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第二十三話『日の狐の心得』

 どうやら、この謎めいた中身の硬い熊の飾り物を落っことしたのは、ラムちゃんのようである。

 さっき貰った、勝手に透視スコープと呼んでいる望遠鏡でこれを見た所、小さな四角い物体が入っており、この紐を引き抜く事で何かが作動する。はず。

 何が起きるかは検討もつかないので、放置しておく。

 もう一度スコープでラムちゃんの行方を見ると、山のある方面へ向かっている様子だった。もしかしたら、何かあるのかもしれない。穂村ほむら少年に提案し、龍化した魔王の後を追う事に。私達はフルアクセル・リングを起動して飛翔、風を切りながら追う。

 しばらく飛んでいると、ドームのように大きい、呪符の模様が幾らも描かれている結界がこの日本における現代的な建物を守るように覆っていた。

 魔王は耳が塞がるような咆哮を上げると、紫色の光線で結界を破壊した。ラムちゃんは簡易版フルアクセル・リングを使用して一人でに建物へと侵入していく。よく分からないが、彼女を放置する訳にもいかぬので、私達も半壊した窓から建物内へ。

 訳も分からず探索していると、突然に穂村少年は雑談を切り出してくる。


「ねえ、れんさんはもし、翡翠ひすいさんを倒したら、故郷に帰るのかな」

「なんじゃいきなり。あんな状況じゃ世界ごと崩落するじゃろう。白龍はくりゅう様の言いつけを守って、この日本に残る所存」

「そうなんだ。実は俺も、元の世界があるんだ」


 色んな世界と想いが交錯しているのじゃな。この、現代日本とやらは。

 なんとしてもそれぞれの安泰の為、黒幕であろう翡翠少年を倒さなければなるまい。

 そんな事を話していると、大きめの広間に出る。魔王の咆哮の影響で停電しており、どこも薄暗い。研究をしていたと思われるゴブリンの魔物が数体、目を光らせていた。

 間髪入れず穂村少年は峰打ちで全員、刀で斬り捨てる。急いで二人で室内を調べ上げるも、何もめぼしい物は存在せず。


「何もない、か」

「うむ。そもそもここに翡翠少年はおるのか?」

「いる気がする」

「何となくじゃが、わしもじゃ」


 いきなり、指先が痺れる感触がした。明らかに静電気だが、ただの静電気ではない。部屋全体がいきなり桃色の電撃が走る。我々に外傷は無い様子。


「上だ! 上からこの電撃の妖力がする!」


 時間がないので、私の白龍炎はくりゅうえんを使い真上に穴を開ける。飛翔して最上階へ行くと、ラムちゃんと翡翠少年が戦っていた。

 少しの間は拮抗していたものの、浮遊した翡翠少年に喉元を掴まれ、動かなくなってしまう。


「よくも!」


 フルアクセル・リングのNo.①を使い一瞬で翡翠少年の元へ。爪で引っ掻こうとしたスレスレで、目にも見えぬ速度で避けられる。ラムちゃんはそのまま落下していく。

 穂村少年が受け止めて、私と翡翠少年で対峙する局面へ。


「目的はなんじゃ」

「全、世界征服かな。いや……滅ぼす」

「必要ないじゃろう!」

「必要ないのは、その偽善だろ」

「とにかくは方針のたがい、ここで決着をつけよう」


 どこからか決闘者たいせんあいてはナゾ子の故郷にありそうな金色の柄をしたサーベルを取り出す。穂村少年がさやに入ったままの、自分の刀を私に放り投げてきた。反射的に掴む。


「お主じゃなくていいのか?」

「蓮さんが、決着をつけるんだ。もう、俺より強い」

「そうは思えぬが、ならば気持ちを受け取ろう!」


 すかさず相手は斬りかかってくる。何度も刃が交わり、鋭い音が室内に響く。

 刀からホムラの如く揺らめく、強い妖力を感じる。手に馴染む。

 一度目の鍔迫つばぜり合いが発生し、わしは弾き飛ばされ、両足で地べたを引き摺りながらも耐えた。そのまま、刀を横方向垂直へ。


「蓮さん! それは日の狐様の構え……! 流石、同じ狐だからこそ分かるのかもしれない!」

「何が日の狐だ! お前達をぶちのめして、この世界も終わらせる!」


 この刹那、一瞬一瞬が揺らめく時。

 太陽光の糸を掴むように、この名刀『狩魔カルマ』に全ての妖力を込める。

 気づけば、緑色と赤色の覇気がぶつかり合う。勿論、わしが赤色の覇気だ。

 やや、こちらが押されている。諦めたくないが、これ以上の力は出せない……!


「惜しかったなぁ!? お前達は、最初から甘かった!」

「うむむむ!! ここまでか!」


 ふと、全身が急にリラックスして周辺が真っ白くなる。でも、力を込めている姿勢は変わらない。

 背後から肩に手を置く感触がした。


「蓮さん。よく、頑張りました。最後に、私達で決着をつけましょう」

「振り返らなくても、感触と声で分かるぞ。白龍様!」

 きっと後ろで微笑んで頷いている事じゃろう。

 この、結界破壊師と恐れられたわしなら。否、わしと白龍様なら、勝てる!

 元の覇気がぶつかり合う雰囲気に戻り、わしと白龍様で緑色の覇気を押し切る。翡翠少年を壁まで突き飛ばし、ぶつかり合った覇気は星のように周辺に降り注いだ。


「おゆきなさい。蓮」


 今振り返って、恐らく肉体として具現化した白龍様に抱きつきたい所じゃが、そんな場合ではない。

 黒煙の中で翡翠少年の体は肥大化、体が人形の、大きな緑色のドラゴンとなった。

 口から光線を乱反射し、この建物の屋根は崩れて野晒しになった。

 黒い雲の空の下、目の前の叛逆龍はんぎゃくりゅうと化した翡翠少年は、さらに体の筋肉を増幅させる。

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