3話 謎の少年の正体
前回のあらすじ
ちょっとした事で家を飛び出してしまったリサ。彼女は公園に迷い込むと、そこで動物達と遊んでいる謎の少年と出会う。
「魔法使い?僕は魔法は使えないよ。でも貴方もってことは君は使えるのかな?」
彼は、本当に不思議そうな顔をした。しかし同時にどこか私を試すような目をしている。
恐らくは本当に魔法の事は知らないのだろう。となると自分の才能を超能力か何かと誤解している可能性が高い。
「ええ。使えますよ」
「へえ。じゃあ今ここで実演して見せてくれないかな?」
「良いですよ」
…今思ったけど、これもしただの一般人だった場合バラすリスク相当高いのでは?
仮に彼が普通に動物に異様に好かれているタイプの人間で、今までの会話もただの危ない人扱いされてただけだったら私は死を選ぶ。
でも、もう戻ることはできなない!
私は覚悟?を決め、彼にこう説明した。
「魔法にはいくつかの種類がありますが、今はその中でも恐らくあなたが使っているであろう固有魔法だけ説明、実演をします。固有魔法とは名前の通り魔法使い一人につき一つ専用で使用できる魔法のことです。」
私は一息つくと、こう言った。
「そして、これが私の固有魔法です」
私は近くにあったブランコに触れると、私の固有魔法「ロー・オブ・ネイチャー」を使用した。
すると、ブランコはあっという間に粉々に砕け散った。生き物達がびっくりして逃げて行く。
「えっ、ちょ、おい!ブランコ壊してどうするつもりだ!下手したら少年院行きだぞ!
「安心して下さい。直せますので」
私はブランコだった物に手をかざし、再び「ロー・オブ・ネイチャー」を使いブランコを元通りにした。
「こんな感じで私の固有魔法は物質の破壊と再生をすることができます」
「まったくびっくりさせるなよ!固有魔法かなんか知らないけど随分物騒な魔法使うな君」
「別に私が選んだ訳じゃないんでそんなこと言われても困ります。固有魔法は生まれつきなので」
「ふーん、なるほど。二つ質問良いかな?」
「答えられる範囲なら良いですよ」
「じゃ、お言葉に甘えて。じゃ、まず一つ目。君の固有魔法二つあるんじゃないの?さっきの説明だと固有魔法は魔法使い一人につき一人ってことだと思ったんだけど」
「はい。固有魔法は一人につき一つだけです。私の固有魔法は破壊と再生で一つになってるので問題ありません」
「何か納得いかないなぁ。ま、いっか。そんじゃ二つ目の質問。なんで破壊した時は直接手を触れてたのに、再生した時は手をかざすだけだったんだい?」
この人、中々痛い所突いてくるな…もしかして見かけによらず結構頭いいタイプ?
「それには私の固有魔法のデメリットが関係しています」
「デメリット?そんなものあるのかい?」
やはりこの人はあまり魔法については詳しくないようだ。
大いなる力には代償が伴う。この魔法の基本原理を知らないのがそれを物語っている。
「はい。私の魔法場合空気中に放つと勝手に魔法があちらこちらに拡散してとても危険です。更にこの魔法の対象は私ですら例外ではないので下手したら私ごと破壊されてしまいます。なので物体を破壊したい時は今みたいに直接触れるなどの工夫が必要です」
「なるほど、よく分かったよ」
「では、次はあなたの番です。あなたの事、教えて貰えませんか?」
「いいよ。僕の名前は牧田流生。今は中1だね。趣味はこうやって生き物の戯れること。これでいいかい?」
「いいわけないでしょ!確かにまだ自己紹介すませてなかったけど違うでしょ!それだけじゃなくてあなたの固有魔法の説明もしてよ!」
「あ、ようやく敬語やめてくれたね。僕敬語嫌いだし、困ってたんだ。そっちも多分そういうの苦手でしょ?」
「まあ、そうだけど…一応言って置くと私一歳年下だよ?」
「別に構わないよ。一つ位誤差さ。後やっぱり僕が魔法使えることはバレてるみたいだね」
「うん。あった時から既に確信してたわよ」
大嘘だ。今無事予想が当たった事にとても安心している。大体確率9割位で当たりだと思っていたけど、流石にリスキーすぎる賭けだったなぁ。
私は少し感情に流されやすい所があるから、気をつけないと。
それに、勝手に人に魔法を見せてしまったから、多分ユーノーに死ぬ程怒られるだろうし…。
あ、まずい考えただけで鳥肌立ってきた。後の事は考えないでおこ。
「へえ…まあいいや。それじゃ、分かってる範囲で説明させてもらうよ」
流生が疑いの眼差しでこちらを見ている。このままだと嘘がバレる。さっさと説明してもらおう。
「うん、それでいいから教えて!」
「僕の固有魔法だったけ?も君と同じで2つできることがあるよ。一つ目が動物との意思疎通。会話って言うよりかは手紙でのやり取りに近い感じかな。動物の言葉を直接理解してる訳じゃなくて生物共通の文字で意思疎通してる感覚に近いね」
駄目だ、何言ってるかよく分からない。前半は分かるが後半が理解できない。
「ごめん生物共通の文字って何?」
「いやー僕もよく分からないだよね。正直感覚でどうにかしてる感じだからさ」
「自分でも理解できてないパターンね。良くある話ではあるけど…本当に謎ね。」
「だよねー。で、話戻すと二つ目が動物と契約?ぽいことして五感共有とか身体能力向上させたり、動物を召喚できるって奴。契約って言っても仲良くしてたら大体契約できる感じかな。後デメリットは良く分かんない。生まれつき五感が鈍かったからそれかも。で、名前は特に決めてないけどソロモンの指輪が僕の力に似てる力持ってるしソロモンズ・リングとでも名付けとくか。安直すぎるかな?」
「何か説明が凄いふわふわしてるわね。もうちょい詳しく説明できない?」
「いやーさっきも言ったけど基本感覚で使ってるから分かんないんだよ。今まで誰も俺のこの才能について説明できる人いなかったし」
「なるほど、なら仕方ないわね。」
ここは変にごねてもきりがないだけね。
もう流生から聞き出せる事はなさそうかな。後は流生に家まで送ってもらいたいところだけど…上手くいくかな…?
「ところで、君の名前をまだ聞いてなかったね」
「そういえばそうだったわね。私の名前はリ…じゃなかった須藤理沙。最近引っ越して来たからまだ学校には通ってないわ」
「へえ、そうなんだ。あ、そうだ今度また魔法について教えてくれない?須藤さん」
「いいわよ。ところでなんでさん付けで呼ぶの?二回目だけど私年下だよ?」
「女子には年齢関係なく敬語つけないと死刑になるからね」
「へぇー、なんか変なの」
「ふふ、確かに変なんだよね。小学校の時までは普通に呼び捨てで呼んでるのにね。ま、理沙さんも中1になれば分かるよ。嫌になるほどさん付けで呼ばれるから」
「ふーん。ところでそろそろお昼だし帰らない?流生先輩家何処ですか?」
「いやまだ十時だよ?」
「え?」
私は時計を確認して驚いた。体感時間だともう3時間位話していた気分だった。まさかまだ10時だったとは。
「ま、そろそろ人も集まってくるだろうし帰るか…あ、そういえば」
「ん、何?」
「いや、一つ須藤さんに確認したいことがあってね」
続けて出た彼の言葉に、私は度肝を抜かれた。
「君のお兄さん、須藤能有さんだったりしない?」
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