20. 皆が褒めてくれる?びゃあ゛ぁ゛゛ぁきんもぢいいいい!
「発喜さん!山火事を消したことについて一言お願いします!」
「発喜さん!魔法を使える感想は!?」
「発喜さん!魔法を使って見せてください!」
「や~どうもどうも。人気者で困っちゃうな」
マスコミに囲まれた発喜は言葉とは裏腹にご満悦な表情だ。
彼女は今、駅前火事があった街の消防署に訪れている。
駅前ビル火災の消火活動に協力したことによる感謝状を受け取るためだ。
山火事の方はまた後日感謝状を受け取ることになっている。
消防署の近くはマスコミや野次馬であふれかえっていて、どうにか整理しようと警察官の怒号が響いている。
全ては発喜が徒歩で消防署に訪れたことが原因だ。
車で移動するとちやほやされにくいと思った発喜が、送り迎えを断り徒歩で行動してしまったが故の大混乱。
何故か道中で彼女にマスコミが群がって来なかったが、その分消防署が酷いことになっていた。
「はい、どいてどいて。通して下さーい。発喜も牛歩しないの。後でたっぷりチヤホヤされる時間があるんだから。消防署の人が待ってるんだからさっさと行くよ!」
「はいはーい」
「はいは一回!」
「はーい」
マスコミの包囲から発喜を守るのは、幼馴染のまもりだ。発喜が今日感謝状を貰いに行くと知り、絶対に騒ぎになるからとフォローしに来たのだ。
「ほら、中に入るよ!」
「急がなくっても逃げないって」
「だから待たせるのが悪いって言ってるでしょ!」
チヤホヤされまくりで、まもりに怒られようが今日の発喜は何とも思わない。楽しすぎてニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべっぱなしだ。
なお、流石に今日はまともな服装にするようにとまもりがコーディネートして、歳相応の皴の無いフォーマルな装いだ。元々が本当に美少女であるため、非常に目を惹く見た目になっている。表情が全部を台無しにしてしまっているが。
「こちらへどうぞ」
消防署の中に入ると、消防員の方が控室に案内してくれた。
するとそこには発喜の見知った人達が待っていた。
「発喜お姉さま!」
「双葉ちゃん!」
「私もいるぞ」
「一葉さん!」
更科姉妹が駆けつけてくれたのだ。
「来てくれたんだ!」
「発喜お姉さまの晴れ姿を見逃すわけには参りません!」
「たっぷり堪能していってね」
「はは、発喜クンは相変わらずだな」
「一葉さん、もう退院されたんですね」
「ああ、元気すぎるから出ていけって叩き出されたよ」
「あははは!」
ゲームの中でも外でもお世話になっている更科姉妹とはかなり仲良くなった。これまでは一葉が入院中ということもあり一緒に遊ぶ時間は限られていたが、退院したということはこれからたっぷり遊ぶことになるだろう。
「あ、あの、発喜様」
「菜乃羽ちゃんも来てくれたんだ」
「も、もちろんです!」
そして出会ってからの時間は短いが、お泊り会をしたことでぐっと距離が縮まった菜乃羽もまた、発喜が感謝される姿を見に来たのだった。
本当は彼女達の両親が来たいところだが、流石に三権分立の二つの長が直接会うわけにはいかず、しかもマスコミが大量にいるところとなれば更に難しく、娘達に譲った形になる。
「うう、いつの間にか発喜が他の女の子と仲良くしてる」
ゆらりと怪しいオーラを漂わせるまもり。
そんな彼女に更科姉妹が話しかけて来た。
「まもりさん、ですよね。発喜お姉さまへのフォロー凄かったです!」
「ああ。特に阿吽の呼吸で発喜クンが言いたいことを代弁したシーンとか最高だった」
「ありがとうございます。発喜の一番の親友兼幼馴染として出来る限りのことをやっただけです」
「…………」
「…………」
自分が無自覚にマウントを取ろうとしていることにまもり本人だけが気付いていない。
「はは、聞いていた通りの人物だな」
「気を付けないと……!」
「?」
更科姉妹の警戒度が上昇したような気がして、不思議がるまもり。だが姉妹は警戒しながらも距離を縮めようとしてくれた。
「発喜クンに近しい人間としてこれからよろしく頼む」
「機会があればFMOでも一緒に遊びましょう!」
「あ、はい。一番近い私で良ければどうぞ」
「(こいつやべぇ)」
「(やばすぎです!)」
自分が発喜にとって一番だとナチュラルにマウントを取ってくるまもりに対し、更に警戒を強める結果になってしまった。
「南城さん、準備が出来ましたのでそろそろよろしいでしょうか?」
「は~い!」
元気よく返事をし、発喜は感謝状を受け取りに部屋を出ようとする。
「じゃあ行ってくるね!」
「頑張ってください!」
「頑張れ」
「ふぁ、ファイトです!」
三人が応援する中、まもりだけは違う言葉を投げかけた。
