表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競馬  作者: 水前寺鯉太郎
銀河の舞踏(ワルツ) 〜世界を駆ける、泥のステップ〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/40

TTGの再臨! 府中の風を裂く六つの誇り

第18話:TTGの再臨! 府中の風を裂く六つの誇り


東京サーキット、最終直線。残り五百メートル。

 世界最高峰の国際G1ジャパンカップは、からくり競馬の歴史を塗り替える「超次元の領域」へと突入していた。

 先頭を滑るように逃げるのは、青き閃光ジェットボーイ

 磁気浮揚システムを限界まで駆動させ、ガラスのフレームを軋ませながら、光の速度で逃げ続ける。

「――逃がさないよ、ジェットボーイ! 私とテンジャックが、その光を掴み取る!」

 その直後。ジェットボーイが切り裂いた超高速の気流――「真空の風のスリップストリーム」にぴったりと張り付き、深紅の軌跡を描いて猛追する機体があった。

 大竹野智美おおたけの・ともみの《テンジャック》。

 額のV字マーカーを真紅に輝かせ、空気抵抗を完全にゼロにして追走する必殺の加速――「流星の追撃メテオ・チェイス」!

「な……僕の光速に、完全に張り付いているだと!?」

 逃げる優太の驚愕。

 さらに、その二機の外側を、優雅に、氷のステップを踏みながら駆け抜ける白銀の戦乙女ホワイトヴァルキリーとミルコ・スミス。

「オゥ、素晴らしいスピードだネ! でも、最短ルートは私が貰うよ!」

 日本中、いや世界中の観客が、瞬きを忘れて光と銀のハイスピード・ダンスに見入っていた。

 だが。その快速馬たちの真後ろ。

 火花を散らし、黒煙を吹き上げながら、泥臭く、執念だけで喰らいつく影があった。

 西守と《ウラヌス》。

「ハァ……ハァ……ハァ……!」

 ニューラルリンクを通じて流れ込む、機体の熱と軋み。

 世界の最新鋭、芸術品、そして流星の如きエリートたち。その超高速の渦に巻き込まれ、ウラヌスの錆びたフレームは今にも空中分解しそうだった。

『守! もう無理よ、これ以上バーストを続けたら、ウラヌスの心臓シリンダーが内部から爆発するわ!』

 無線から凛の悲鳴が聞こえる。

 だが、守の目は死んでいなかった。

(上等だ。綺麗な走りなんて、最初から求めてない。泥を掴んで、地面を蹴り飛ばす。それが俺たちのステップだ!!)

 守は、赤熱するシリンダーの熱を握りしめ、ウラヌスの全エネルギーを、足の裏のグリップ力へと一点集中させた。

 その時だった。

 ハイスピードで競り合うジェットボーイ、テンジャック、ホワイトヴァルキリー、そしてウラヌス。その集団の背後から、音もなく、不気味なほどの静寂を纏って上がってくる深緑の影があった。

「――お祭り騒ぎは、そこまでよ」

 大竹野千佳おおたけの・ちかの《グリーンクロウ》。

 重装甲ステルスフレームが、風の壁を完璧に切り裂き、他の快速馬たちが全力のスプリントで体力を消耗したこの瞬間に、冷徹に「終わらない末脚」を炸裂させた。

「な、何あの機体!? 排気音が、まったく聞こえない……!?」

 驚愕する智美。

 競り合う快速馬たちの間を、深緑の爪が音もなく引き裂く。必殺の「一閃の奇襲(カラスの爪)」!

 ブラックライスとはまた違う、冷徹なハンターの牙が、先頭集団を一瞬で呑み込もうとしていた。

 残り二百メートル。府中の急坂の上。

 逃げるジェットボーイ、追うテンジャック、滑るホワイトヴァルキリー、襲いかかるグリーンクロウ、そして泥塗れの岡部太陽のシュバルツルドルフ。

 五機が、一線に並びかける。

「弱気は、最大の敵だ。……行けぇ、ウラヌスッ!!」

 守の咆哮と共に、ウラヌスの内部で、これまでとは違う「重低音」が鳴り響いた。

 御厨兄弟との特訓、北の夏の砂浜、そしてブラックライスとの同着。すべての死線を経て、ウラヌスのツギハギのフレームは、今や一つの「生命(獣)」へと昇華されていた。

 ドゴォォォンッ!!

 錆びた鉄屑が、光の粒子を力ずくで撥ね除けながら、大外から大地を蹴り上げた。

 流星の追撃、氷上のワルツ、カラスの一閃を、まとめて泥の底へと引きずり下ろす、野生のバースト!

 六つの異なる「誇り」と「鋼鉄の魂」が、火花を散らし、オイルを噴き上げながら、府中のゴール板へと同時に突っ込んだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