第二十二話『最下層』
私はボロボロになった茜音さんをトレインに連れ戻し、桐生院先生と共に一足先に現代日本へと帰ってもらった。
私、ナゾ子、穂村少年はホームズの提案でこの世界に残留する事になったが、突然トレインの広間にある大きなテーブルにまっさらな白紙を出し、王国の簡易的な横からの地図を描き出した。そしてその下に横長い四角を描き、適当に斜線で影のような模様を作る。
「今からライトニング・トレインでこの地下に突撃する。衝撃と戦闘に備えてもらえる」
「は!? 申し訳ないが根拠はあるのか?」
そりゃナゾ子がこういう反応するのも無理は無い。
以前も言った通り私も一度この世界に来た事はあるものの、何かがあるなんて気配は全く感じなかった。
仕方ないなと言わんばかりに、色んな部品をくっつけた両手で持てる程度の大きさの望遠鏡を幾つか取り出し、私達に手渡す。そのままトレインの地べたに向けて観てみると、色んな建物や生物が線となって見え、ホームズに指定された通りに操作すると、地下に謎の大きな空間が広がっている。科学の力ってすごいんじゃな。
さらに解説は進み、トレインはあらゆる空間移動による重力などの耐久設定やテストが行われているので、多少の装甲なら余裕で突き破れるとのこと。どこまで事実か分からぬが、私としても気になる所。
「決めるのは蓮おねーちゃんだよ。帰ってもいい」
「行こう。なんとなくわしの勘がそう感じておる」
「じゃ決まりだね」
ホームズは箒に跨ってどこかへ。車内放送で大きな振動に備えるように指示され、私はシートベルトをつけて椅子に座り込む。隣にはナゾ子も来た。
ジェットコースターのように角度をつけ、大きな大きなお城の前から地面にめり込む……!
とてつもない揺れじゃ。意識が飛びそうなほど。
しばらくすると、突然の静けさがやってきた。あまりの静けさに一瞬だけ耳鳴りがして、私は窓辺に座っていたので外を覗き込む。すると、もう一つの大きな紫色の禍々しいお城が聳え立っていた。トレインは迷う事無くお城にも突撃。二度目の強烈な揺れの後、我々は頂上部分に入ったらしく、とてもとても大きな玉座と金色の物が我々のせいで散乱している。
そして、左右には大量の液晶画面と薬品の数々。
率先して穂村少年が刀片手にトレインの外に出る。色んなゴブリンやらデーモンを次々斬り倒し、そして玉座の前で立ち尽くしていた。
追って、私達も行く。
「あーあ。バレちゃったなあ。ここと、僕の事」
「お主は……翡翠少年!? なぜ」
「正直、あの時ポロッと龍化事件の事を言ってしまった時は怪しまれるかと思ったけど。君が鈍感で助かった」
「てめえええ!」
ナゾ子が躊躇なく光魔法で弾を作り、何発か発射する。しかし、手の甲で軽々しく払いのけられ、壁に衝突。小さな黒い土煙が起こる。
翡翠少年は両腕を左右に広げ、背後の玉座との間に大きな扉が現れる。あの時見た、空白の扉と非常に似ている。
「じゃあ、また現代日本で会おう。もう今頃、大量の魔物が日本を支配しようとしているはずだから」
吸い込まれるように空白の扉の奥へ低空浮遊していなくなってしまった。
「蓮おねーちゃん……帰るよ」
「うむ」
⭐︎⭐︎⭐︎
ライトニング・トレインは雷鳴駅で眠りにつく。
ホームズはナゾ子とトレインの整備をすると言って駅に残留し、穂村少年と私でひとまずテレポートを使い学園入り口前へ。上空は黒雲混じりの紫色の空で、騒々しく声を混ぜていたのは生徒達ではなく、魔物達だった。
「どうする? 蓮さん」
「翡翠少年を探すしかない。でも、どこにおるのか分からぬのう」
「だよね……いてっ」
穂村少年の頭に、可愛らしい熊のストラップが落ちてきた。これは?
「なんで人形なのに痛いんだよ。まあいいや」
「待て! 一応、わしが持っとく。いやその、欲しいとかじゃないぞ」
「はいはい」
ううむむむ。信じていないな。
私的には、なぜか持っといた方が良い気がした。少しラムちゃんの匂いが混ざっておるしの。
紫色の上空に何かの気配を感じて、さっき借りたホームズの望遠鏡で空を観ると、魔王と呼ばれていた男の、龍の姿があった。背中には、ラムちゃんが乗っている?




