ!」キャッキャ
女僧侶「なるほど」
村長「どうかのう。勇者様をお助けしてはくれんか」
女僧侶「いいですよ」ニコ
神父「仕方ないですね…」ギロ
女僧侶「(ここに残ったら本当に命の危機ですし。何か手柄をあげないと)」
少年「おねえちゃんどっかいくの?」
女僧侶「はい。今回は本当に危ないから、少年君はお留守番ですよ」ナデ
少年「つまんねー。わかったよーだ」
勇者「とても助かります!勇弟!お前もここで留守番だ」
勇弟「うん!少年君と遊んでる!」
女僧侶「しかし、二人ではつらいでしょう。あと一人は戦える人がほしいですね」
村長「むう。小さい、平和な村じゃからのう…」
勇者「いなければ、無理にとは言いませんが…回復さえしてくれれば僕が…」
女僧侶「んー。はっきり言って弱いけど、戦い慣れてる人に心あたりがない事はありませんね。行ってみます?」
勇者「お願いします」
少年「勇弟を美少女に紹介してくるー」
勇弟「いってきまーす」
勇者「勇弟、人に迷惑かけるなよ!」
勇弟「はーい!」
女僧侶「さて、行きましょうか」
神父「女僧侶さん、勇者様にご迷惑をおかけしないように」
女僧侶「はい」ニコ
村長「少年達と同じレベルの会話をしとるのう…」
村のはずれ
盗賊3「いい天気だなぁ」ザッザッ
盗賊2「畑仕事さぼるなよぉ」
盗賊1「暑ぃなぁ…」
盗賊親分「てめぇら、手止めてんじゃねぇぞぉ」
女僧侶「こんにちわ」ニコ
盗賊2「ひっ!」ビクゥ
盗賊親分「何故ここがわかったぁ?」
女僧侶「逆に聞きますが、隠れてたつもりですか?村のちょっとはずれた所で」ニコ
盗賊親分「まあ、隠れてたつもりもねぇがなぁ。何の用だ?もう俺らは悪行はしてねぇぜ?」ニヤリ
女僧侶「お願いがあってきました」
勇者「(僧侶様、この人達は…?)」
女僧侶「元盗賊団です」ニコ
勇者「」
23
盗賊親分「んで、勇者様と僧侶が何の用だ?」ニヤ
勇者「!?」
盗賊親分「おっと、そう構えるなよぉ。村の噂で聞いてたぜ。勇者が来るってなぁ」
女僧侶「あそこの洞窟の攻略に手を貸してほしいのです」
盗賊2「え…僧侶さんがいれば問題ないんじゃ…」
女僧侶「どういう意味ですか?」ニコ
盗賊2「」
女僧侶「どういう意味ですか?」ニコ
盗賊親分「なるほどなぁ、あそこの魔物は外と比べたら強いからなぁ」
女僧侶「どういう意味ですか?」ニコ
盗賊親分「…ハァ、わかった、盗賊2、ちょっと外で僧侶と話してこい」
女僧侶「ありがとうございます」ニコ
盗賊2「え。え?いや…」ズルズル
盗賊親分「話進まねぇから速めにな」
女僧侶「はい」バタン
勇者「え、いったいあれは…」
盗賊2「いやぁああああああああ!」
勇者「」
盗賊親分「ああ、気にするな」
バタン
女僧侶「お待たせしました」ニコ
勇者「は…はぁ」
盗賊親分「まあ、あそこの魔物なら俺が行くほどでもねぇだろうから、盗賊2を連れていきなぁ」
盗賊2「え…」フラフラ
盗賊親分「経験を積ませてぇから、俺としてはちょうどいいんだが」
女僧侶「はあ…もう少し強い人がよかったのですが、まあいいでしょう」
盗賊親分「こいつは見込みあるぜぇ。あとは経験だぁ」ニヤリ
勇者「ご協力感謝します!」ペコリ
女僧侶「ありがとうございます」ニコリ
盗賊2「そ、そんな…」ヘタリ
勇者「では、行きましょう!」
女僧侶「さ、行きますよ」ムンズ
盗賊2「いやぁああああ!」
病院
少年「美少女ー、友達連れてきた」
美少女「…勇者様の隣にいた人?」
勇弟「うわぁ。かわいい人だなぁ。少年君の彼女?」
