私という人
本編は私の処女作になります。27歳金が欲しい干物ニートな女と29歳恋愛したいIT社長とのキュンキュンできるようなラブストーリーを描いています。ぜひ愛より金でしょを見てたくさんときめいちゃってください!
「あんた何時だと思ってるの!?いい加減起きなさい!」
「もう少しだけ...zzz」
これがいつもの母とのやりとり。
「はぁー、ほんとにだらしない子ね。誰に似たの」
時計は昼の12時を指す。
「今日もやることないなぁ」
布団から出てリビングに向かい、朝ご飯を食べる。
「いや朝から寿司ってヘビーすぎない?」
朝ご飯が寿司って貴族かよw
「あんた何言ってるの?もうお昼ご飯の時間よ」
「的確なつっこみありがとうママ。」
文句を言っても食卓には寿司しかないので仕方なく口に運ぶ。
「あらやだ。朝からお寿司もなかなかいけるわねぇ」
寝起きの体でも、味覚は寿司の旨さをダイレクトに伝えてくる。流石に朝からのナマモノは、胃が喜んでない気もするけど。
「馬鹿なこと言ってないで早く食べちゃいなさい」
さすがに対応が冷たすぎる。日本は氷河期に突入するの?
「しずねぇ生きてて楽しいの?」
話を聞いていたのか、階段から降りてきてすぐさまこの毒舌極まりない発言をしてくる弟の魁斗。高校3年になった弟にここまで言われるのは正直いい思いはしない。
「今日はかいも遅い起床ね」
母がそういうと、椅子に座り昼食を食べ始めた魁斗が言う。
「いい大学に行きたいから空いた時間を使って勉強してたー。しずねぇみたいになりたくはないからね」
引き合いに出されると少し腹が立つ。
「失礼な!私はこれでも一生懸命夢に向かって生きてるのよ」
実際に夢があるわけではない。多少の抵抗を試みただけである。
「その歳で夢を語るの恥ずかしくないの?」
相変わらずの毒舌をかます弟。
「そうよ。あんたもう28にもなるのに無職で彼氏の一人も
いない、あんたほんと誰なのよ」
その言葉に拍車をかけるように母が追撃する。
「ぎりぎり27歳ですぅ。てかそんなに言わなくても良くない?」
何なのこの言われよう。
家族での私の扱いは、今では虫以下の存在になっている。
こんな自堕落な生活を送ることなったのには理由がある。
私は静音。甲斐家の長女として生まれた。家族構成を説明すると母のつぐみ、父と弟の魁斗の四人家族だ。
父は海外出張中で、後二年は帰ってこない。
私の中では金だけ稼いでくる人という認識なので、この物語には必要のない人であるため抹消しておこう。
「大好きだよパパ。いつもお金ありがとう」
「いや俺の家族の立ち位置雑すぎない?!」
どこかで父が叫んでるような気がした。
そんな話は置いといて、私は策大というそれなりにいい大学を出て、某有名企業の事務職員として働き始めた。
自分で言うのもなんだけど顔は中の上だと思う。
ヒールをカツカツ鳴らせながら歩く姿は周りの男共を魅了していたはず。
私かっこいいでしょ。
新卒で就職した私は新入社員の歓迎会に参加し、1人の男性と意気投合してすぐにお付き合いすることになった。
同じ配属で4つ上の先輩にあたる人だ。
彼のスペックは180センチ細身、韓国のアイドルグループ顔負けのビジュアルで、性格も良し。
つまりはイケメンだった。
それから約1年が経ち、仕事もこなせるようになった。
イケメンの彼氏とも順調で、私の人生はとてつもない
ハッピーエンドを迎えるのでは?
