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第二十四話『真っ赤な友達』

れんさん、まずいよこれは」

「じゃが、今立ち向かわなくてどうする! 色んな人が犠牲になるだけじゃ!」


 思わず固唾を飲む。此奴こやつを倒すには今から自分達が強くなるしかない。一か八か勝負といこう。

 ふと、白龍はくりゅう様が頭の中にテレパシーを送ってくる。この感じ久々だ。


『その、熊の人形を、紐を引っこ抜いて相手に投げるのです』


 なんじゃと? ってそうか、これはもしや手榴弾・・・なのか。もしかしたらラムちゃんは分かって私の元に落としてきたのかもしれぬ。

 咄嗟にストラップの紐を千切るように引っこ抜き。


「伏せろ穂村ほむら少年!」

「なに!?」


 龍化した翡翠ひすい少年の方へ全力で投球。熊のストラップは眩い光に包まれ、間に誰かが割って入ったのが見えた。

 私も遅れて体の正面を地面へ。顔ごと伏せていたので確信はないが、コードネーム:Rのような叫び声が聞こえた。のち、私達はそれぞれ大きな爆風によって吹き飛ばされる。

 私は生い茂る森林の中の、大きな樹木の葉の中まで吹っ飛ばされ、遠くには彼岸花のような赤黒い煙が見えた。

 フルアクセル・リングを使って元の研究所の建物、まで粉々になって大きなクレーターが出来ていた。そこには傷だらけの龍化した翡翠少年と、やはり庇ったRが身体中から白い煙を上げて必死に耐えている様子。

 遅れて、簡易版フルアクセル・リングを使って飛んできた穂村少年も合流した。なぜか白龍様は居なかった。


「お主、あんな巨大な爆発でも耐えれるのじゃな。大した根性である」

「翡翠は俺の……俺の友達なんだ。どんな事があっても二人で頑張ろうって。頼む。これ以上、友達を苦しめないでくれ」


 Rは土下座するように地面に倒れ込んで、顔のある位置から雫が溢れているのが分かる。

 しかし、様々な世界線の人々を苦しめているのも恐らく此奴が主犯であり、そうだとしたら決着は必ず必要だ。


「絶対守るぞ。絶対、い!?」

「危ない!!」


 フルアクセル・リングのNo.①を使って、突如爪を立てた翡翠少年からRを助け出す。もしや暴走している? 地面にめり込んだ爪が深くまで突き刺さっており、ゆっくりと引っこ抜かれると石つぶのように見える欠片が大量に落ちてゆく。


「なあ!! なんで! 友達じゃないのかよ!」


 頭を抱えて考えでいっぱいになっているのじゃな。いくら裏切りや敵対があったとはいえ、こうなればどちらかだけでも救うしかない。


「穂村少年とR、提案があるんじゃが。頑張って翡翠少年の動きを止めてくれぬか」

「出来なくなないけど、攻撃を打ち込むのかな」

「違う。でも解決は出来る可能性がある」

「分かったぜ!! 頼むぞお前!」

「指図するな! まあ、やるけど」


 いったん刀を穂村少年に返し、そして二人は翡翠少年の動きを止めるべく一斉に飛び出す。

 私は、狸男から譲り受けた『ココロロック・グローブ』を右手にはめ、グローブに意識を集中させる。真っ黒い空間が展開され私と龍化した翡翠少年、周辺には大量の彼岸花が咲いていた。

 自分の位置から少し奥、鎖で手足を縛られた姿があり、足元には多くのフラスコに入った薬品や黒い宝石が散りばめられてある。恐らく、様々な存在が龍化した原因なのかもしれない。

 また、その手前にはよくアニメなどで使われている牢屋の鉄の柵でへだたりがあった。

 まずはどうにかこの柵を通らなければいかん。どうしたらいいものか。とりあえず長時間考えている暇は無いので、柵に近づいてみる。


「なんじゃこれ。通れるぞ」


 不思議な感じではあるが、とにかくは近づいてみる。ものの、翡翠少年の咆哮で吹き飛ばされた。柵は透明の物らしくぶつかったりは決して無い。


「いてて、って。写真も飛んできたな。もっと幼い頃に翡翠少年と、Rじゃろうか?」


 肩を組んでとても楽しそうじゃ。あの時、鬱陶しいくらい絡んできた狸男を思い出す。

 感傷に浸っている気分ではないが、つい。もう一度近づいてみよう。

 さっきの咆哮で鎖が砕けたみたいで、翡翠少年は解放されていた。もしや、ここでも戦う事になるのか? 否、戦闘が始まる気配がせぬ。

 しかし、黙ってこちらを見ておる。


「貴方が主犯でしたか」


 咄嗟に振り返る。そこには白龍様がいた。状況的に感動の再会をしている場合じゃないのは思っているので、特に挨拶の会話も交わさず反射的に質問を言ってしまう。


「どういう事、じゃ?」

「蓮と茜音あかねがいながら、よく掻い潜れたもの。ここで貴方を内面から抹消する!」

「白龍、様……? やめて!」


 本人の白龍炎はくりゅうえんを目の前に、また成す術も無く白く輝く炎は翡翠少年を襲う。

 私ごと一瞬意識を失い、気づけば暴走した翡翠少年を静止する行為も終わっていた。終わらざるを得なかった。なぜなら、既に丸焦げになっていて体の一部分を失っている。

 やがて、徐々に全身が粉々の灰となり、風に乗って天へ向かっていった。


「翡翠、ごめんよ。最後まで守るって約束、できなかった」

「分からないけど、急にこいつが激しい白い炎に包まれた。終わった、んだよね。蓮さん」

「……分からぬ。終わりは、各々で決めろ」



⭐︎⭐︎⭐︎



 それからライトニング・トレインが私達の元に来て、Rや翡翠少年と、気絶したラムちゃんと共にひとまず雷鳴駅まで戻る。魔王を名乗る大男も、白龍様も姿は無く探す余裕は空いて無くて、私と茜音さんと、桐生院きりゅういん先生で事後報告をお互いする。

 白龍様の仰っていた通り翡翠少年が主犯で、人間に対する恨みや怒りの感情があり、様々な世界線を混乱に陥れていたと言う。今思えば、あそこで白龍様を止める勇気があれば、もうちょっと良かったのかもしれぬ。過去など変えられないから、これから私らが良い未来を紡ぐ他あるまい。

 そして桐生院先生が用事で居なくなり、私と茜音さんだけになった。


「ねえ、蓮。これからどうするの? 故郷に帰る?」

「わしは帰らない。過去を無理に振り返らない事にした。この現代日本で過ごすのじゃ」

「分かったよ。色んな人が居なくなってくね」

「それも生物の運命である……」


 なぜか胸が熱くなって視界が滲んできた。

 かなしい。

 あんな終わり方あんまりじゃ! いやじゃ!


「……帰ろ。今日は私の家で」

「うむ」

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