少年「な!?お前何を…」
美少女「うん」
少年「はぁ!?」
勇弟「やっぱりなー。お似合いだもんなー」
美少女「とてもいい子」フフ
少年「美少女…微笑女になってるぞ」
微笑女「?…よくわからない」
少年「いや…いいや」
勇弟「ところで、友達って…」
少年「一緒にいて楽しいから友達な。俺たち他に友達いないし」
美少女「そう。だから勇弟君も友達になってくれたらうれしい」
勇弟「…うん!」
少年「そろそろ帰るー」
美少女「また明日」
少年「うん!」
勇弟「ばいばーい」
女医「美少年が…二人も…」ワナワナ
看護師「女医さん、そんな所に隠れて何を?仕事は?」
女医「」
病院の外
少年「さて、洞窟だっけか」
勇弟「?」
少年「行くぞー!」
勇弟「えぇ!?怒られるよー」
少年「ふーんだ。前に怒ったのに、置いてくおねえちゃんがいけないんだ」
勇弟「少年君って、時々甘えん坊が出るんだね」
少年「さ、追跡追跡♪」
24
女僧侶「そういえば勇者様って魔王を倒すために旅してるんですよね」
勇者「…はい」
女僧侶「魔王って何かしたんですか?」
盗賊2「何言ってんすかー。魔物が人を襲ってくるんだから人にとっては敵ですぜ」
女僧侶「それって、魔物が生きるために人を襲ってるんじゃないですか?縄張りを守るため、空腹を満たすため…人間もしてますよね。他の種族に対して」
盗賊2「…そうすね」
勇者「魔王は人間に対して何もしてませんね」
女僧侶「じゃあ、倒す必要ないのでは?魔物からの被害を消滅させたいというのなら、人間以外すべての種族を滅ぼさないといけませんし。そんなの善ではありませんしね」
勇者「…そうですね」
女僧侶「では何のために旅を?」
勇者「普段、旅の説明をするときには魔王を倒すためという風に説明をします」
女僧侶「はい」
勇者「でも、旅の許可を出した王も、僕も、本当は違う目的でこの旅をする事にしました」
女僧侶「ふむ」
勇者「勇者とは、魔王を倒す者ではなく、勇気ある者なのです」
盗賊2「…」
勇者「勇者の敵は魔王や魔物だけではありません。人であっても、一国の王であっても、悪であれば斬る…魔物ではなく悪を滅ぼすために旅に出たのです」
女僧侶「なるほど。まあ神職にある私としては斬らずに話し合いで解決してもらえるとすんなりと肯定できるのですが…」
勇者「ははは…できれば僕もそうしたいですね」
盗賊2「あの…」
勇者「はい?」
盗賊2「うちの親分や仲間達は…悪っすか?」
勇者「いえ…見た目は怖いけど、すごくいい人達でした」ニコ
盗賊2「よかった」ホッ
女僧侶「それで、人からも恨まれるようになっていく旅だから仲間を連れずに?」
勇者「…そうですね、村長には仲間を探すためにと言いましたが、実際に仲間を探そうという気はありません」
女僧侶「弟君は連れていますけどね」
勇者「本当は弟は置いてきたかったんですけどね…」
女僧侶「連れたくないから、あんなに厳しくして嫌われようと?」
勇者「はは…見抜かれてますね。絶対についてくるから、ここ最近は弟から離れてくれる道を無意識に選んでしまっていました」
女僧侶「しっかりと話し合って置いていけばいいのでは?」
勇者「そうですね。でも少なくとも故郷ではそれはできませんでした…」
女僧侶「何故?」
勇者「勇者の血筋に生まれて、求められるのは勇者として活躍すること。そして勇者は僕です。そうなると弟を見る目は…」
女僧侶「…」
勇者「親からも冷めた目で見られて、本来友達となるはずの子供たちからもいじめられ…あそこにあの子の居場所はありませんでした」
