第十四話『ドラゴン騎士団、現る!』
「こんなに泣き笑ってる蓮ちゃん珍しい」
茜音さんが首を傾げながら、不思議そうにしていた。同じく狸男も不思議がっている。
狸男に久々に会えるのが嬉しいだけで、こんなにくすぐったい気分になって、とても心地よい。
「どうした? 毒茸でも食った?」
「違うわ! 相変わらずじゃのう」
「こほん。では、このグローブについて教えてくれるんですね」
「勿論だ。こいつすげーんだ」
自前のココロロック・グローブを外すと、描かれている狸の尻尾の紋章に軽く触れる。すると、先ほどみたいに薄くグローブが光る。
先程そうなったのもうっかり触れてしまったからかも、しれぬ。
「仕組みとかは分からないが、とにかくは便利だぜ。生憎、俺と狐の分しかないけどな」
「いーえー、しばらくお借りする事は出来ますか?」
「おう! ほれ」
やや薄汚れている気もするが、ここは気にしない方が良いじゃろう。うむ。
嬉しそうに茜音さんが会議室を出る。狸男と私の二人だけになって、妙に緊張感が走った。
「狐は、手紙だけ寄越して急にいなくなって、どうしたんだ? それからおかしくなったんだ」
「わしにもあまり分からぬ。白龍様の名で世界を移った」
「ほーう」
「そして、白龍様はそっちの世界で命を落としてしまった」
「……まあ、無理をしてるんだなとは思ってたぜ。俺は」
分かっていなかったのはわしだけなのか。ちょっと自分が嫌でモヤモヤ。いや、長所か? 何とも言えぬところ。
しんみりしてきたところで、いきなり電車内が大きく揺れる。急いでみんなが集まる二両目の広間へ。
⭐︎⭐︎⭐︎
桐生院先生は別途の指示配分の関係でいなく、いるのは私と狸男、ライゲキラムさんと、茜音さん。
ぷりぷり怒っている茜音さんが大きな窓ガラスを覗き込んで「また出たね! ドラゴン騎士団!」と、大きなお尻を突き出しながら軽く窓を何度も叩く。
「狐……そういうとこあったんだな……」
「だから勝手に人の心を、それよりドラゴン騎士団じゃと?」
「誤魔化したなー!! 俺もさっき追いかけられる前に、こいつらに捕獲されそうになった。危ない連中だ」
「うむ」
巨大な叛逆龍に追いかけられてたのと、関連性がありそうじゃ。
ついでに私も並んで窓から外の景色を見ると、怪しい飛行する円盤に乗った複数の男達三人、やや奥の方には尖った黒髪で赤い目のフード男が仁王立ちで指示を出しているように見える。
怒った茜音さんが更に怒った口調で姿勢を立った状態に戻す。
「あいつは、ドラゴン騎士団のヤンチャ坊主で有名な『コードネーム:R』で、よく我々に襲いかかってくるの。蓮ちゃん、一発懲らしめてやりな!」
「おう……?」
大きな扉が開いて強風が入り込む。私はフルアクセル・リングの飛翔機能、No.⑥をセット。
そのままライトニング・トレインから奴らの前まで飛ぶ。
「見た事ない女だなー!! 何でもいいや、お前ら行け!」
着くなりいきなり襲撃してくる。やはりヤンチャ。
軽く三人に爆破のお札を貼り付け、起爆し蹴散らす。見るなり何も考えてないであろう、Rは炎を纏い突進してきた。
軽く避けるものの、何度も突進してくる。迷いが無い。事情は分からぬが懲らしめても悪く無いじゃろうか。
いきなり銃口の無い大型の銃を出しては、私に先端を向ける。炎のエネルギーらしきものが集まり始めた。
「電車ごと吹っ飛んじまえー!!!」
「やれやれ」
今まではホームズが追い払っていたのじゃろう。そんな事を想像しながらも、今度はフルアクセル・リングのNo.②、力が強くなる物をセット。私は指先をRに向けて、妖力を溜める。
先制してきたのは相手で、光線にも見えるような勢いで炎が発射されたようだ。負けてられぬ。
「迅雷!」
そのまま炎と電撃の激突が始まり、エネルギーと妖力のぶつかり合いで辺りの空間は揺れ眩い。
「お前もやるな!! だが、今回は秘密アイテムがある! この"黒の結晶"を使えば!」
銃に小さな黒い宝石を取り付けると、炎の勢いが先程より激しくなった。まずいのじゃ。
ふと隣に、白龍様の気配を感じた。実際には見えないし、いないのじゃが。
何も言ってもいない。でも、何を言ってるかは感じる。
「何を笑っている? お前ら消し炭なるんだぞ!」
「何でもないのじゃ。そのままお返ししてやろう」
フルアクセル・リングの小さな画面のメニュー画面、No.ABSOLUTE ZEROの更に上部分に"ホワイト"が追加された。たった今。
迷いもなく私はそれをタップする!
迅雷を一度放つのを止め、そのまま激しい炎が来るのを待つ。
私の前に四角い縁に入った鏡が現れる。鏡は炎を吸収し、
「なんで? は?」
「言ったじゃろう。お返しをする、と」
そのまま跳ね返すように、炎はRに襲う。
妙に頑丈なやつじゃ。消滅するのではなく、そのまま空の彼方へと、飛んでいってしまった。
「すごいよ蓮ちゃん! 戻っておいでー!」
「今戻る」
手を振る茜音さんの元へ、ライトニング・トレインの方に入る。
「変なアイテム出してきた時はダメかと思ったけど、流石だね! ハイタッチ!」
お互い手を上げて交わす。
成り行きは分からぬが、妙な爽快感があった。
「狐、強くなったんだな。俺感動した!!!」
いきなり噴水のような号泣を始める狸男、いちいち大げさなこっちゃ。
そんな歓喜の雰囲気に包まれていた所を、水を差すようにもう一人、謎の円盤に乗った高身長の赤い龍のお面をした痩せ型の男が、悪態をついている。
「使えない子供だ。まあ、何かには使えるだろう。てめえら! あのお方の邪魔だけはすんじゃねえぞ」
指先を向け捨て台詞だけして、飛び去る。よく分からないが、まあ放っておこう。




