2話 入学式
俺は朝起きはするものの、眠気がどっと体に流れる
クソがよぉ
「若」
そう呼ばれ振り向くとそこにはシズカがいておそらく俺のであろう荷物とシズカのであろう荷物を持っていた
さすがシズカ
準備万端だな
「そうだったな。」
シズカは、俺がクソ親父に頼み込んで側近にしてもらった
だから、シズカは歳が違かったから俺に合わせて2年も入学を遅らせたんだった
「兄ちゃ、セツナおるすばんがんばる」
「いい子だな」
俺は頭を撫でようと手を出すとセツナはその手にチュッとキスをした
「いってらっしゃい」
「ああ」
そう言ってセツナは、駆け足でエレベーターの方へ向かう
「どうぞ」
俺はシズカから荷物と制服を受け取る。
俺は、トイレで制服に速攻で着替え、第3塔の外に出る
以前、兵士で埋まっていた庭は誰もいなく、ひどく心地よかった
あの従業員達。
もしかしたら、俺が殺してしまった人の中に含まれてるのかな
俺は、溜息をつき自分の愚かさを呪う
感情に身を任せてはいけない
そう強く感じる
俺は人を殺した
大勢を復讐に身を任せて殺した
これは、ちゃんと天のくれたチャンスなのか?
俺はそう思い、オーディンを思い出す
・・・・ないな
俺に興味なさそうだったし
俺は、うじうじするのやめて、家の門から出ようとすると、シズカに袖を引っ張られる
俺にその行動で困惑と胸の高鳴りが生まれる
「ど、どうした?」
「そちらではありません。学校には転移門から行くことになっています」
・・・・・転移門ってなんだ?
あれ、これ本当に戻ってる?
「・・・そうか」
俺は、思考を止める
歩く方向を変えシズカの隣に並び歩いた
シズカは減速するが、それを見て俺も足並みを揃えようと減速する
段々段々、減速していき
そして、終いには立ち止まってしまった
「どうした?」
「どうしたもこうしたもありません。歩いてください」
「歩いていたが?」
そう反論すると、無駄だと悟ったシズカは歩く
俺もそれに合わせて歩くと、シズカは立ち止まり溜息をつく
「足並み合わせなくていいです」
「なぜ?」
「私の主人だからです」
「そうだが、一緒に歩いちゃいけない理由にはならないだろう」
シズカは、無視して早歩きで進む
俺は、どんどん遠ざかるシズカを見て溜息をついた
「足並みなんて、自然に合わせてたんだがな。」
最初の印象が悪すぎたか
俺はシズカに遅れて転移門を見ると
そこは学校につながっていた
すげっという声を我慢しながら転移門を潜る
確か、俺の記憶が正しかったら校門に入った瞬間に部活の勧誘を猛烈に受けるんだったよな
「遅いです。意地くらい張ったらどうですか?」
シズカがそう言い、半歩後ろから歩いてくる
こいつ、側近のくせにめちゃくちゃ毒吐いてくるんだよなぁ
「お前が頑固すぎるだけだよ」
俺は校門の目の前を横切り、進む
「どこに行くつもりですか?」
「裏門」
「入学式の日に裏門から入る人、普通います?」
確かにと思いながら、学校沿いを歩く
普通は、校門から期待を胸に入るのが鉄板だ
しかし、
「ほら、裏門でよかっただろ?」
「・・・」
俺らが、裏門から入ると校門で部活勧誘の生徒を大勢見つけた
あそこから入っていたらどれだけ面倒なことになっていたかと思うと
同時にここが一応、過去であることを確信させられる
「なんで・・・、わかったんですか?」
「ん?勘。そんなことより行くぞ」
「はい」
遅刻気味の俺らは、小走りで体育館へと向かう
そこには担任となるかもしれない教師が9人並んでいて、俺が入ると同時に頭を下げてくる
「「「「「「「「「マサト様。お待ちしておりました」」」」」」」」」
俺は、手で挨拶してクラス分けの紙をもらう
どのクラスかはもうわかっているが一応、一組の紙に俺の名前があることを確認する。
シズカも確か同じクラスだったよな
「あんなに歓迎しなくてもいいのにな」
「若は、御三家の御子息ですから」
「・・・・そうだな。行くぞ」
俺らは、体育館の中に入ると記憶どおり外から見た体育館の敷居より広い空間が広がっていた
組ごとに分かれて並べられた椅子に座る
「隣じゃないのか?護衛も兼ねてるのに?」
シズカが違う席に座ろうとしたのでそう煽る
「・・・そうですね」
「嫌なら別にいいぞ?」
「別に嫌ではありません」
シズカは、俺の隣に座った
こりゃ、相当嫌われたなと思い苦笑する
シズカが下手に他の人と仲良くなれば何かに巻き込まれる可能性がある
周りの男達がシズカを狙っているのがすぐにわかる
近づけるのは得策ではない
俺は、周りの男達に睨みを効かせシズカから距離を取らせる
すると、舌打ち、妬み、悪口
散々裏で言われたがそれを全て無視する
「これから、卒・・・入学式を始めます。式辞、校長先生からのお話です。」
あの人今、卒業式って言いかけたな・・・
「はい、どうも、校長です。皆さん、まずは入学おめでとう。卒業はまだ早いぞ?」
と校長がマイクを持って出てきた
小柄だができる女って感じのオーラをしている
「今年は豊作と聞いている。御三家のお子さんもいるようで、有能な者たちがこの高校に入学してくれたことを嬉しく思う」
校長がそう言った瞬間、極度の睡魔に襲われる
俺は、寝まいと体を痛みつける
戦場でこの手の能力を持つ化け物がいた
というより、こういう睡魔はタイムリープする直前にも受けた
左腕を撃ちつけるという荒技を使って目を覚ましたが
今回はそれができないため、それに対抗するためのツボを押す
しかし、変わらず睡魔は襲いかかる
あの人の話は催眠術か?
