第八話的なもの『がんばれ! 茜音さん』
この国の首都付近に実質の学園都市として聳える、最龍侍学園で、本日もいつも通り授業があり生徒や教員、その他職員などが様々なやり取りを行なっていた。
その学園の教員の一人である、中田 茜音は教員室で山積みの作業に追われている。
「よし! 半分ぐらい書類のサインや整理終わったし、一休み!」
「それで休憩とは、実に面白いですね。中田さん」
「うわ! 2-D組担当の、通称『研究オタク』! いいんです。終われば!」
「……わたくしの名は桐生院と申すのですが。いいでしょう、それより最近、奇妙な女性を連れてきたと学園でかなり、噂になっていますよ。あー、あの子の名前、なんでしたっけ」
「教えませーん。ベー」
子供みたいに舌出して挑発するのを、口に棒つきの飴を咥えてはかけている黒縁の眼鏡を光らせる。
一見ポーカーフェイスを維持しているようにも見えたが、噛み砕くような音が一瞬した。
「怒ってるー! 社会人として情けないです」
「いやいや、そちらの方が我々教員として情けないのですが。やれやれ」
「自分は怒ってないし」
まあまあ。と周囲からしてあまりにもどうでも良いやり取りに止めに入る、隣に座っていた男性のやや小太りの教師。
「……ありがとうございます。中田さんにその狐の事を尋ねたのは他でもない、狐自体は大した実力のようには感じないが、厄介な点が二つありましてね」
「はむ」
茜音の机に入れてあったコロッケをぱくぱく、もっちゃもっちゃ食べる。まるで聴く姿勢なし。
「フルアクセル・リングでしょうか。どこから入手したのか、しかも得体の知れないエネルギーを秘めている」
「ほーひへは、はひかに!(そういえば、たしかに!)」
「ちゃんと聴けこの女! もう一つは白龍の存在ですよ。我々最龍侍学園以外に、世界線干渉する技術を持っている」
「うんうん。だからあの子にコンタクト取ってみたわけ。いやー、君より良い仕事したなー」
「ちっ」
「舌打ちこわーい」
またしても先ほどの教員に止められようとする。そろそろ教頭の視線が怖いところか。
「作業戻る! お前は二度と話さん!」
ぷりぷり怒っては地団駄を踏みながら自分のデスクに戻った。
一方で茜音は、
「フルアクセル・リングか。そういう事もあるよね! スッキリしたし、自分も作業戻ろ」
本日の茜音は華麗に定時で帰って、桐生院は最後まで残業したとさ。
めでたしめでたし?