2章 4話(22話) 犯人探し
「それは違うね」と言った人の正体は、流生先輩だった。
彼が近づいてくると、鳥達が一斉に彼の近くに集まる。その姿はどこか神秘的で、なんとも言えない美しさがあった。
「お兄ちゃん…?なんでここに…?」
「いや、鳥達が君等が変なことしてるって教えてくれてね。それで来たんだよ」
「えっ…それってストーカーでは…?」
私が思わずそう聞くと、彼は少し怒ったようにこう返した。
「別に自分から君等を鳥に監視させてた訳じゃないから違うよ。僕は例の事件の調査を動物達に頼んでいたんだ」
「あ、流生先輩も例の事件調べてたんですか」
「…彼女は僕の大切な友人だったからね。だから注意を無視でも犯人を見つけたいんだ。君等はなんでこの事件の調査をしてるんだい?」
私はそう聞かれたので、流生先輩に事情を話した。
「なるほど…結構他の人も調査してるんだね。田中さんは人気者だったから、皆犯人が憎いんだろうね」
彼はそう言いながら顔を上に向けて、ため息をつくと、続きを話し始めた。
「それで、多分犯人が魔法使いだから、下手に非魔法使いが見つけると命が危ない、てことだね」
「うん。だから一刻も早く犯人を特定したいの」
「ふーん。そういうことなら協力するよ。ただ君等も気をつけなよ。特に幽香は体が弱いから無理しないようにね」
「うん…分かった…」
そして流生先輩は近くの木に座ると、私達と情報交換をしようと提案した。
私達はもちろん承諾して、田中さんの幽霊から聞いた話を話した。
流生先輩は、彼女の遺体についてこっそり鳥や虫を使って調べたら、一つ、気になることがあると言ってきた。
「なんかね、遺体の首に変なマークがあるんだよね」
「変なマーク?」
私はそのマークが気になったので、彼に詳細を聞いてみた。
「うん。二人の人間がいて、片方の人がもう片方の人に向かって指差してるマーク。君ならなにか分かるんじゃないかい?」
「うーん…二人の人間のマークねぇ…。あ、濡れ衣魔法のマークかも」
私がそう言うと、彼は身を乗り出してきた。
「お、分かるんだ。じゃあ説明してもらってもいいかな?」
「いいよ。過去に同じ固有魔法の使い手がいたから覚えてるんだけど、簡単にいうと、自分にきたダメージをマークした相手に押し付けるって奴だね。もしそのマークがそれならかなり厄介なことになりそうだけど」
まあ、多分私なら破壊魔法で一発だけど。ダメージとか関係ないタイプの魔法だし。
「ふーん。となると、犯人は事件時自分の腹を刃物で刺したってわけだ。なら大体どっかで隠れてやる必要があった訳だし、事件時一人でいた奴が怪しいな」
「じゃあ私は…犯人じゃないの…?」
幽香ちゃんか確かめるように聞いてきた。
そういえば幽香ちゃんが田中さんを殺しちゃったか否かの話だったけ。
「うん。おそらくはね。だから僕は違うって言いに来たんだよ」
「良かったぁ…」
流生先輩にそう言われると、幽香ちゃんは緊張が解けたのか、笑顔になった。
そして最後に、流生先輩は「ま、ということで、なんかあったら教えてよ」と言って教室に戻って行った。
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