効果絶大すぎるだろ
そして、
「くっそ・・・」
俺は眠りに落ちた
俺の目が覚めると、周りを見渡すと他の生徒は隣に座るシズカ以外誰もいない
「お目覚めですか?」
寝起きの上精神的にも疲労していたから爆睡してしまったようだ
「あぁ、寝ちまってたみたいだな」
「はい。ぐっすりと」
「起こしてもよかったんだぜ?」
「幸せそうな顔をしていらしていたので憚れました」
いらない気遣いありがとう
そう思っていたら、前からコツコツと歩いてくる音がする
俺は恐る恐る顔をあげるとそこには校長がいた
ひぃぃと叫びそうな声を押される
「入学式は終わったよ。で、なんでお前は寝ていたんだ?」
「抗えない睡魔で?」
「おら!!」
校長から勢いのよいパンチが繰り出される
俺は、その拳を目で追いながら頭の力を抜いてバレないように受け流す
「痛いーーー!!」
別に痛くはないが演技でこの場を乗り過ごそうと俺は床に転げ回る
それを見て校長は違和感を覚えたのか手をグーパーしている
受け流したのがバレたか?
そんなことを思っていたら、小太りのおじさんが走ってくる
「あぁ、校長。だめですよ。この子は御三家の・・・」
「御三家だから、入学式で爆睡していいのか?」
「いえ、そうではありませんが」
「ならよいではないか?」
「問題になるってことですよ」
「だからなんだ!!」
「あぁ、もう!!」
俺は、校長とおじさんが話してる間に気配を消し隣にいたシズカの手を取り逃げた
「後で怒られても知りませんよ」
「いいんだよ。それにしても、あんな思いっきり体罰受けたの久しぶりだよ」
校長は、昔から知っている
親友の姉だ
だから、昔から知っているし親友と一緒に殴られたりもしている
ちなみにその親友も御三家の一人だ
家付き合いで仲良くなったともいう
俺の友達はそいつ以外いないけどな
だから、立場的にも対等ではあるため殴られても然程問題にはならない
というより、そんなことでは動かない
それを承知で殴ってきたのだ
タチが悪い
「それに、今は調べたいものがあるからな」
タイムリープ者とはいえ、全てを覚えているわけではないしな
それに、前には存在していなかった転移門という綻びが生じている
これについてもよく調べておきたい
「調べてきましょうか?それも仕事のうちなので」
シズカにそう提案されて、少し悩む
普通なら喜んで調べてきてもらうのだが、シズカに不審がられる可能性がある
それにそれで未来に綻びが生じたらと考えるとゾッとする
しかし、自分で調べるとしてもシズカがついてくるんだよなぁ
あぁ、じゃあこうしよう
「お願いしてもいいか?」
「はい」
「じゃあ、俺らの時間割とその内容一年分を調べてきてくれ」
「わかりました」
シズカはそういい、廊下の奥へと消えていった
「じゃ、こっちはこっちで調べますか」
分断に成功した俺は、情報収集へと移った
全学年の名簿がまずはほしいな。
綻びがなんのことかわからない以上、可能性は潰していきたい
前回はこんなやついなかったとか
一学年ならクラス分けの表でわかるんだけど、他の学年はどうやって手に入れるか
生徒の名前一人一人なんて覚えてはいないが、運が良ければ、綻びとやらが見つかるかもしれない
その綻びが、ラッキーなものとは限らないが
俺が腕を組み悩んでいると背中を叩かれる
振り向くと何度も見た親友の顔があった
「よっ!」
「ケンタロウか。」
噂をすればなんとやら
脳内でだけど
「マサ、お前、入学式の時爆睡してただろ」
バレてら
「退屈だったんでな」
「ああ、本当に退屈だった。で、マサは今何してんだ?入学式、終わったから帰っていいんだぞ?」
だから、あんなに人がいなかったのか
あの創造主ってやつ、もう少し早めに起こしてくれてもいいじゃねぇか
「学校散策でもしようと思ってな」
「奇遇。俺もしようと思ってたんだけど従者に止められてなぁ」
「シノブだったか?」
あぁ、従者自慢が始まる