「ねぇ発喜、もっとチヤホヤされる方法を教えてあげようか?」
「え!?何々!?」
「簡単よ。表彰状を受け取る時だけで良いから、キリっとした表情になりなさい」
「それだけ?」
「それだけ。美少女が着飾ってるんだから、そのだらしない表情を止めたら映像映えして大人気間違いなしよ」
「う~ん……なら少し頑張ってみる!」
どうやら発喜はまもりのアドバイス通りに頑張ると決めたようだ。緩んだ頬をキリっとする練習をしながら部屋を出て行った。
「素晴らしいアドバイスじゃないか!」
「綺麗な発喜お姉さまが見られるだなんて眼福です!」
「さ、最高のアドバイスです」
更科姉妹と菜乃羽は絶賛の言葉をまもりに投げかける。
「せっかく着付けたんだから、綺麗なところを見せて貰いたかっただけですよ」
「「「(うわぁ)」」」
そう答えたまもりの表情はあまりにも気持ち悪くデレデレと歪んでおり、こいつ発喜にガチ恋してる相当ヤバイやつじゃないかと三人に認知されてしまったのである。
--------
キリっとした表情で感謝状を受け取り、配信を見ている全ての人を虜にした発喜は、消防署内に設けられた会見場で記者会見に挑んでいた。
「何でもお答えしますが、質問の前に必ず褒めてください!」
前代未聞の宣言でマスコミ達を困惑させた会見は日本中から大反響を受けながら進んで行く。
褒められて注目されていることが嬉しすぎるのか、その顔はだらしなく歪んでおり感謝状を受け取った時と同一人物とは思えない。
「▽〇テレビの棚橋です。この度は多くの人を助けて頂き、誠に感謝しております」
「えへへ、それほどでもあるよ」
「……南城さんは」
「美少女JDの南城発喜です」
「……美少女JDの南城さんは」
なんとこの女、記者会見でも己のことを美少女JDと呼ばせている。意味の無いゴシップ的な質問や失言を狙う質問ばかりすることで普段は炎上する記者たちも、今日ばかりは日本中から同情的な眼で見られていた。
「FMOではメテオフォールという強力な魔法も覚えられるそうですが、それを覚えてリアルで使いたいと思いませんか?」
リアルで魔法を使えるなど危険では無いか。
そういう流れにもっていきたい記者による悪質な質問が来た。
もちろんそんな質問だろうが発喜は何も考えずに思ったことを告げてしまう。
「え、良いの?」
「え?」
「流石に危ないからそういう強い魔法は覚えなくて良いかなって思ってたんだけど、そうやって質問してくれてるってことは覚えて欲しいってことだよね。じゃあ頑張っちゃおうかな!」
「な!」
これで記者の目的は達成された。
発喜は危険な存在だとたっぷり叩けるだろう。
だがそれと引き換えに、その記者は世界の敵として認知されるようになった。
お前が余計なことを言ったせいで。
世論からも同業者からも目の敵にされた記者は、この先まともな人生を歩むことは出来ないだろう。
ちなみにメテオフォールなどの超強力な魔法は魔法職でなければ覚えることが出来ず、発喜のフォーチュンファイターでは無理である。発喜はそのことを忘れて発言していただけであり、フォーチュンファイターが気に入っているので転職せず覚えることは無いだろう。
そんな発喜のある意味無双な会見をまもり達は離れた所で観察していた。
「流石だな。歴戦の記者達をこうも翻弄するとは」
「あの腐れ記者ざまーみろ」
双葉が珍しく汚い言葉を発しているが、それは父親の会見の時にいつも嫌な質問をする記者が発喜にやりこめられていたからだ。
「で、でも大丈夫でしょうか。て、敵を増やしたら発喜様に危険が」
菜乃羽が心配なのは、有名人となった発喜が危険な目に遭うこと。
そうならないために、山火事対応で中途半端な有名人から誰もが知る有名人へとクラスチェンジさせたのだが、それでも心配なものは心配だ。悪い奴というのはどんな状況でも仕掛けてくるものなのだから。
「大丈夫だ。番犬が常に守っているからな」
「鷲鷹もだよ」
「そ、そうだったんですね。サイバーナイツだけかと思ってました」
「(聞かなかったことにしよう、そうしよう)」
一般人の自分が聞いてはいけなさそうな裏社会の話が耳に入り、必死で忘れようとするまもりだった。そんなまもりも実は三つの内のどれかに守られている。発喜本人だけではなく、彼女が大切にしている物は全て守られていたのだった。
「(まだ不安は残るけど、大丈夫なのかな?)」
ゲーム内アイテムを持ち帰ることが出来て、魔法まで使えるようになった。
ちょっと目を離しただけでこんなにも異常なことをやらかしてしまった幼馴染の事がまもりは心配でならなかった。だが彼女がやらかすにつれて彼女を守りたいと思う人々も増え、結果として彼女は笑顔で人生を堪能出来ている。
