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第四話 冒険者稼業

 俺は手に乗せられた銅貨三枚を見下ろしていた。

 銅貨一枚は露店で肉焼き一本を買えばなくなる。

 命と多大な労力をかけて得た報酬としては明らかに足りない。

 はした金だ。


「荷物持ちと修理しかしない上に、足手まといだったからこれくらいで十分だろ」


 リーダーや他の冒険者たちのバカにするような視線を受けた。

 ここは冒険者ギルド。

 周りには他の冒険者たちがいて、こちらを何事かとじろじろと見てくる。

 受付で報酬を受け取ってすぐの出来事だった。

 目の前の受付の女性は、無機質な笑顔のままこちらを見ている。

 ああ、もう俺がどういう立場なのかは理解している。

 何か言い返す気力も怒りさえわかない。

 そうなんだなと、そう思うだけだ。


 どうせもうこの街を去るのだ。

 魔術師も冒険者も辞め、田舎に帰り、周りの人間から負け犬呼ばわりされて生きていくのだ。

 俺は銅貨を袋に入れると、この場から立ち去ろうとした。

 もういい。どうでも。

 そう思った瞬間、別の職員が慌てた様子でカウンターに入ってきた。

 受付嬢に耳打ちをするとまた慌てて出ていく。


「冒険者のみなさま。緊急依頼です。早急に都市外縁部にある駐屯地へと向かってください」


 受付嬢が突然立ち上がって言った言葉に、冒険者全員が狼狽えた。

 緊急任務。基本的に冒険者は自由業であり、依頼を受けるか否かは本人たち次第だが、緊急招集をかけられる時もある。

 総じて、大規模な問題が発生した時に行われるものだ。

 だが、俺には関係ない。

 俺は受付嬢の言葉を無視してギルドを出ようとした。


「冒険者の資格を持つ方は全員強制です。参加しない場合は厳罰に処されます」


 受付嬢は俺に聞こえるように大声言い放った。

 結局、俺は周りに翻弄されて生きるしかないのか。

 俺は拳を力いっぱい握った。

 何に対しての怒りかは最早自分でもわからなかった。


「冒険者のみなさまは極力パーティを組んで依頼にあたってください。危険かつ重大な任務です。失敗は許されません」


 冒険者たちは思い思いにパーティを組み始めた。

 パーティを組んでいた奴らは俺に蔑視を向ける。


「役立たずと組む気はないな。一人でやれよ」

「金属魔術師は足手まといでしかないからな!」

「荷物持ちさえまともにできないクズだしよぉ!」


 さっきまでパーティを組んでいたというのに、薄情なものだ。

 いや、だからこその言葉か。

 奴らの言葉を聞き、他の冒険者の連中も俺に蔑んだ視線を向けてくる。

 俺は無視して受付へ行った。

 すると俺が何を言うでもなく受付嬢はこれみよがしにため息を漏らし、俺に聞こえるように言った。


「金属魔術師くずれの上、先ほどの一件。組む相手もいないでしょう。面倒ですね……仕方ありません。あなたには駐屯地へと赴き、肉体労働をしてもらいます」

「……それは冒険者の仕事なのか?」

「いいえ。通常は奴隷や派遣された一般労働者がする仕事です。しかしあなたに出来る仕事はそれくらいしかないので」


 冷笑と共に受けた内容に、俺の心は冷えていく。

 どうでもいい。もう。

 依頼書を受け取り、俺は単身冒険者ギルドを出た。

 自嘲気味に笑うと歩を進めた。

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