女僧侶「なるほど」
勇者「僕が死ねば、身代わりとしてあの子の価値もあそこでは出てくるのかもしれませんが…」
女僧侶「寂しい所ですね」
勇者「だから、一緒に旅に出たのです。でもまあ、あの子が気にいった所が見つかればそこに置いて行こうかなと思ってるんですけどね」
女僧侶「それで、さっきの話につながるんですね。すんなり離れられるように嫌われようと」
勇者「はは…」
女僧侶「離れる時は離れるんだから、嫌われようとなんてしない方がいいですよ?親に愛されず、たった一人の味方である兄にも愛されてないと感じるあの子を思ったらとても不憫です」
勇者「…それもそうですね。ちょっと考えます」
盗賊2「あ、着きましたぜ!」
女僧侶「さて、いきましょうか」
勇者「はい!」
勇者パーティーの背後
少年「あ、いたいた」コソコソ
勇弟「…怒られないかなぁ…兄ちゃんすぐ怒るし…」
少年「大丈夫だって。怒るのはお前の事を心配してるからだって。よく神父様が言ってた」コソコソ
勇弟「違うよ…兄ちゃん僕の事嫌いだから…いつも旅の邪魔だって…」
少年「じゃあ、この洞窟で兄ちゃんのピンチ助けてやろうぜ!そしたら邪魔になんかならないって」
勇弟「そうかなぁ…」
少年「そうだって!」
勇弟「…」
25
洞窟内
勇者「はぁあああ!」シュン
蝙蝠「キキィ」ヒラ
勇者「くっ…当たらない…」
盗賊2「俺にお任せを!」バシュン
蝙蝠「キィ!?」バタッ
女僧侶「おぉ、意外に強いんですね」
盗賊2「手先の器用さだけは親分に買われてますんで」ヘヘ
勇者「僕は当てられませんでしたけどね…」ハハ
女僧侶「まあ旅で出たてでレベルも低いでしょうし…」
盗賊2「そ、そうっすよ!それに大型魔物に出会ったら俺にはちょっと無理かもしれないんで、お任せするっす!」
勇者「とにかく先に行きましょう…」
盗賊2「しかし暗いすねぇ」
勇者「炎魔法!」バシュン
盗賊2「おお、明るくなりました」
勇者「ずっとはもたないので、何か燃える者を木の枝につけて渡してもらえると…」
女僧侶「はい」
勇者「ありがとうございます。やっぱり女の人だ…テキパキしてますね」
盗賊2「そうっすねぇ。意外と料理もうまいすし…」
女僧侶「意外とって?」ニコ
盗賊2「い、いえ!見た目そのままに!」
女僧侶「口には気をつけろよ?」ニコ
盗賊2「は、はひぃ」ガクガク
勇者「どうしました?早くいきましょう」
女僧侶「はい」
盗賊2「」ガクガク
盗賊奥部
勇者「はぁ!」バシュン
蝙蝠「キィ!」バタン
勇者「やった!当たるようになってきたぞ…」
盗賊2「流石っす!成長早いなぁ…」
女僧侶「盗賊さんは動きが鈍くなりましたね…」
盗賊2「…ちょっと心理的な部分にダメージがありまして…」
勇者「…洞窟なのに扉?」
女僧侶「おかしいですね…誰か住んでるなんて聞いたことありませんけど」
盗賊2「こっちはモンスターが多くて侵入禁止の区域っすからね。俺らの知らない何があってもおかしくはないっす」
勇者「鍵がかかってるな」
盗賊2「あけますか?」
女僧侶「やめておいた方が…」
勇者「いや、行きましょう。攻略というからにはきちんと調べないと…」
盗賊2「では…」カチャカチャ
女僧侶「…」
勇者「…」
盗賊2「あきやした」
勇者「じゃあ…」キィ
女僧侶「眩し…」
盗賊2「洞窟じゃないみたいっす…」
勇者「武器が…8本?」
女僧侶「ここは何でしょう」
盗賊2「もらっていきやしょう♪」タッ
勇者「…とまれ!」
