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2章 3話(21話) 憑依

そうして色々授業を聞いた後、私と幽香ちゃんはお昼ごはんを食べて、体育祭の裏にに来ていた。


「被害者の場所なら憑依の必要はないんだけど…封鎖されてるから…」


 幽香ちゃんはそう言うと、自らの身体に田中さんの幽霊を憑依させ始める。


「ここは…体育館裏?私…確か死んだはずじゃ…」

 田中さんは、ひどく動揺した様子で降臨した。


「突然呼び出してすみません、田中さん。私は須藤理沙と言います。早速で申し訳ないのですが、亡くなられた時の話をしていただけないでしょうか?」 


「急に話をしろって言われても…そもそもこの状況は何?あんた、私になにしたっていうの?」


 田中さんは少し眉を潜めてこちらを見てくる。


「…ごめんなさい。それは言えません。ただ、あなたを殺した犯人は、必ず見つけます。だから、協力してもらえないでしょうか?」


 私は頭を深々と下げながらお願いをする。


 正直自分でもめちゃくちゃ言ってるのは分かってる。でも、私は幽香ちゃんの力を無闇やたらに人に話したくない。


「…あんた、自分勝手だね。まあいいわ、死んだ私に拒否権ないし」


 田中さんは呆れた様子でそう答えると、事件について話し始めた。


「と言っても私から言えることはあんまりないの。ピアノの練習をしてたら、なんか突然身体にグサって衝撃が来た感じ。それでそのまま悲鳴を上げる暇もなく死んじゃってさ。それだけ」


え、それだけ…?


「な、なんか犯人の姿とか見てないんですか?後は凶器がなんだったとか」


「両方ともないわね。強いて言うなら凶器は無って言ったところかしら。私の体になんも刺さってなかったし」


「…ありがとうございます。それだけで十分です。いきなり呼んでしまって申し訳ありません。ゆっくり眠っていてください」


 私がそう言うと、田中さんはただ「ふん!」とだけ言ってあの世へ帰っていった。

 そして、幽香ちゃんの意識が再び戻り、彼女はゆっくりと目を開けた。


「どうだったの…?」


「…犯人特定までには至らなかったけど、一つ、分かったことがあるよ」

 

 私は静かにそう答える。


「何?」


「やっぱり犯人は魔法使いってこと。それも、かなり凶悪なタイプの」


 私がそう言うと、幽香ちゃんはしばらく黙ってしまった。

 私達の周りに鳥が大分集まって来たタイミングで、幽香ちゃんは一言こう言った。


「もしかして…私がやったのかな」


 幽香ちゃんのその一言で、再び辺りが静かになる。


 残念だけど、考えられない話じゃない。

幽香ちゃんの固有魔法の暴走が、小規模で起きて、幽霊の一人が田中さんを殺した可能性はある。ある、あるけど、認めたくなんかない。


私がそう考えていると、突然背後から声が聞こえた。


「それは違うね」


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