早くもラスボス決戦
ものすごく嫌だ。
逃げ出したいくらいに実家の呼び出しを使いたくない。
ヤヨイ一人なら口裏を合わせずとも現状を訴えれば、俺の家族なら早呑込みしてくれるだらろう。
だけど…シズカだ。
一年後の再婚相手まで引き連れて実家帰りとかあまりにもふざけていると思われないか?
うーん…。
そして輪をかけてこの奇妙な団体の主導権をなぜかシズカが握っていることが不安と言うか、想定の難しさを際立たせている。
「ここまで来て…」
シズカは躊躇いもなく呼び出しを押した。
なんとなくだけど人生を変える音…そんな気がした。
「タケル?」
間違いなくラスボスの声。
シズカが頷く。
「志水です」
あっ。
系統の違う美人も二人、驚いてこちらを見る。
それきりインターホンから声はせず、門が開くのを待つ。
「2回目だけどやっぱり大きいわね」
そういやシズカは一度来たことがあったっけ。
「おまえのうちほどじゃないと思うが」
シズカの実家に行ったことはないが話には聞いている。
工場と住まいが一緒だからそりゃ大きいはずだ。
などと話していると門が開く。
「どうしたの、タケル」
と姉さんが顔を出す。
「嘘…。綺麗」
シズカが端的に失礼とも取れる発言をする。初顔の人にはわりかし慎重に接するシズカも思わず本音を漏らしたってところか。
まあ、売れないモデルだからな。
「誰?あなたたち」
早速ラスボスは不審感を露わにして二人を見る。
ヤヨイどころかシズカでさえ初対面だ。
「ええと…」
気圧されたのか言い淀むシズカ。
「妻と愛人です」
決戦の火蓋は今の今まで大人しかったヤヨイによって落とされた。
俺とは違い姉は気が強い。
つまり…。
「あなたおかしいの?」
ずいぶん失礼だが姉を知る俺にはずいぶん控えめに聞こえる物言い。
「志水ですから」
「清水さん?それが?」
お互い漢字の違いが分かるのか微妙な会話が始まる。
「ご挨拶に参りました」
「よく分からないから。タケル、入って。あなたたちは帰りなさい」
怯んでいたシズカも参戦する。
「さすがに失礼じゃないですか?」
気の強い者同士のにらめっこが始まった。
中坊のメンチ切りかよ。
「あたしは志水ヤヨイと言います。タケルくんと昨日入籍しました。それでこちらが…1年後にタケルくんと結婚するとかぬかしている、名前もないモブです」
…おまえは。
火に油を注いでいるのはこの三竦みで一番気が弱そうな…妻だった。