盗賊2「?!」
ブォン
勇者「何者だ…」
女僧侶「白い…魔物?妖精?」
白魔物「なに…ものだ?」
盗賊2「…」
勇者「こいつはやばい気がする…盗賊2さん、早くこっちへ!」
盗賊2「あ…足がすくんで…」
白魔物「あし…が…すくん…で?」
勇者「くっ…」ダッ
白魔物「きっぃいいいいいいああああああああ!!」シュンッ
勇者「さあ、盗賊さんこっちへ!」
白魔物「かえれ」シュンッ
勇者「瞬間移動!?」
白魔物「お前にはなにもやらん!?」バキィ
勇者「ぐああああ!」
女僧侶「回復魔法!」パァ
勇者「ありがとう…こいつ…強い!」
盗賊2「ぐぁあああ!」メキメキ
白魔物「いい…音?声?」
勇者「やめろぉおおお!」ダッ
白魔物「はえをたたく」バシィ
勇者「くっ!」ザッ
盗賊2「痛ぇ…痛ぇ…」ビクビク
女僧侶「回復魔法!」パァ
白魔物「なおすな」シュンッ
女僧侶「…」
勇者「僧侶さん!」
白魔物「なおすなぁあああ!」ブンッ
女僧侶「!」ギュッ
少年「おねえちゃん!」ブンッ
白魔物「ぶーめらん?」ヒョイッ
勇弟「兄ちゃんに何すんだ!」ブンッ
白魔物「こいし?いとし?」ヒョイッ
勇者「勇弟!?何故ここに!早く逃げろ!」
勇弟「いやだ!兄ちゃんを守るんだ!」
勇者「バカ野郎…」
白魔物「こども?すき?」
少年「な…なんだよ…」ガクガク
女僧侶「に、逃げなさい!」
白魔物「これ…あげる。武器はあげない。かえれ?」スッ
少年「光る花…?ありがと」
白魔物「みんな、かえれ。わたしはぶき、あげない、もの」
女僧侶「部屋から出ましょう。おそらくもう大丈夫です」
盗賊2「は、はい…」
勇者「…」ヨロヨロ
白魔物「かえれ?かえった?わたし、かえる」スーッ
女僧侶「というか、武器に近寄らなければ大丈夫みたいですね」
盗賊2「…」スッ
女僧侶「ちょ!?」
白魔物「…」スーッ
勇者「怖!?頭だけ出てこっち見てる!」
盗賊2「ちょと興味本位で…」
女僧侶「ちょっと来い」
盗賊2「ぎゃーーーー!」
5分後
盗賊2「…」ボロボロ
勇者「勇弟!何故来たんだ!」
勇弟「僕も兄ちゃんみたいに戦えるから…」
女僧侶「あんまり怒りすぎないで…さっき言った事を思い出して下さいね?」
勇者「…はい。でも危険だから来るなって言っただろ?」
勇弟「だって、ついてかないと…戦わないと…強くならないと…兄ちゃんどっかで僕をおいてくもん…そうしたら僕また一人になる…」
勇者「…」
女僧侶「見抜かれてますね…まあ、兄弟の問題は兄弟で解決をしてください」
少年「そうそう。まあ、頭ごなしに怒るのはダメだよ。ねー、おねーちゃん」
女僧侶「お前、帰ったらお尻1000叩きだからな」
少年「0ひとつ多くない!?」
盗賊2「とりあえず帰りやしょう」
26
勇者「それでは、僕は次の目的地へ旅立ちます」
女僧侶「いいんですか?弟君をここにおいて言って」
勇者「はい。きちんと話し合って、弟もここならって…友達もできたみたいですし」
女僧侶「そうですか…まあ円満に別れられてよかったです」
勇者「また会いに来ますしね」
女僧侶「是非来てください」ニコ
勇者「僧侶さん…僕、洞窟前に話した中から訂正したい所があります」
女僧侶「?」
勇者「ずっと一人旅で…って思ってましたが3人での洞窟探索が楽しくて…よければ一緒にきませんか?」
女僧侶「…私も勇者様についていきたい気持ちはあります。でも、私はここを守らないといけませんし、あなたと同じ覚悟はもてません」
勇者「人からの恨みに耐える覚悟…ですか」
