TTGの再臨! 府中の風を裂く六つの誇り
第18話:TTGの再臨! 府中の風を裂く六つの誇り
東京サーキット、最終直線。残り五百メートル。
世界最高峰の国際G1ジャパンカップは、からくり競馬の歴史を塗り替える「超次元の領域」へと突入していた。
先頭を滑るように逃げるのは、青き閃光。
磁気浮揚システムを限界まで駆動させ、ガラスのフレームを軋ませながら、光の速度で逃げ続ける。
「――逃がさないよ、ジェットボーイ! 私とテンジャックが、その光を掴み取る!」
その直後。ジェットボーイが切り裂いた超高速の気流――「真空の風の道」にぴったりと張り付き、深紅の軌跡を描いて猛追する機体があった。
大竹野智美の《テンジャック》。
額のV字マーカーを真紅に輝かせ、空気抵抗を完全にゼロにして追走する必殺の加速――「流星の追撃」!
「な……僕の光速に、完全に張り付いているだと!?」
逃げる優太の驚愕。
さらに、その二機の外側を、優雅に、氷のステップを踏みながら駆け抜ける白銀の戦乙女とミルコ・スミス。
「オゥ、素晴らしいスピードだネ! でも、最短ルートは私が貰うよ!」
日本中、いや世界中の観客が、瞬きを忘れて光と銀のハイスピード・ダンスに見入っていた。
だが。その快速馬たちの真後ろ。
火花を散らし、黒煙を吹き上げながら、泥臭く、執念だけで喰らいつく影があった。
西守と《ウラヌス》。
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
ニューラルリンクを通じて流れ込む、機体の熱と軋み。
世界の最新鋭、芸術品、そして流星の如きエリートたち。その超高速の渦に巻き込まれ、ウラヌスの錆びたフレームは今にも空中分解しそうだった。
『守! もう無理よ、これ以上バーストを続けたら、ウラヌスの心臓が内部から爆発するわ!』
無線から凛の悲鳴が聞こえる。
だが、守の目は死んでいなかった。
(上等だ。綺麗な走りなんて、最初から求めてない。泥を掴んで、地面を蹴り飛ばす。それが俺たちのステップだ!!)
守は、赤熱するシリンダーの熱を握りしめ、ウラヌスの全エネルギーを、足の裏のグリップ力へと一点集中させた。
その時だった。
ハイスピードで競り合うジェットボーイ、テンジャック、ホワイトヴァルキリー、そしてウラヌス。その集団の背後から、音もなく、不気味なほどの静寂を纏って上がってくる深緑の影があった。
「――お祭り騒ぎは、そこまでよ」
大竹野千佳の《グリーンクロウ》。
重装甲ステルスフレームが、風の壁を完璧に切り裂き、他の快速馬たちが全力のスプリントで体力を消耗したこの瞬間に、冷徹に「終わらない末脚」を炸裂させた。
「な、何あの機体!? 排気音が、まったく聞こえない……!?」
驚愕する智美。
競り合う快速馬たちの間を、深緑の爪が音もなく引き裂く。必殺の「一閃の奇襲(カラスの爪)」!
ブラックライスとはまた違う、冷徹なハンターの牙が、先頭集団を一瞬で呑み込もうとしていた。
残り二百メートル。府中の急坂の上。
逃げるジェットボーイ、追うテンジャック、滑るホワイトヴァルキリー、襲いかかるグリーンクロウ、そして泥塗れの岡部太陽のシュバルツルドルフ。
五機が、一線に並びかける。
「弱気は、最大の敵だ。……行けぇ、ウラヌスッ!!」
守の咆哮と共に、ウラヌスの内部で、これまでとは違う「重低音」が鳴り響いた。
御厨兄弟との特訓、北の夏の砂浜、そしてブラックライスとの同着。すべての死線を経て、ウラヌスのツギハギのフレームは、今や一つの「生命(獣)」へと昇華されていた。
ドゴォォォンッ!!
錆びた鉄屑が、光の粒子を力ずくで撥ね除けながら、大外から大地を蹴り上げた。
流星の追撃、氷上のワルツ、カラスの一閃を、まとめて泥の底へと引きずり下ろす、野生のバースト!
六つの異なる「誇り」と「鋼鉄の魂」が、火花を散らし、オイルを噴き上げながら、府中のゴール板へと同時に突っ込んだ!