身をもって厄介さは体験したよ
「そうそう。あいつ本当にすげぇんだぜ。切れ物だし、足速いし、クナイの扱い方じゃ誰にも負けねぇ、それにめちゃくちゃ可愛いからな」
ケンタロウがそういうと、通気口からガタンと何かがぶつかる音がして、ケンタロウはそれに苦笑する
「な?可愛いだろ?」
「ノーコメントで。」
おっちょこちょいだったなんだな、あいつ
見た事なかったからか、
当時の俺はなんか物音する程度にしか思ってなかったんだろう
「そういえば、シズカは?」
「頼み事してある」
「そっかー。久しぶりに会いたかったなぁー」
ケンタロウが、頭の後ろで手を組み苦笑する
「悪かったな。俺で」
「何言ってんだお前にも会えて嬉しいぜ。親友」
ケンタロウが俺の肩を組んでくる
「気持ち悪いから離せ」
「ひっでー。じゃ、俺らはそろそろ行くわ」
「おう」
そう言ってケンタロウも廊下の奥へと消えていった
あいつもあの時代で結構変わっちまっていたんだなと感じながら、ケンタロウが去った廊下の方を見ていると
タイミングを見計らってたようにシズカが、後ろのドアから現れる
「貰ってきました」
「は、早いな」
「こちらです」
座学 剣術 拳術 銃術 戦術 騎術 兵法 魔術
ん?魔術?
「魔術・・・」
「魔術に興味が?」
「あぁ」
魔術なんて前回はなかった
「魔術って何だ?」
「?魔術は、体内の魔力を炎やら水やらに変化させて攻撃する物ですよ。常識です」
本で見たことあるけど、本来は人間には存在しないものだ
タイムリープする前には、そんな物なかった
それに、何もないところから何かを生み出すことなんてできるのか?
いや、それができる奴がタイムリープ前の世界にはいた
魔獣という存在
どこからか現れた、人を殺す化け物
タイムリープ前では、数が増えすぎて人類は滅亡の危機に陥っていた
俺はシズカや仲間達とそれを狩る仕事をしていた
しかし、魔術は存在はしていても人間に扱えるものなどではなかったはずだ
ここはもしかして、似ているだけの別世界?
いや、それだったらオーディンはタイムリープなどという言葉は使わない
これは、ほかのタイムリーパーが選んだ特典?
手がかりが全くない
これ以上、何か考えても無駄か
俺は溜息をつき、帰ろうと門まで向かう
するとそこには校長が仁王立ちで立っていた
「私から逃げ出すなんていい度胸だな。マサト」
早く、転移門とやらに逃げなければ
・・・・いや転移門何処だよ
「な、何でここに?」
「ケンタロウに、まだ学校にいると聞いてな」
あの野郎
売りやがった
「シズカ、裏門から帰るぞ」
「・・・はぁ、了解です」
俺は全力でダッシュした
体が重い
思うようにうまく走れない
体鍛えなきゃな
そう思いながら転倒してしまう
そして
「手間が省けた」
校長は、俺に馬乗りになって俺の逃げ場を無くす
「校長、知ってるか?獣って上下関係を主張するために馬乗りになるだと」
「なるほど、貴様は私が獣だと言いたいんだな」
「はい」
俺がそう答えると校長の額にわかりやすく怒りマークが作られる
「それに、嫁入り前の女が馬乗りって、結婚できなくなる「ボコンッ」・・・ぞ」
俺の頭の数センチ右に穴が空いている
あ、これやばいやつだ
「このクソガキィーー」
校長の腰が怒りで少し浮く
いつもの、癖だ
俺はそれを見逃さずに、校長を勢いで退かせ立つ
そして、再び逃げる
「待て・・・待てーーっ」
怒ると何も考えなくなるくせは変わって・・・
すみません。それは反則だと思います
校長は、手で炎を作りそれを投げてくる
あれが魔術か
くそ、反則だろ
俺は死に物狂いで逃げた
「はぁはぁ、どこだここ。」
死に物狂いで走ってきたため、現在の場所がわからない。
死臭が漂い、酒、吐瀉物や血の匂い
道端で人が浮いていて、常にホコリや砂が舞っている
この薄汚い場所から察するにスラム街だろう
「おい」
??
目つきの悪い子供に話しかけられる
こいつは確か・・・・