女僧侶「そうですね…」
勇者「わかりました。では、考えが変わったら迎えに来ます」ニコ
女僧侶「ありがとうございます」ニコ
盗賊2「勇者さーん」
勇者「盗賊さん?」
盗賊2→盗賊「俺はついていきますぜ!親分にも許可もらいましたし!」
勇者「そうですか、ありがとうございます」ニコ
盗賊「俺なんて人に恨まれるような事ばっかししてましたしね」ニヒヒ
女僧侶「楽しい旅になりそうですね。少しうらやましいです」クスッ
盗賊「あれ?僧侶様の勧誘には失敗したんですか?」
勇者「はい。フラれました」
盗賊「そっすかー…」
勇者「まあ、また一緒に何かできれば」ニコ
女僧侶「はい」ニコ
盗賊「また会いやしょう」ニヒ
勇弟「兄ちゃん!」
勇者「勇弟…」
勇弟「僕、友達がいるし、寂しくないから!いっぱい人を救ってね!たまには遊びに来てよ!」
勇者「ああ…勇弟、元気でな…俺はずっとお前の兄だ…」
勇弟「うん!」
盗賊「おたっしゃでー!」
勇者「では、また…」
女僧侶「いっちゃいましたね」
勇弟「うん」
女僧侶「お兄さんは、君の事が大好きで、いつも厳しくしてたんですよ」
勇弟「うん」
女僧侶「置いて行ったのは、足手まといだからではありません。あなたが心配だからです」
勇弟「うん」
女僧侶「あなたはあの人の弟。強くなって、助けになりなさい」
勇弟「うん」グスッ
女僧侶「寂しいですか?」
勇弟「うん」グスグス
女僧侶「よしよし」
勇弟「…」ギュッ
女僧侶「あなたを想う人は沢山いますよ。だから勇者様もここにあなたを預けたのです。心配しないで」ナデナデ
勇弟「うん…!」
女僧侶「沢山甘えて、沢山成長して、沢山助けなさい」
勇弟「うん!僕…ここで強くなる…!」
病院
少年「女医さん、この花って何かなー」
女医「これは…!?」
27
少年「え?」
女医「美少女ちゃんの病気が治るかもしれません!」
少年「本当に!?」
女医「はい…」
美少女の部屋
美少女「う…そ…」
少年「本当だって!」
美少女「そうなんだ…」
少年「なんだよ!もっと喜べって!嬉しくないの?」
美少女「ううん…うれしい」
少年「治ったら遠くに遊びに行けるなー」
美少女「うんっ」ニコ
少年「じゃあ、おねえちゃん呼んでくるから一旦帰るー」
美少女「またね」
少年「ばいばーい」
美少女「…」
教会
女僧侶「本当ですか!?」
少年「うん!で、何か強い人を一人連れてきてくれって」
女僧侶「へ?何故?」
少年「その説明をしたいから今から来てって」
女僧侶「わかりました。では神父さま…」
神父「はぁ…今回は仕方ないですね。行ってきなさい。ちゃんと少女を救ってくるのですよ」
女僧侶「はい」
少年「勇弟は?」
女僧侶「泣き疲れて寝てます。そっとしておきなさい」
少年「はーい」
病院
女医「美少女ちゃんの病気は、寄生虫型のモンスターによるものです」
女僧侶「…」
女医「誰が埋めたかは知りませんが、心臓、脳、肺と3体に寄生されています。そして時々発作を起こさせ死に至らしめる…外から魔物を刺激すると宿主の中で暴れて宿主が危険…」
女僧侶「…」
女医「これまでは、その危険のために手術もできず、投薬も魔物の前では無意味なので効果がありませんでした」
女僧侶「なるほど」
女医「少年君が持ってきたこの花は、聖属性の花です。これを薬草にして、美少女ちゃんに飲ませれば体に負担を与えずに魔物を外に出す事ができます」
女僧侶「え、それって穴が…」
女医「皮膚であれば、内臓を食い破られるよりはマシです」
