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第16話 二人の謝罪

私達が教室に戻ると、どうやらまだ皆憑依の影響か、寝てしまっていた。


「あぁ…ごめんなさい…私のせいで…」


幽香ちゃんは今にも土下座しそうな位皆に深く頭を下げている。


「幽香ちゃん。皆寝てるから謝っても意味ないよ」


「それは分かってるんだけど…自分の気持ち的に…」


「あー、自分が許せないってこと?」


「う、うん…」

 

幽香ちゃんはゆっくり頷きながら自分の席に座った。


「それならなおさら謝る必要ないよ。別に幽香ちゃんのせいじゃないし」


「え、暴走したのって私のせいなんじゃ…」


「いやいや、固有魔法の暴走は本人の注意でどうにかなるもんじゃないから。それに…」


 私はそこで少し言い淀んだ。


 どうしよう、あのこと、話した方が良いのかな。嫌われないかな。


「それに…?」


幽香ちゃんは不思議な顔をしながらこちらを見てくる。


 いいや、やっぱり話そう。


「実は…多分幽香ちゃんの固有魔法を暴走した原因作ったの、私なんだ」


「え、理沙ちゃんが?」


幽香ちゃんはもっと不思議な顔をしてこちらを覗き込んでくる。


「うん。そもそもね、幽香ちゃんみたいに後から魔法の才能に目覚めるタイプの人にはある傾向があるんだよ」


「ある傾向…?」


「で、その傾向が、そういうタイプのひとには周りに強い魔力を持った生き物がいることが多いってものなんだ」


「あ…なるほ…いやでもそれならお兄ちゃんでもいいんじゃ…?」


 幽香ちゃんはそう質問しながら机に体を預けている。恐らく相当疲れているのだろう。


「いや、もし流生先輩の影響で魔法の才能が目覚めたなら、もっと早く目覚めてるよ。流生先輩は確かに強いけど、別に強いからって魔力量が多いわけじゃないから」


「あ…そうなんだ…でも結局理沙ちゃんが直接私になにかしたわけじゃないんでしょ…?」


「確かに直接はしてないけど…」


 …でも私が日本に来てしまったからこんなことになっちゃったのは事実なんだよね。


「私がここに引っ越して来なければこんなことにはならなかったでしょ?」


 私がそう言った瞬間、幽香ちゃんが立ち上がった。


 そして私の右手を両手で包むように握り、静かに横に首を振った。


「それは…違うよ…私と同じ…理沙ちゃん

のせいじゃない。だから…気にしないで」


そして、幽香ちゃんは一息つくとこう言った。


「それに、私は…理沙ちゃんと会えて良かったよ。私…なんとなく想像つくかもだけど…友達今までいなかったから…。だから仲良くしてくれた時は…とても嬉しかった。それに…まだせいぜい5ヶ月のの付き合いだったのに、命懸けで助けてくれたし…」


「…こちらこそ幽香ちゃんと会えて良かったよ。これからもよろしくね、幽香ちゃん!」


 私はそう言ってそっと幽香ちゃんの手を左手で握り返した。


 「うん…よろしく!」


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