真・第八話『A WHITE is FOREVER to.』
サブタイトルの読み方「ア ホワイト イズ フォーエバー トゥー」
本日は優しい白雪の降る、異常気象真っ只中の日本じゃった。この国の全域らしい。私の住んでいる最龍侍学園の寮の自室から見える外も、わんさかと雪が落ちている。
突然の肌寒さに白龍様から貰っていた厚着を沢山羽織って凌いでいる。エアコンとやらも使っているが、中々便利である。
ナゾ子に勧められた、ゲーム機を使って遊んでいるが、中々楽しい。RPGでも古くからある人気作らしく、勉学の合間にやっているが、中々楽しいのじゃ。
主人公は綺麗な顔立ちをしたかっこいい男の子で、剣を振り回して攻撃したり、魔法を使って色んな術を使えるという、私みたいな感じ。
何でも最新技術? を使った3Dが「すげー!」って申しておったな。なんの言葉か理解できず適当に聞き流してしまった。これが科学の力ってものか。
主人公もレベルがそこそこ上がり、最初の男が仲間になったり、ヒロインと出会ったり……。
外の天候の影響で私の部屋は薄暗いが、おかげで寂しさを紛らわす事が出来た。
そういえば雪でふと思い出したが、最近は白龍様と話していない。忙しいのか、気まぐれで別の事をしているか。普段話しているお方と話さなくなると寂しい。向こうの世界にいるであろう、炎ちゃんや狸男も元気かのう。
……いかんいかん! 元の世界の連中に想いを馳せては帰りたくなる。白龍様には極力、我儘は言いとうない。頑張ろう。
時間はえっと、十六時四十四分か。不吉じゃの。数時間やった、ゲームの疲れで瞼が重い。そろそろ記録を書いて電源を落として、仮眠を取るとしよう。
ん。白龍様が夢に出てきた気がするが、ただの夢じゃったな。珍しい事もあるものだ。時間は、十七時四十四分。またしてもか。はあ、日本の休日はこんなに誘惑が多いとは、恐れ入った。
もしや、白龍様の身に何かが? こんな事起きる筈が無い! えっと、でもどうやって会いに行こう。私から連絡を取る事が出来ない。
こんな時にスマホから着信音が! 忙しいのに。相手は茜音さんか。出てやるか。
「もしもーし! 茜音ですさっき電話出なかったから心配したよー!」
「うむ。寝ておっての。用事あるんかの?」
「住所を連絡アプリに書いておくんで、至急来てください。そこで次の事をお教えします」
「でもわしには用事が」
「……来ればそれが済むと思います。いいですね」
「は、はい」
何じゃろう。
⭐︎⭐︎⭐︎
交通手段を使うにもまだ不慣れで、仕方なく狐の姿になって走って向かう。書かれていた場所は「〜〜総合病院」で、〜〜市〜〜街、写真で建物の見た目まであった。雪が降っているのを見る辺り、今日現地で撮影したと思われる。
道中、動物好きそうな二人組の男女に捕獲されそうになったが、それも掻い潜り、人目の無い場所で人間の姿に戻る。恐る恐る自動の扉を潜ると、焦った表情で茜音さんが腕を上げてこちらに手を振る。すぐに駆け寄ると、両手を掴んでまたしても振り回してきた。
「拗ねて来ないかと思いましたよ! 良かったー!」
「何というか、野生の勘じゃ」
「流石です! 見てからだと受け入れられないかもしれないので、ここでお伝えしますね」
「うむ」
珍しく赤いふちの眼鏡を外して、私の前で何個か組み合わせて長くなっている椅子の真ん中付近に座って、俯く。前髪で目元が見えない。
「白龍様、危篤状態で、今日が限界です」
「……は? 悪い冗談を言うでない。そもそも、何故お主が知っているのじゃ」
「自分も白龍様に育てられた身ですからね。事実上の義妹です。貴方が小さい狐の頃から、知ってるよ」
「そこまで!? 紛れもない。ううむむむ。信じ難いのが信じ難いが、白龍様の最期なぞ見たくない!!!」
帰る!!
でも、茜音が手首を握ってきて離してくれない。いやじゃ!
手を離してくれない。この怪力が!
「落ち着いて、貴方が来ないと貴方も白龍様もずっと後悔するから。ね?」
「いやだかえる……うう。かくなる上は!」
『フルアクセル・リングヲ起動シマシタ』
「ダメよ! 病院壊れる!」
流石に色んな事を配慮した上か、手を放す。何が何でも見たくない! リングが一度空中で分解、再度私の手首に巻き付く。No.①、脚が速くなる機能を発動しかけて、ふと今日見た夢の事を思い出した。何か喋っているが、聞き取れなかった夢だ。夢の筈なのに、言ってた事が今少し分かった。
「…るのです」
もしかして、本当に訴えかけてきていたのか。その少ない力で、わざわざ私に。
「蓮? 来て、くれる?」
「いく」
「はあ、良かった。本当に良かった」
腕を掴まれたまま案内され、エレベーターに乗る。〜〜階の〜〜〜号室。流石に白龍様とは書いておらず、恐らくこの世界で活動していた偽名。敢えて注視はしないが、白雪という名字だけ目に入った。
寝床に横たわっていたのは、この間見た白龍様とは違い、全身がシワだらけで目の輝きもほぼ無い。その輝きが薄い事が、龍の命が果てようとしているのを示している証拠。
「蓮、お主の事、だから、見に来ないと、思って、おった……」
「うん。わしの事、何でもお見通しじゃな! 流石、えっと、えっと」
茜音さんに耳元で「お母さんって呼びなよ」と囁かれる。一度も言った事は無いが、湧き出てくる思い出を考えれば、確かにお母さん。
「お、お、お母さん。頑張って、見に来たよ。頑張った」
「よい。さいごに、頭を撫でさせて、おくれ」
私は狐の姿に戻って、白龍の顔の横に飛び移る。かなり温度が低い。まるで水か氷が触ってきてるかのよう。
或いは、今降っている雪だろうか。
きっと、自分達に最期を知らせるべく、日本各地を大雪にしたんだなと、思った。
病室の窓から大きな一本の桜の木が見える。雪と共に桜の花びらが、やがて全て散っていった。
寂しいですね。
サブタイトルの意訳『一つの白は永遠に。』