と思い上がっていたのだが、現実と妄想では、天と地の差があることをまだ理解していなかった。
調子良く人生が進んでいた矢先、イケメンの浮気が発覚した。しかも、私が担当して教育していた新入社員の雌だった。
イケメンと雌が、夜の町に消えていく姿を目撃した先輩が教えてくれた。
イケメンにあまりいい噂が無いのは、付き合って1ヶ月くらいの時からぽつぽつ聞いていた。仕事はできるけど女にだらしないらしい。更には、若い新入社員ばかり狙う面食いとも言われていた。
最初は周りの僻みだと思っていたので対して気にしてはいなかったけど、実際に自分がその被害者になると正直きつい。
あんなに優しくしてくれたのに、私との関係は所詮遊びだったらしい。
よく考えたらおかしいところもあったのかもしれない。
イケメンで優しいのに彼女いなかったんだもん。
1年という短い期間でも、付き合ってから浮気に至るまでの良い思い出が蘇ってくる。
気が付くと頬に涙がつたっており、どうしようもない感情に包まれていた。
浮気が発覚して間も無く私から別れを告げ、無事破局した。
それからは仕事に身も入らなくなり、2年は仕事をしたが、モチベーションが完全に消し飛び退職してしまった。
それでも退職日当日に急に悔しい思いが芽生えて、イケメンに
「てめぇの人生くさっちまえ!」
と平手打ちして逃げるように会社を飛び出した。
周りの人を見る余裕はなかったが、きょとんとしていたに違いない。
「ざまあみろ!」
思えばあんなやつ、ただのブサメンだった。
今も思い出すたびムカついてくる。
きっと私の心に余裕があれば、別れても気にせず仕事を続けていたのだろう。
社会人二年目で新入社員の教育を半日して、それが終わった後に私の仕事を始めて残業続き。
おまけに期日の短い資料が溜まってしまい、荒んだ心に浮気というとどめの一撃。浮気相手は教育していた新入社員。
精神がもたなかった。
それからは現在進行形で、干物ニートなスローライフを
送っているわけである。
「あの頃はピュアだったなぁ。」
時間が経つのはあっという間で、もう2年もこのだらだらした生活が続いている。
いい加減何かしなきゃなと思い、新しい就職先をネットで探すも応募のボタンを押すページでやめてしまう。
またでいいや。
だらけすぎた結果、応募のボタンひとつ押せないろくでもない廃人になってしまったのだ。
「ごちそうさま。食べたら眠くなったから仮眠してくるね。」
ご飯を食べたら眠くなったので、リビングを後にし自室へ向かおうとする。
「暇なら買い物行ってきて欲しいんだけど」
母は夕食の足しになるような惣菜を、私に買いに行かせようしてくる。
「やだ。眠たいんだもん」
もちろんそんなところに労力を使いたくないので一蹴する。
「はぁー。しずねぇ、食べたあとすぐ寝ると牛になるとは言わないよ。あんたもう牛だよ。」
「はん?失礼な!牛みたいな私を好きになってくれる男だっているはずなんですぅ。」
抵抗はしつつも事実に近い状態になっているのであまり強く言えない自分がいた。
「あ、やばい!もうこんな時間だ!母さん行ってきます!」
魁斗は昼食を半分ほど残し、慌てて家を出て行った。
「ママ、魁斗めちゃくちゃ焦って出ていったけど今日何かあるの?」
疑問をそのまま母に尋ねる。
「今日は彼女とデートなんですって。若いっていいわぁ。」
デートの一言で、眠気が一気に吹き飛んだ。弟に彼女が出来るなんて微塵も思わなかったので驚きが隠せない。
「え?普段毒舌しか吐かない弟に彼女なんてできるの?」
頭が疑問で埋め尽くされる。
「毒舌吐かれてるのはしずだけよ。あんた以外の人には優しいし、友達思いで人当たりだっていいんだから」
弟に毒舌攻めされるようになったのは、仕事をやめニートになってから半年くらい経った頃かもしれない。
私が仕事をしていた時は、いつも楽しそうに学校での出来事を話してくれた気がするし、中学生のくせしてブサメンと別れた時も慰めてくれたり、優しい言葉をかけてくれていた。
「っち!ませたガキめ!全然羨ましくないですよーだ」
捨て台詞を吐いてリビングを後にし、自室に戻りベットにダイブすると、ごろごろしながら携帯をいじり始める。
タイミングよく一通のメッセージが届いた。
美保という高校時代の親友からである。いつも二人で行動していたため周りからはみほしずカップルという訳の分からない愛称で親しまれていた。それほど仲良く見えていたらしい。
私が仕事をやめてからも良く連絡をくれたり、数ヶ月に1度の頻度で遊びに行ったりもしていた。
「なんだろう。」
メッセージの内容はこうだ。
(今度合コンがあるんだけどしずも一緒に行かない?相手はまさかのIT企業の若社長と、化粧品会社のCEO、ホテルを何店舗も経営しているオーナーだよ!このメンツやばくない?しずももうそろそろいい男捕まえた方がいいんじゃない?来る意思あったら連絡ちょうだい!)
「まじ?」
衝撃すぎてつい言葉が漏れ出してしまった。
美穂顔広すぎ...
美穂は顔立ちも良く愛嬌もあり、いい会社に就職してそれなりに接待とかもこなしていたらしいので、この豪華メンツの合コンを開けたのだろう。
「これは行くしかねぇ!」
さすがにニート生活を2年も続けているため、貯金も底を尽いて親の脛をかじりまくっていたのでまさに好機到来!
今の私はブサメンのせいで恋愛感情が荒んでしまい、この歳でお金も全く持っていないため、男は愛より金という気持ちになっていたので尚の事文句なし。
二つ返事で即了承した。
この合コンで人生が180度変わるとも知らずに。