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第二話 魔術師協会からの追放


「グロウ、おまえは魔術師協会から追放だ」


 先生がつまらなそうに言った。

 授業が終わり、クズール先生に呼び出された矢先のことだった。


「ま、魔術師協会からって、ど、どうして!? クズール先生の弟子を破門されるということならわかります! でも協会からの追放って」

「五年も私の下で弟子をしていたのに結果を出せなかったんだ。当然だろ?」


 呆れたように言うクズール先生。

 俺は愕然とした。

 鍛錬にも授業にも参加させてくれなかったのに、結果も何もない。

 それに金属魔術に対して正しく評価する気もなかったことは、さっきの出来事で理解できた。

 つまり、最初から追放するつもりだったのだ。

 俺を飼い殺して、無駄に時間を重ねさせた後、結果が出なかったと協会に報告すれば、俺を協会から追放することができる。


「せ、先生は最初から、お、俺を育てる気なんてなかったんですか?」

「おいおい人聞きの悪いことを言うなよ。私はおまえに課題を出し続けただろう? 雑用っていう課題をな」

「そ、そんな! あれでどうやって魔術を学べって」

「それを自分で考えるのが弟子ってもんだろ?」

「そ、そんな無茶苦茶な! お、俺はずっと努力して結果を出そうとしてました!」

「出てないじゃないかぁ、グロウくん。結果。出てるか? んー? 出てないだろう? じゃあ、努力しても一緒だ。頑張ったから評価してってのは子供がやることだよぉ?」


 俺は理解した。

 すべては無駄だった。

 十三歳で弟子入りしてから五年間、必死で働いた。

 でも何の意味もなかったんだ。


「じゃあな、グロウくん。田舎で職人でもやるんだな。ああ、十八歳じゃもう弟子にしてくれる細工師も鍛冶師もいないかな? 安心したまえ、肉体労働なら引く手あまただから! そのまま貧乏な人生を歩んでいくといい! 残念だなぁ、未来をなくした若者を見送るのは、あーっはっはっは! ひぃ、ひっ、おもしろっ、ひひ!」


 悪意を隠しもせず嘲笑するクズール先生……いやクズール。

 足元が瓦解するような感覚と共に、ある感情が俺の腹の中でふつふつと沸き上がる。

 俺はずっと我慢してきた。

 バカにされても、いつかわかってもらえるって前向きにとらえた。

 努力もしていた。

 金属魔術は使えないということが常識になっているため研究が進んでおらず、また興味を持つ人も、金属魔術の素質がある人間も少ないため、自分で研究するしかなかった。

 だから必死で調べ、学び、試し、そして習得してきた。

 五歳の時からずっとずっと。

 十三年間、一人で。

 それがすべて無駄になった。

 それをすべてなかったことにされた。

 今まで誰にも怒りも不満もぶつけなかった。

 いつかわかってくれる、そう信じてたからだ。

 でも、それが意味をなさなかったとわかった瞬間、今まで隠していた負の感情が表に出始めた。

 理不尽への怒り。

 クズールはただ俺をおもちゃにしていただけだ。

 拳を握る力が強くなる。


 許さない。


 許すものか。


 こいつは、絶対に……。


 忘れない、今日のことを。

 やられたことを、クズの顔を。

 魔術師たちに拘束され、俺は部屋から連れていかれた。

 ここは魔術師協会支部の一施設である魔術師教育棟。

 五賢者の一人、火の賢者であるクズールが管理する場所だ。

 俺はそこから追い出され、大通りに蹴り飛ばされた。


「二度と来るなよ、ゴミ魔術師」

「金属魔術師が夢見れただけでもありがたく思えよ」


 俺よりも年下の魔術師たちに侮蔑され、少ない荷物を放り投げられた。

 ボロボロになった俺を、道行く人たちが何事かとじろじろと見てくる。

 俺はゆっくりと立ち上がり、埃を払うと荷物を抱えた。

 施設内の宿舎に泊まっていた俺は、協会を追放されたことで住まいを失った。

 宿舎といっても倉庫のような場所だった。

 弟子をしていた期間に給料なんてあるはずもなく、ほぼ金もない。

 田舎から出てきた時と同じ荷物のままだった。


「どうしてそこまで金属魔術をバカにされなくちゃいけない……!」


 理由はわかっている。

 でも納得はできない。

 勤勉に努力し続けたからこそ、余計にそう思った。

 俺は震える足を無理やりに動かして、協会支部から立ち去った。

 その日、俺は魔術師見習いでさえなくなった。

 

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