第十二話『駆け抜けろ! ライトニング・トレイン』
ガサゴソと未だに散らかった学園寮の自室を片付けていると、一枚の未開封の手紙を見つけた。宛先は私で、送り主は白龍と書いてあった。
「白龍様、色々あったけど自分は無事生きている。出来る事ならばそれを見せたかった」
そんな事を思いつつ、なぜ咄嗟に片付けているのかと言うと、説明をすれば少々長くなるのじゃ。
まずこの最龍侍学園は学校としての役割を果たしつつ、兼用で世界線や空間移動の研究を行っている。らしい。
そして、近頃起きている「龍化」の事件は様々な世界線で起きているらしく、例えば元いた私の世界でも狸が龍になった事件は、関連があるとされている。その世界線移動を行う乗り物こそ「ライトニング・トレイン」なのじゃ。主に三両の編成になっているが、空を飛ぶ事も出来て様々な環境に出来るよう、生活の用品やスペース、戦闘時に備えた多くの武器など充実している。
それで話を戻すと、叛逆龍調査チームはこれに乗り込み、調査していくというもの。
調査員は茜音さんがリーダーで、その他の一員に桐生院先生と、あの時、狸の叛逆龍事変の時にいた魔女のロテア。この者は知らぬが、ライゲキラムという機械に詳しい十八歳ほどの桃色の髪をした女性もいるそうなんじゃの。そして、私がチームに加わる事になる。
今回の場合は世界によって服装を合わせる必要もないらしいので、白龍様からよく着せてもらっていた、和風の普段の服装に着替えて荷物を持ち、アプリのテレポート機能でライトニング・トレインのある学園地下にある雷鳴駅へ。
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何かあった時に備えてライトニング・トレインと呼ばれる電車は沢山あり、私達一向が主に乗り込むのは「ライトニング・トレイン24(トゥエンティー フォー)」と説明を受けている。
予定時間より早い到着をしたが、既に桃色の髪をした作業着の女性が、これから乗り込みトレインを撮影したり、また目を輝かせながら整備士の人々と話していた。
「あーーー!! 見たら分かる! あなたが逆雪さんね! 私がライゲキラムです! よろしくね!」
「ど、どうも。なのじゃ」
ベラベラと電車の構造について語り始めたが、分からぬ! お喋りなこっちゃ。
半目で眠りかけながら腕を組んでいると、満足したのかライゲキ殿は電車の中へ。入れ替わりで桐生院先生が来た。
「どうだ。お前も内装見るか?」
「ノリで何とかなるじゃろう。それよりも、これからの予定をお尋ね申し上げる」
「茜音の申し出で、まずはお前の元にいた世界を見せる。今でこそ我々のいる世界線は平和だが、半数は混沌と化している。お前のいた世界も、な」
「狸男は無事なのか?」
「知り合いじゃないからな。自分で確かめるといい」
「うむ……」
心配が頭の中で走馬灯のように回るが、実際確かめる以外ないじゃろう。
ふと気になったので、勝手にトレインに乗り込む。私へ用意された部屋は1996号室で、乱雑に荷物を置いてゆっくりする。ふと人間の気配がして振り向くと、魔女の格好をした幼い金髪の子が覗き込んでいた。人間の年齢で言えば九歳ほどだろうか。
「お姉さん、誰」
「わし? 幼い子に説教するのも癪じゃが、君から名乗った方が良いぞ。自分は逆雪 蓮と申す」
「ホームズ」
ん? この世界にある小説で見かけた事なる名前じゃ。何だったかのう。
「僕はラムの友達。元の世界を探すために、ここにいる」
「なるほど。大変じゃな」
あまり好みではない。幼さがありつつ、妙に達観している感じ。
微妙な空気感が流れているところで、案内の放送が流れる。
『はいはいはーい! みんな2両目の広間へ集合ねー! ホームズちゃんも!』
どう聴いても茜音さんの口調と声だ。とりあえず向かうとしよう。
「お姉さん」
「何じゃ」
「手繋ぐ」
「……へ?」
想像以上に懐かれている。ちょっと心臓の鼓動が速くなった気分じゃった。
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「点呼とりまーす。私、茜音! 桐生院の野郎! ラムちゃん、ホームズちゃん! ロテアっち! 蓮ちゃん! 全員いるね」
明らかに女の子多いのは、もしかして茜音さんの趣味なのか。
「えー、この世界はー、〜〜番世界の座標⚪︎⚪︎、うーん分からない! とりあえず童話世界と呼ぶけど、そこの調査をします。叛逆龍事変が再び起きたようなので、討伐は蓮ちゃんとホームズちゃんにお願いするね」
この幼女、意外とやりおるようだ。見た目で判断してはいけない。
「承知した」
「うん」
「それではみんな好きな座席座ってね! レッツゴー!」
急いで座る。隣にはホームズと、挟んでライゲキ殿も座る。
物凄い揺れが起き、しばらくして景色が動いたのでトレインが走り出したのじゃろう。そして、ふわっとした感覚、これは宙に浮いている?
いきなり景色が変わり、銀河の中を駆け巡っているような、綺麗な星空が窓の外に広がる。
「もうしばらくお待ちくださーい! これが世界と世界の狭間と呼ばれる空間! よく見といてね」
綺麗じゃ。
宇宙というものに、よく似ておる。
そして、元のいた世界へと入る。そこには懐かしい景色が広がって……いなかった。




