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第十五話『フルアクセルの夏』

 ひとまず最龍侍さいりゅうじ学園のある世界線に戻り、狸男を連れ日本に帰ってきた我々は、強い日照りが肌を刺す空の下、学園の屋上グラウンドで各自解散した。なお、狸男はこの世界に慣れていないので、茜音あかねさんや桐生院きりゅういん先生と共にどこかへ。

 ライゲキラムちゃんとホームズは、ライトニング・トレインに引きこもって何やらしている。

 私は魔女のロテアの提案で一緒に海水浴を行う事になった。スマホのアプリでナゾ子も誘っといてこの後、現地集合の流れに。

 ロテアとナゾ子は初対面らしく、やや悪い事もしたがまあ、なんとかなるじゃろう。


「狐さんは水着持ってるの?」

「持ってないのう」

「じゃ、買いに行こ! 近所に可愛いの置いてるお店あるんだ」

「うむ」


 手首を掴まれて引かれるがままついていくと、何やら外装がお洒落そうな店舗へ。お客さんもかなり多い。

 際どいものから体を大きく隠せる物まで、色とりどり様々で、私的には際どい物がちょっと気になった。


「へー! 狐さんってそういうとこあるんだね!」

「狸男にも言われたのう」

「ま、いいんじゃない? 可愛いし」


 いざ直で言われるとやや照れる。

 とにかくは、楽しくなってきたのでつい3着ほど買ってしまった。後に海辺のある方角の、学園の門までテレポートし、そこからロテアがほうきに跨り、私は狐の姿になって頭に飛び乗る。

 心地よい風を受け流しながら、下方向にある小さくなった民家と国道を眺めては、これもまた楽しい。


「海が見えてきたよー。降下するからしっかり掴まってて!」

「分かった。って、うわ!」


 掴んでいた前脚が帽子ごと滑り落ちる。この姿ではフルアクセル・リングも使えない! 咄嗟の事に頭が混乱して人間の姿にも戻れない!

 目を瞑っていると、誰かが受け止めてくれた感じがして、ゆっくりと開く。


「おいおい、大丈夫か? れん

「……ああ、ありがとう。ナゾ子」

「ごめーーーーん!! 狐さんごめん!」

「そういう事もある」


 正直まずいかと思っていたが、先に来ていて良かった。すぐにでも人間の姿に戻ろうかと思っていたものの、何故か抱きしめて手放してくれない。まあ、私は柔らかくて気持ちいいからな。うむ。

 そのまま成り行きで抱かれるがまま、海岸沿いにやってきた。多くの客やこの辺一帯を管理する多くのスタッフがいる。

 私としては初めての経験で困惑しているが、ロテアとナゾ子は普通にはしゃぎながら更衣室へ。狐の姿のまま私だけが取り残された。


「きゃー! 白い狐さんいるよ!!」

「ほんとだ! リボンつけてるぞ!」


 やれやれ。




 騒ぎのほとぼりが冷めた後、人気のない茂みで自分を人間の姿に変え、妖力ですぐさま購入した水着へと変身。

 すぐに表へ出て先ほどの二人と合流する。

 初めてなので分からないという旨を伝えると、まずはみんなでシートを敷いたり大きなビーチパラソルを立てようと言われた。私はビーチパラソルを立てている二人を横目に、予め用意されていたシートを広げ、荷物をまとめる。


「なんじゃ、これは。女の子同士が破廉恥な事してる漫画じゃのう」

「あーーーーーー!! だめだわたしの秘蔵の本!」


 すぐにナゾ子に取り上げられた。

 みんな色んな趣向があるんじゃな。関心関心。

 ん? なんでそんなものを海に持ってきているのか。そうじゃ! このココロロック・グローブを使って見破ってやろう。


『あー聞こえますか、れんさん。そこは、知らない方がいいですよ』

「は? 気になる」

『やれやれ。ともかく禁止です』

「わかった」


 白龍様に注意されてしまった。気になるのう。

 そうこうしてる内にパラソルの設置を終えたロテアは、一人で先に砂浜ではしゃいでいる。裸足で海水に入っては楽しんでいる。この世界は、海で遊ぶ事があるのが面白い。私も行ってみよう。

 近づくなり、いきなり水鉄砲で海水をかけられる。とても冷たい。お返しに水を蹴ってロテアにかける。

 水の掛け合いに夢中になっている所、気づけば周辺は騒々としていた。皆が指差す方を見ると、一人の人間で言う四歳ほどの男の子が、割と奥の方へ浮き輪抱えて流されている。


「人間が流されてるではないか。助けにいこうぞ」

「でも、もっと向こう見て」


 何かが向かってきている。あれは、叛逆龍はんぎゃくりゅう? 否、異なる妖気を感じるではないか。

 目を凝らして見ると、それは大きな大きな人間であった。


「ええい、わしだけでも助けにいく! お主は待機しておれ!」

「無茶だよー!!」


 急いでテントの方に戻り、フルアクセル・リングを取りに行く。そこにはナゾ子もいた。


「お前遅いぞ! はい、お前のリング!」

「助かる。これで、って勝手に宙に浮き出した?」


 リングは銀色の眩い光に包まれ、自分勝手に変形していく。まるで人間のような造形へ。


「……えええええ!! 使い勝手悪いと思ってたらこいつうう、意思持ってたのかよ!」

「使い勝手悪いの押し付けたな!」


 ふわりと砂煙を上げて舞い降りる……フルアクセル・リング? なんと呼べば良いのか謎だ。青い色をしていて、女の子にしては短め。


逆雪ぎゃくせつ れんさん。よくぞわたくしを選んでくださいました。何か命令があれば、申し付けください」

「うう、うむ。海辺にいる巨人の前にいる、幼い子と助けてくれないかのう」

「分かりました。No.①、⑥セット完了」


 ①は脚が速くなり、⑥は飛翔出来る物だ。海の境界線ギリギリまで走り、そこから物凄い速度で流された幼い子の方へ一直線。

 反応した巨人がうごめき、リングへ黄色い光線の攻撃を放っている、ような様子が伺える。

 華麗な飛翔捌きで何度も軌道をうねりながら、避けている。私は指示していないがついでにリングは巨人を蹴って突き飛ばしながら私達方向へ軌道を戻す。そのまま流された男の子を回収した。

 周囲からは物凄い歓声が上がる。

 男の子を砂浜へ下ろすと、すぐさまリングは私達の方で戻った。当時にロテアも合流した。


「何この子! めっちゃ機械って感じー!」

「はい。ナゾ子さんは嫌いですが、蓮さんは仲良くしてくれたので好きです。頑張りました」

「おう! よくやった。次は、わしがあの巨人を仕留める。リングの姿に戻れるか?」

「もちろんです」


 再び光に包まれたリングは、元の形状に戻り私の手首に巻きつく。

 向こうにいる巨人が、巨大な唸り声を轟かせた。

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