永遠より価値があるもの
なんかウキウキしてる
ウキウキしてるのはイイコト
その愛らしいクリックリの目が終始嬉しそうに形を変える
そんな彼女をみてる俺だって、悪い気しない
でも…なんでだ?
ふと思い立つ
「なに~?」
じーっとご飯をつくる姉を見つめてみる
もっと早く気付くべきだった
ほっそい腕には、シルバーのブレスレットが光ってた
***永遠より価値があるもの***
「…………」
「なんでそんな顔すんの?」
あからさまに顔をしかめたオレに、未だ機嫌のいい姉は笑いながら叩く。
なるほどね
そぅいえば記念日だなんだと話していたのを思い出した。
「いいでしょ~?たっくんがプレゼントしてくれたの」
いくない
ぜ~んぜんっ
そんなオレの心情なんてまるきり無視してやたらとその銀光りするワッカを見せてくる。
満面の笑み
その根拠は?
「ほらっ、ここにねっメッセージ彫ってあるの。その場で職人さんが彫ってくれたんだって」
たっくんの説明を丸写ししたような言葉だ
「へぇ~~~」
適当にあしらいながら、チラリとそのブレスレットの内側に彫られてる文字を見てやる
『This love is forever』
単純かつ明解
それが目の前の彼女をここまで舞い上がらせてるのかと思うと…
めまい
「コーヘェ?」
さすがのオレのあからさまな態度に小首を傾げる姉
「永遠なんて…なんか嘘くさくない?」
リビングのカウンターに座って…頬杖つきながら言った。
一瞬目を見開いてから、急に目をつり上げる。
「なんでそんなこと言うの?」
「なんで…って…」
思ったことを言っただけ
人はいつか死ぬ
だから永遠なんて存在しない
そんなのは今使う言葉じゃない
いまからそんなマヤカシみたいな言葉を言ってなんになる?
「大事なのは今だよ」
ポツリ
言った
「そんな…ただの難癖やめてよ」
口じゃいつも勝てない姉、でも負けを認めたくないときに口をとがらせるのが昔からの癖
オレはそんな彼女の左手をゆっくり取る。
そして、まさにその彼女を独占する男の証に…唇を落としてやった。
「………」
慌てて引っ込まれる手
「永遠ってやつは…案外モロいんだね」
ニコリと笑えば、彼女は少し顔を赤らめながら「ばかっ」と言った。
そぅそぅまさに今
こんなふとした瞬間が大事
彼女がオレに顔を赤らめる
この今の方が、永遠なんて形だけのことばよりもよっぽど確かで重要だ。
こんなふとした瞬間の気持ち…
その方がよっぽど信じられる
「顔、赤いよ?」
「コーヘェのせいっ」
さらに赤くなる彼女を見て、オレはケタケタと笑った。