回紗羅別天
あけましておめでとうございます。
新年早々こんなよくわからないタイトルでクリックしてくれた方々、ありがとうございます。
季節は真冬なのにちょっとしたホラータッチになっていますので、そこらへんを注意して頂ければ。
あぁ、だるいだるい。新年早々なにやってんだか俺は…
「ここが例の廃墟かぁ」
「いかにも何か出そうって感じ?」
「なんかもうすでに嫌なんだけど…」
12月27日、安宅七海の唐突な発案により、新年を心霊スポットで迎えることになった。なってしまった。
メンバーは、発案者安宅七海、俺こと嶋幸太、友人の千葉圭佑と吉崎裕子の4人だ。
「よし、そろそろ潜入するわよ!」
「ええ、やめようよぉ…」
「来ちまったもんはしょうがないだろ」
この廃墟は数年前に患者が次々に怪死して潰れた病院で、近隣ではよく出ると噂されている幽霊病院である。
「最終目標はここで心霊写真を撮ること。撮れるまで帰らないからみんな頑張るように!」
「うへぇマジかよ」
「もう帰りたい…」
そうして俺らの廃病院謎ツアーが始まったわけだが、ここからがもう大変で大変で。
足音は多く聞こえるわ鏡に人影映るわ人の気配するわ物音するわで、みんな写真なんて撮れるほど冷静でいられなかった。
そしてあらかた回り終わったところで千葉が突然こんなことを言いだした。
「なあ、『回紗羅別天』って知ってるか?」
「えー?何それ?」
「なんでもな、こういう長いあいだ使われてないところとかにはあの世と繋がる門みたいのが開いてて、近くに来た生きた人間を回紗羅別天ってやつが門の中まで先導するんだって」
「何それこわっ!!」
「その回紗羅別天ってどんなものなのぉ?幽霊なのぉ??」
「たしか鬼とか天狗の仲間だったはずだ。でもな、回紗羅別天は変装が得意だから、いろんなものに変装して俺らを門のところまで行かせようとするらしい」
それはこわいな。
「しかも、あの世の幽霊をこっちに呼び出して生きた人に紛れさせて、そいつを操って誘導したりもするらしい」
「じゃあ私たちの中にも紛れ込んでるかもしれないって事?」
「ヤダちょっと怖い!!」
「紛れ込んでるやつの見分け方は簡単で、お互いの人数を数えて名前を言っていけばいい。それで名前が出てこなかった奴が幽霊だ」
「じゃあちょっとやってみようよ!」
つまり人数を数えて5人とか6人になったら幽霊が紛れ込んでるってことだろ?
「じゃあ行くよ…1、2、3…4………」
「…え?」
ふう、どうやら紛れ込んでる幽霊はいないようだな。
「え…ヤダちょっと待って…!!!」
どうしたんだ吉崎、そんなに真っ青になって。千葉も安宅も、何に怯えてるんだ?
「今…4って言った…?」
ああ。だって俺たち全員で4人だろう。
「なんで…俺たち3人で来たよな!?」
…は?まてまて。4人だろう。ほら、現にちゃんと4人いる。
「お、落ち着いて!まず、あんたが吉崎裕子でしょ?」
「で、あなたが千葉佳祐くん…で、安宅ななみちゃん。で……」
「お、お前誰だ!?」
いやいやいや。俺だよ俺。嶋幸太。
「ヤダ…あたしあんた知らない!!」
「じゃあコイツが紛れ込み…?」
俺を脅かそうたってそうはいかねえぞ。俺は確かにお前らの友達で、一緒にここまで来たんだから。
「嫌…いやああああああ!!!!」
「ちょ、裕子!!」
ギィィ、バタン
「ギャァァァァァアァアァアァァアア!!!!!!」
シーン…
「ヤダ…裕子…裕子っ!!!」
「あれが門なんだ!!あそこに近づいたら引きずり込まれるぞ!」
「でもっ裕子が…裕子がぁぁ!!!」
「とりあえず逃げるぞ!!」
おいっ俺の話はまだ終わってねえぞ!
「離せ幽霊!!」
「いやあああ!!!いやぁぁぁぁぁ!!!!」
バタン…
…行っちまったよ。全く何だったんだあいつら。
…アレ、
……アイツラノ名前、ナンダッタッケ?
………マア、イイカ。
「うわあああぁぁぁぁあぁぁあああああ!!!!!!…」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!……」
回紗羅別天に、捕まってはいけない…
お疲れ様でした。今後もここでちまちま書いては投稿を繰り返しますので、縁があれば今年もどうぞよろしくお願いいたします。