世界中から褒められてだらしない顔を晒している発喜は、やりたいことをこれから何でも出来るようになるだろう。自分だけが傍にいるわけではないことを寂しく思うが、彼女が幸せならばそれで良いとも思う。
もちろん彼女がどのような道を選ぼうとも、まもりは決して彼女から離れるつもりは無いが。
「お姉ちゃん、発喜お姉さまはこれからどうするのかな?」
「そうだな。テレビタレントとして活躍するのかも知れないな。発喜クンは多くの人に見られることが好きで、バラエティでもアイドルでも何でもこなせるだろうから適職だろう」
正確には多くの人に褒められるのが好きなだけである。
もちろんテレビに出てチヤホヤされるのが大好きという点については間違っていない。
「そ、そうなんだ。え、FMOで遊べなくなっちゃいますね……」
FMOより楽しい物を見つけてしまったのならば、もうFMOには戻って来ないかもしれない。
一緒に遊べなくなることを菜乃羽は悲しみ、更科姉妹も複雑そうな顔をしている。
彼女が幸せならばそれが一番だ。
そしてその上で、彼女と一緒に遊びたかったからだ。
「そんなことないですよ」
三人のネガティブな未来を、まもりはばっさりと斬って捨てた。
何故なら発喜に今後のことについて既に聞いてあったからだ。
『ねぇ発喜、テレビとかのお誘いが来たら出るの?』
『うん。すっごい楽しそうだし、皆が褒めてくれるし』
『そっか。じゃあ忙しくなってFMOはプレイしなくなっちゃうんだね』
『え?』
『だって多分テレビで引っ張りだこになってゲームする時間無くなるよ?』
『そんなの嫌!それならテレビ出ないでゲームする!』
褒められることが大好きな発喜が、分かりやすく褒められるテレビよりもゲームの方を選ぶだなどまもりには嬉しい想定外だった。
「発喜ったらテレビに出るよりもゲームをする方が良いらしいんです。FMOを相当気に入っているっぽいですね」
「そうなのか!」
「やった!」
「う、嬉しいです!」
三人、いや四人は分かっていなかった。
発喜とFMOで引き続き遊べること。
それは発喜がまた新たなやらかしをしてしまう可能性があるということだと。
世界がまたしても彼女に驚かされる日が来るかもしれないということを。
「(何があっても私は貴方の味方よ)」
ライブの時に彼氏面彼女面するオタクのような心境のまもりの前で、発喜は楽しそうに質問に答え続けていた。
「山火事の時にび、美少女JDの南城さんと一緒にいた方について紹介して頂きたいのですが」
「まもりのこと?」
「(え、私?)」
腕を組んで見守っていたまもりの顔が一気に青褪める。
発喜が絶対に言ってはならないことを言うだろうと確信しているからだ。
「まもりは私の大切な幼馴染だよ」
「!?」
普通に紹介してくれたという予想外さと、『大切な』と言ってくれたことにまもりは感動した。
思わず瞳が潤み、涙が零れてしまいそうな程に。
だがそれは早とちりだった。
発喜がそんな普通な紹介をするわけが無いのである。
「でも最近は私を見る目が怪しくてちょっと怖い」
「ちょお!?」
いきなり雲行きが怪しくなり、浮かんだ涙が引っ込んだ。
「やっぱりアレかな。高一の時に貧乳なのを気にして……」
「やめろおおおおおおおお!」
慌てて会見に乱入して口を閉じさせようとするが、後一歩遅かった。
「大きくするために私に揉んで欲しいってお願いしてきた時に目覚めちゃったのかな」
「ぎゃああああああああ!」
世界中が注目している会見だということは、もうまもりの脳内から抜けていた。
今はどうやって目の前の愚か者を封じるかしか考えられない。
「どうしてあんたはいつもいつもいつもいつも言っちゃダメなことばかり言うのよ!」
「別に言ったところで減るもんじゃないしいーじゃん!」
「どこ見て言ってるの!」
「まな板?」
「コロス!絶対コロス!」
「ぎゃああああ!お巡りさん助けて!殺人宣言ですよ!」
「ひ~ら~き~」
「びゃあ゙ぁ゙゙ぁ!助けてええええ!」
記者会見の場での前代未聞の乱入からの大喧嘩。
この配信を見ていた視聴者達は次々とネットにこう書き込んだという。
てぇてぇ。
「「てぇてくなーい!」」
記者会見で暴走するのはダメ、ゼッタイ!
ということでこれにて本作は完結とします。
あんまり伸びなかったですからね、仕方ないです。
一応もう少し続きのアイデアはありますが、このくらいにしておきます。
なお、本作は未投稿未執筆の別作品と同じ世界観の作品になります。
運営側の秘密とかは別作品側で明かす予定です。
執筆することになるかどうかは分かりませんが、投稿を始めたらよろしくお願いします。
ということで、短い話でしたがここまでお読みいただきありがとうございました。




