表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

月とビー玉

まだ出会って間もない頃のオレたちにとって



それは  そう



あるいみ儀式のようなものであって




2人だけの秘密の時間でもあって




特別だった




そのトクベツってやつが、たまらなくオレたちの心をくすぐっていた








***月とビー玉***






「・・・・ビックリしたぁ~~・・・」



風呂から上がって、テレビもついてなければ電気の明かりもないリビング



てっきりもう寝てしまったのかと思ってた・・・


そんな彼女が、リビングのまさに窓際に仰向けで寝転がっていたのだ。



気づいた時はビックリして後ずさってしまった。



なんとも奇妙な光景




「あ・・・・おどかしちゃった?」と当の本人は苦笑い



「当たり前だっての」と、まだ落ちつかない心臓を押さえながら言い落とす。



今日はバイトのせいで帰り遅かったし、時計ももう夜中の1時を指している。



眠たがりな姉が、こんな時間まで1人でリビングに居ることさえ珍しい








「・・・まさかそんなところで転寝してた・・ってことはないよね?」



「まっさかぁ~。違うよっ」



ペタペタと裸足のまま、未だ寝転がってる彼女のもとへ歩み寄る。



電気は付けずとも、その窓からは月の光が差し込んでいて、リビングは薄ら明るい



彼女のその白い肌も、いまはきれいな青い光に染まっている。



「ねぇ、コーヘイも隣に寝転がってよ?」



「えぇ???」



弾けんばかりの笑顔で誘われる

(いろんな意味も含んでいるように思えたのはオレだけ?)



そんなオレの微妙な動揺に全く気づくこともない姉は「ほらっ」と座り込んだオレの手を

引いてさらに促してくる。


観念してオレもその場に寝転ぶと、嬉しそうな顔をした。




「ほら、見て?」



「ん?」



そういって指差したのは   窓から丁度見える   月



あ、 そっか



思い出した。






「「ほら、コーヘー、見て見て?きれいでしょ??」」



「「ほんとだ・・・今日もキレーだね」」




幼い頃の・・・記憶



まだ、お互いが姉弟という関係になってまもない頃だ



両親の目を盗んで、2人でトイレに行くフリをして・・・・夜中2人でこんな風に寝そべってた。


あのころはより大きく見えた月



それを見上げながらいろいろ話したっけ



いつかあのウサギさんに手紙を書こう  とか



なんで朝になるといなくなっちゃうんだろう とか





「懐かしいね~~」



ふと、昔の記憶から舞い戻ると、隣で彼女が擽ったそうに呟いた。



月夜にてらされる姉の横顔


あの時に見たのと、やっぱり印象は代わっているけれど・・・それでも、このキラキラした瞳

は・・・昔のまま



「今日は月がキレイだなって窓から覗いたの・・・そしたらなんだか昔を思い出しちゃってさ」


そういって恥かしそうに笑う。



つられてオレも「15年ぶり・・・くらいかな」と笑った



昔は2人して寝ててもなんの支障もなかった


でも、お互い図体のでかくなった今のオレたちが寝転がるには、いささか窮屈なリビング



彼女が、思い出を語りながらコロコロと笑う度  俺たちの肩は触れ合う



摩擦も起きてないのに・・・触れる部分だけ熱くなる


それはオレがフロ上がりであることのせい  だけじゃない



「ほら、さっきね、コレも持ってきちゃった」



そういって出したのは  透明のビー玉



「・・・よくもってたね」



思わず感心しそうになった。



「コーヘイ、こうやってビー玉を月に翳して・・・そこから月を覗くの好きだったよね」



「・・・シィだって・・・やりたがってたじゃん」



1つのビー玉を、よく取り合っていたものだ。



彼女もそのことを思い出したらしい・・・ヘヘヘと笑った。



ゆっくりと・・・その細い腕を少し上げて・・・持っていたビー玉を月に翳してみせる



「・・・キレ~~~~・・・」



まるで見惚れてるような声



そしてオレは



そんな彼女に見惚れていた




昔から、その愛らしさは代わらない



それでも・・・あの頃とはまた違った感情で姉を見てるオレ



気付けば、ビー玉を持っている彼女の腕を、掴んでた。



「・・・・・・・ちょ・・わっ・・・!!」


カラン カラン



彼女の指から零れ落ちるビー玉


驚いた顔をする姉を見下ろすオレ



腕は掴んだまま、床に押し付けた



一瞬にして組み敷いた形になっている



「・・・こーへぇ・・・・」



ドイテといわれる前に、  その唇を塞いでやる




「・・・・・・・んっ・・・・・」




抵抗することもできず、されるがままの彼女



最近はいつもこんな調子




ゆっくりとキスを終えて・・・そしてオレはそのまま彼女の首筋に顔を埋めて抱き締める。



「・・・・び・・・ビー玉なくしちゃっ・・・たじゃない・・・」



うめくような・・・動揺を隠しきれてない声


「後で探すよ」と返せば・・・小さな声で「ばか」と言われた



なんだよ、 勇気を振り絞ってキスしたのに・・・バカ呼ばわりすんなって



でもいいや  弟にこんなことされて・・・それで「ばか」の一言ですましてくれるんだから




「月が・・・見てるよ?」



「・・・みせつけてんの」




「・・・ばっかじゃないの」




「・・・バカでけっこう」




きっと月もびっくりしてるんだろうな



あの時、あんなに仲良く自分を見つめてた2人が・・・ なんてね



でも確かに、かわったのは事実




もう  あの時のオレたちとは違う



残念なことにシィはどうか分からないけど、でも確実にオレはそう




決してほかの人たちには見せ付けられないことだから



だからせめて



この月にだけは   トクベツに教えてあげる





「そういや、まだウサギに手紙だしてなかったな・・・」


オレはそういって笑いながら



「重いよ~」と拗ねる彼女の首筋に優しく口付けた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