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第二十一話『魔王だった者』

 場所は変わって現代日本。白雪しらゆき稲荷と呼ばれる、大きい稲荷に比べればかなり小ぢんまりとした、お狐をまつる場所でほこらの中には苔むした狐の銅像や、簡単に作られた有料のおみくじが幾つか並んでいる。

 熱せられた紫外線の刺す晴天の下、作業着のまま最龍侍さいりゅうじ学園に言われるがまま、ライゲキラムは文句をぶつぶつ呟きながら階段を登り、天使の羽のように伸びた稲妻型のピンク色の電気を小刻みに揺らしている。片手には勿体無いからと言われて、幼い少女のホームズから押し付けられた小さな熊のストラップが雑に握られている。


「何よこの中身硬いストラップ! 翡翠ひすいとかいう男の子も行方分からないし、一人で叛逆龍はんぎゃくりゅう退治だなんて! そんなに戦い得意じゃないし、みんなあっちの世界行っちゃうんだから」


 長々と言って発散した所で稲荷の祠が見えてくる。ラム的にはいつも通り大きな大きな龍を想像していたが、今回は自身と大体同じぐらいの身長、しかも頭は青い龍だがそれ以外は若い男性そのものの体格と肉付きをしている。どうやら頭を抱えて苦しんでいる。発せられる唸り声は龍であった。

 おぞましい光景にラムは目を見開き瞳孔を小さくする。反射的に学園に連絡しようと思ったが、思えば討伐する依頼を受けていたのは自分、自分で解決しなければならないのだ。

 天使の羽の電撃に静電気を走らせながら、臨戦体制に入る。それを龍の男は見るなり一閃の速度で襲いかかってきた。間一髪避けやや高い空中へ、作ったピンク色の小型の銃で電撃エネルギーの弾を3回発射。ジグザグの動きでこれも避けられ、大きな龍の口から赤い光が眩く発光され、長い線となって天高く発射された。どうにかこれも概ね避けたが、肩を軽く掠める。


「あぶな! 完全に当たってたらやばいじゃん!」


 着地しては、仕方なくフルアクセル・リングの新型プロトタイプを起動。今まで逆雪ぎゃくせつ れんが使っていた物と同じ機能がある事に加え、No.⑧の何かの代償を支払いリングの機能がアップする物を、代償無しにする予定の物だ。

 No①、②を起動。脚が速くなり筋力も上がる。相手から放たれる赤い弾や、戦ってる内に龍化していった両手の大きな爪によるひっかく攻撃も当たらない。

 そのまま電撃の攻撃を浴びせ痺れたのを狙い背後へ、手首足首を学園が作った頑丈な縄で縛り上げた。


「案外チョロかったね。さて、こいつを持って帰ろう。あと、学園に連絡っと」


 スマートフォンを取り出し、担当の者と会話を交わす。


「……でさー。うん、え? 警戒を続けろ? 大丈夫でしょ。うんうん、ん?」


 背後を振り返ると、完全に龍となった先ほどの男、ラムの周辺に大きな影を作っていた。勢いのまま払いのけられ、かなりの長距離飛ばされる。何駅か分離れているのに、気づけば最龍侍学園の屋上にいる。幸いにも誰も使用していなかったが、観客席部分に運悪く当たってしまい、強めの打撲となった。


「いったーい! だめじゃん! とにかく、戻らないと。でも体が動かない」


 ひとまずはこれで終わりかと思えば、追尾してきていたらしく、すぐに龍がグラウンドに土煙立てながら探している。見つかるのも時間の問題。

 必死に体を動かして座席の背後へ。見つからない事を祈るも、届かず頭上には龍の大きな爪がスロー再生の如くゆっくり向かってくるのが見えた。

 大きな手が龍の手首を掴み、グラウンドの方へ投げて地面へ叩きつけた。


「誰……?」


 見上げると、筋肉質の紫のオーラをまとった大男がいて、ラムをお姫様抱っこする。座席に丁寧に乗せては、軽い回復魔法を使った。


「かつて魔王だった者、とでも名乗っておこう」

「魔王って、ええ?」

「淑女が困っているのに見放すのは我が精神に反するのでな。もう心配する事は無い」


 物凄い爆風と共に、巨大化した龍に向かう。両手を合わせた押し合いが始まった。


「確か、ナゾ子ちゃんが魔王を討伐した事あったって言ってたけど、その人なのかな。とにかく助かった……」


 そのまま龍を宙返りさせ、背中に一発拳をお見舞い。地面に落ちる前に光の粒子となって消滅して行った。

 ラムの目にはその魔王がかなり綺麗に映っていた。よろめきながら立ち上がって魔王の元に歩み寄る。


「あの、ありがとうございます!」

「お礼は要らないよ。お家にお帰り」

「えっと、はい! また会いましょう!」

「良い子だ」


 ラムはフルアクセル・リングの飛翔機能を使い、いったん自宅へ。空を見上げる元魔王。


「この世界が混沌に包まれる日も近いのだろうか」

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