女僧侶「…」
女医「飛び出てきた瞬間に退治できれば…」
女僧侶「外に出てきた時点で死なないのですか?」
女医「ただの寄生虫なら…でも魔物ですからね」
女僧侶「…一人だけできそうな人を知っています」
女医「ではその人を連れてきてもらえますか?こちらは薬草を作っておきますので」
女僧侶「お医者様ってそんなこともできるのですね」
女医「普通、薬剤師に任せますが、私はあの子を治すために色々努力してきましたから…」
女僧侶「なるほど…」
看護師「大変です!」
女医「どうしました?」
看護師「美少女ちゃんがいません!」
女医「!?」
28
病院、トイレ
女僧侶「いない…」
病院、キッチン
看護師「美少女ちゃーん?」
病院、ベランダ
女医「ベランダにもいませんね…あとは倉庫だけですか…」
病院、倉庫
美少女「…」
ガラガラ
美少女「!?」ビクッ
女医「いた…」ゼェゼェ
美少女「ごめんなさ…」ビクビク
女医「もう…心配させないで…グス」ギュッ
美少女「…」
女医「何で隠れたりしたの?」
美少女「私の病気が治ったら…私はここにいれない…?」
女医「何言ってるの…あなたは私の家族なのよ。ずっとこの家の子なのよ」グス
美少女「…ごめんなさい」
女医「病気を治して…元気になってピクニックに行きましょう」ギュッ
美少女「うん…私、病気を治したい…治してください…」グス
女医「任せなさい…絶対に治すから!」
女僧侶「…」
看護師「よかった…」ホッ
女僧侶「さて、失敗できませんね。私達も最大限の努力をしましょう」
看護師「はい!がんばって手伝っちゃいます!」
女僧侶「まあ、私はあの人連れてくるだけで仕事終わりですけどね…」
病院、手術室
盗賊親分「なんだぁ?」
女医「いえ…予想以上に強面で…」
女僧侶「腕だけは確かなので大丈夫です」ニコ
盗賊親分「おう。3体でいいんだなぁ?このメス借りるぜぇ」ニヤリ
看護師「ひぃぃ…美少女ちゃん、麻酔で眠っていてよかったです…」
女医「では…この薬草を飲ませます」サラサラ
美少女「…」ビクン
女僧侶「…」
美少女「がぁあああ!」ビクンビクン
寄生魔物「ピィイイイ!」バシュン
盗賊親分「ふん!」シュバッ
看護師「やった!3体倒しましたね!」
女医「僧侶さん、何してるの!すぐに回復魔法!」
女僧侶「え?は、はい!回復魔法!」パァ
美少女「…」スゥ
女僧侶「おぉ…穴をふさぐために私がいるのか…」
女医「美少女ちゃん…よかった…グス」
盗賊親分「…まだだぁ」
女医「え?」
美少女「…」カパァ
看護師「口の中からもう一体!?女医さん!」
寄生魔物「ピィイイイ!」バシュン
盗賊親分「ふん!」シュバッ
女医「…」ヘタ
盗賊親分「これで終わったなぁ。俺ぁ帰るぜぇ」
女僧侶「え?ダメですよ?」
盗賊親分「はぁ?」
女僧侶「ちゃんとお礼を受けなさい」ニコ
盗賊親分「…」
病院、美少女の部屋
美少女「…」パチリ
少年「美少女!」
美少女「少年君…?」
女医「よかったぁ…」ヘタ
看護師「女医さん、今日は腰抜かしてばっかですねぇ」
美少女「治った…?」
女僧侶「はい」ニコ
美少女「そう…なんだ」ジワァ
盗賊親分「…」
美少女「!?」ビクッ
女僧侶「この人があなたをいじめてた魔物を倒してくれたんですよ?」ニコ
盗賊親分「嬢ちゃんびびってんじゃねぇかぁ、やっぱり俺ぁ帰るぜ」
美少女「おじさん」
盗賊親分「あぁ?」
美少女「ありがとう」ニコ
盗賊親分「…お、おう」
美少女「皆…ありがとう」グスッ
女医「ふふ」ニコ
教会、勇弟の部屋
