表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載版:10個の約束  作者: カラー
第1章:ひとつ目の約束

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

はじめまして

 圧倒されたようにヤヨイは首を縮こませた。

 まるで亀だ。


「……志水だもん」

 小さな声で呟く。


「え、なんですって?」

 一昔前の難聴系主人公みたいな返しをするシズカ。ちょっとした煽りだ。


 シズカが恋愛絡みのストーリーが好きなことを知る者は少ないと思う。

 普段が冷静、理性の振る舞いをしているからこそギャップに気がつかない。


 ・・・

 初めてシズカと会話をしたのは入学してすぐ。

 学食で一人、食事後に俺は本を読んでいた。

 あまり知られていないミステリー。デビューしたての処女作だった。

 たまたま書店で見かけ装丁に一目惚れして買った代物。

 そこへ通りかかったシズカがその本に目を留めた。

「珍しいわね。その本読んでる人初めて見たわ」

 すでにキャンパスでシズカは美で有名人であり、その彼女に話しかけられただけで俺は浮かれたと思う。


「だいたい主人公がヒロインを選ばないなんておかしいわよね?」

 …いきなりネタバラシしたな。まだ途中だっての。

「あんな幼馴染よりヒロインの方がよっぽど可愛いじゃない」

 …殺人犯が可愛い?


 もしかしたらこの人は他人とは違う世界観を持ってるんじゃないか、と感じた時に俺はシズカに恋をした。


 ・・・

 瞬間的に出会った時のことを思い出してふと口に出してしまう。

「シズカはキツネだ」


 ぽかんと口を開けるシズカ。

 あ…やべ。


「どういうこと?」

 キツめの顔ってことだ。


「キツめだからキツネ?」

 ダジャレにもならない。

 我ながらセンスがない。


「それともわたしがタケルくんを化かしたとでも言うの?」

 俺が言葉を発する前にシズカはヒートアップしていく。


「ヤヨイはタヌキ」

 今度は確信を持って言う。

 どっちかってばそれ系統の顔だし。


「キツネには勝てないってこと?」

 ヤヨイがおかしなことを聞く。

「だいたい昔話ならタヌキはキツネに勝てないじゃん」

 そんな常識あったか?


「泥棒猫かタヌキかどっちでもいいけど。あなた、ねえ」

 語尾に怒りがこもっていた。


「どっちもよくない」

 なんかヤヨイも怒り出した。


 二人ともそんなに怒ると美人が台無しだぞ。


「別れてないのに浮気したの誰?」

「別れたから入籍したのに…」


 あー完璧な修羅場じゃないか。

 どちらか選ぶって選択肢は…。


「「ない」わ」


 さてこうなったら…。

 逃げる以外に道はなさそうだ。


 そうやって腰を浮かせかけた時。

「あ、お母さん」

 ヤヨイがそうやって手を振る。


 よく似たタヌキ顔の女性に挨拶される。

 あなたが夫の志水タケルさんね、と。


 礼儀正しい俺はこう答えるしかない。


 はじめまして。お義母さん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