火星人のすすめ
気付いている
少しずつ、確実に
この星に暮らすことが、難しくなっている
猛暑は酷暑、もはや暑いではなく熱い
人間が、生きていける環境を超えつつある
そう、火星のように
荒野が広がる、砂や石、巨大火山
太陽からの猛烈な光、宇宙からは隕石
生き物の欠片すら存在しない、即ち無
人は何故、ここを地獄と見ないのか
何故なら人の想像する地獄とは
苦しみ、という感情が必要
無為ではない
生は無くとも、痛みを感じる
業、罪を償う為に、苦しまねばならない
そう、火星ではない
ここで論理の転回を謀る
無と地獄は繋がらない
死は無であるのに、死は地獄が待ち受ける
人間という存在
死後ですら自分たちの想像した世界に生きている
永遠を、夢見ている
そう、火星は人間たちの世界ではない
今から、私は火星人であると主張する
その瞬間、私は無に帰する
地獄と天国から解放された
人間の軛から放たれた、宇宙人となる
この星で暮らすことが、難しくなってきている
地球人は、地球では生き残れない
私は、早々に火星人と宣言した
精神上では私を縛るものはない
しかし
身体は別だ
必要不可欠を補給し、続けねばならない
挙げ句に腐る、他の生き物の餌となる
火星人である私はいう
なんという不合理、非効率、非論理的なことか
精神も肉体も
全て(自ら)自星に縛りつけてしまっている
まさに、地獄の住人たちよ
砂と岩に囲まれた、生物のいない美しき世界
合理的、効率化、論理的
ものを考えること、自体が苦しみである
私は火星の地表に、一人座る
只、座禅する
私、自身が火星になるまで座禅する
こうして、今日も火星は砂と岩しかない
私はハッピーライフをエンジョイしている
思うことも、肉体もない
幸せである