勇弟「うーん…へへ…」ムニャムニャ
29
少年「美少女ー!遊ぼうぜー!」
美少女「うん」
勇弟「僕もいるよー」
美少女「こんにちわ」
女医「外に行くの?」
少年「うん!いい?」
女医「美少女ちゃんはまだ治ったばかりだし、ずっと入院してたから体力的がないからあまり遠くに行かない事、すぐ帰ってくること。これが守れるならいいですよ」
少年「大丈夫だよ!俺がついてるから!」
美少女「…」
女医「いや、約束を守りなさい…」
少年「うん!」
女医「よろしい」
少年「よし!勇弟、美少女、行こうぜー!」
美少女「うん」タッ
勇弟「うん!」タッ
女医「元気ねぇ…」フゥ
女医「!?」グッ
女医「…気のせいかしら。きっとただの風邪ね」
山道
美少女「こんなに遠くまで来たら女医さんに怒られちゃう」
勇弟「ちょっと怖いよぉ…」
少年「大丈夫だって。へへ、もうすぐ…」
猟師「…なんだお前達」ヌッ
少年「猟師さんこんにちわー!」
勇弟「ひっ!」
美少女「この人は…」
少年「この前盗賊から助けてくれたんだ」
猟師「何しに来た」
少年「友達の紹介と、猟師さんのご飯を食べに来た!」
猟師「そうか。とりあえず家に入るぞ」
少年「お邪魔しまーす!」
勇弟「お邪魔します…」
美少女「お邪魔します」
教会
女僧侶「あれ、子供たちは…」
神父「遊びに行きましたよ?」
女僧侶「え、掃除は…」
神父「それはあなたの仕事でしょう」
女僧侶「そんなバカな…」
神父「あ、あと彼らのお小遣いのために、あなたのお菓子代減らしますから」
女僧侶「えぇ!?それはあんまりです!」
神父「22歳にもなって、お菓子ばかり食べ過ぎなんですよ。早く掃除しなさい」
女僧侶「はぁ…」ガクッ
猟師の家
少年「おいしくなってる!」
美少女「…おいしい」
勇弟「わぁ…おいしい」
猟師「…」ニヤニヤ
少年「おねえちゃんに教わってから大分練習したんだね!」
猟師「まあ、毎日自分の飯を自分で作るからな」
勇弟「僧侶さんに教わったんですか。僧侶さんのご飯おいしいからなぁ」
美少女「私も食べてみたい」
少年「今度家に来なよ!おねえちゃんも美少女と遊びたいって言ってたし!」
美少女「いく」
猟師「せっかく来たんだし、家でできないことをさせてやる。こい」
少年「?」
猟師「ナイフの扱いに気をつけろ。この木の切れ端をこういうふうに自由に掘ってみろ」サクッ
少年「うん!」
勇弟「難しい…」サクッサクッ
美少女「…」サクッサクッ
少年「取りかかり早…」
猟師「できたら紐でつないでお前達にやる」
少年「ありがとう!」サクッ
猟師「お前、難しいと言ってたわりに器用だな」
勇弟「そ、そうですか?えへへ」サクッ
美少女「うん、うまい」サクッ
猟師「お前はさすが女の子だ。綺麗に掘ってるな」
美少女「ありがとう」サクッ
少年「あっ」サクッ
猟師「…コメントいるか?」
少年「いえ、いいです」サクッ
勇弟「できた!」
美少女「私も」
猟師「よし、紐つないでやるから貸せ」
少年「俺もできたー!」
猟師「よし…これでいいのか?」
少年「これ以上やるってもひどくなるだけだから…」
美少女「皆のを交換しよう」
猟師「おう、いいんじゃないか?」
美少女「猟師さんも交換。私が作ったのは猟師さんにあげる」
猟師「…じゃあ俺のはお前にやろう」
勇弟「ありがとうございます!…じゃあ僕のは少年君に」
少年「うわぁ…でもこれは美少女にあげなよ。じゃないとこれが美少女の元に…」デローン
美少女「私はそれがほしい」
少年「うぇえ…こんなのが?これでいいなら、はい」
美少女「ありがとう。ふふ」ギュッ
猟師「さて、日が暮れる前に帰れ。暗くなりだすと山道は危険だからな」
少年「うん!また遊びに来てもいい?」
猟師「ああ。また飯を食いに来い」
美少女「とてもご飯おいしかったです」ペコリ
勇弟「また来ます!」
少年「ばいばーい!」
猟師「…」フリフリ
山道
少年「女医さんに怒られちゃうから早く帰ろうぜ!」
美少女「うん」
勇弟「とっても楽しかったよ!」
少年「だろー。また来ようぜ!」
美少女「うん」
勇弟「えへへ」
30
女僧侶「あなたたち、学校に行きなさい」
少年「え?」
勇弟「何で?」
女僧侶「勉強して、友達作って、悩み苦しみ…そんな素敵な経験をできるのは学校だけです」
少年「友達ならいるし、勉強したくないし、遊んでる方が楽しいからパス!美少女んとこ行こうぜ!」タッ
勇弟「うん!」タッ
女僧侶「あっ!待ちなさい!…もう」
神父「学校ですか…」
女僧侶「そうです。教会で勉強を教えてもいいのですが、他の人とのお付き合いとかそういう経験は学校でしかできないと思いますし…」
神父「そうですね…まあ彼らから通いたい、と言ってくると思いますよ」
女僧侶「え?」
神父「実は…」
病院
少年「女医さーん!」
女医「あら、私に会いに来たの?」チュッ
勇弟「うげっ」
女医「ちょっと、それは失礼な反応…」
少年「美少女と遊びに来たー」
女医「あら、残念ね。あの子なら学校に通い始めたからいないわよ?帰るのは夕方ね」
少年「えぇ!?」
女医「元々本好きで、もっと勉強したいっていうから通わせたのよ」
少年「ふーん」
勇弟「じゃあ、帰ろっかー」
少年「うん」
勇弟「女医さんありがとうございました」ペコリ
少年「ばいばーい」
女医「はーい」フリフリ
教会
女僧侶「え、今なんて?」
少年「俺達も学校通うって言ってるの」
女僧侶「さっき嫌だって言ったじゃないですか」
少年「いいじゃん、勉強して立派な大人になりたいんだ」キリッ
女僧侶「ふーん」ジトッ
勇弟「いや、美少女ちゃんが通ってるって聞いてから行くって言いだしたんだよ」
少年「ばっ!?」
神父「ふふ」クスクス
女僧侶「へー」ニヤニヤ
少年「知ってやがったな」
女僧侶「まあ、学校では勉強の他にも簡単な魔法や剣術等も教えてくれるからあなた達もそこまで嫌にはならないと思いますよ?」
少年「へー」
女僧侶「この村の学校なので同級生は少ないと思いますが」
少年「いつから通えるの?」
女僧侶「もう申し込みは終わってるから明日から行きなさい」
少年「はやっ!」
勇弟「はやっ」
次の日
少年「いってきまーす!」
勇弟「いってきまーす!」
女僧侶「いってらっしゃい」ニコ
女僧侶「さて、お見送りも終わったところでもう一眠りしますか」
神父「何言ってるんですか」
女僧侶「ちっ」
神父「は?」
女僧侶「いえ、お掃除しますね」ニコ
神父「いや、舌打ち聞こえてたからな」
女僧侶「」
学校
少年「へー。ここが学校かー」
勇弟「あ、美少女ちゃんいたよ!」
少年「本当だ!おーい、美少女ー!」
美少女「?」クルッ
少年「俺達も学校通う事にしたから!」
美少女「そうなんだ。うれしいな」
ガキ大将「美少女、誰だこいつ?」
美少女「私の友達の少年君と勇弟君」
ガキ大将「友達かー。そっかそっか」
少年「誰だこいつ?」
ガキ大将「俺か?美少女の彼氏だ」
少年「」
続く
読んでいただいてありがとうございます!
もしよろしければ評価や感想をいただけると嬉しいです!