12話 魔力ノ暴走 その2
今回はユーノー視点です。
〜十分前〜
私、ユーノーには二つの任務がある。
一つ目は言うまでもなくリサお嬢様の監視、そして守護。
この任務は正直リサお嬢様が学校に行かれるとなると、少々難しくなる。変身魔法を使って適当な生き物に変身してもいいが、ずっと何かがリサお嬢様の近くにいれば怪しまれる。
透明化魔法も考えたが、万が一誰かとぶつかってしまうと危険だし、透明化魔法は変身魔法と比べて魔法が解けやすい。
だから、人目につかないように任務を続ける方法が決まっていないと言うのが現状である。
幽体離脱や千里眼があれば便利なのだろうが、ないものねだりをしてもしかたない。
そして、二つ目の任務…
と、そこで、ある男の声によって私の思考は遮られた。
「能有さん、なんか 周りの様子変じゃないですか?」
私は男、流生の言葉を聞き、周りを見渡す。
確かに流生の言う通り、少し周りの様子がおかしい。
一人の男が、何か独り言を話している。
「ここは…何処だ…?儂は…本能寺で死んだはずでは…」
私はあまりこの国の歴史は詳しくないが、本能寺で亡くなったと聞いて織田信長を思い浮かべることぐらいはできた。
だが、なぜあの男が唐突に本能寺のことを呟き始めたのか。私には理解できなかった。
恐らく周りも理解できていないのだろう。自然と男の周りには人がいなくなり、遠巻きに見る人が増えていた。
「あの人、なんで織田信長のモノマネっぽいことしてるんですかね。少なくとも今やることじゃないと思うんですけど」
流生は顔には出していないが少し怒っているようだ。心の声に少し苛立ちを感じる。
「そうだな。正直ぶん殴りたい気分だ」
私がそう返すと、彼ははっとした顔をし、「すいません、ちょっと席を外します」と言ってどこかに駆け出して行ってしまった。
私は流生を追いかけ、心の中を見てみることにした。
すると、彼は幽香の固有魔法が暴走したことを想像していた。
更に流生の記憶を探ってみると、どうやら幽香は昨日も固有魔法が暴走しかけていたことか分かった。
そして、それについて今日リサお嬢様に聞こうと思っていたようだ。
なるほど、大体話が見えてきた。
と、そこで流生はこちらに気づき、追い払うような手つきをした。
「能有さん、なんであなたついてきてるんですか?入学式始まっちゃいますよ」
心の声を聞くまでもなく彼が相当苛立っているのが分かる。
…わざわざ私が魔法を使えることを黙っていてくれたリサお嬢様には申し訳ないが、ここは話すしかなさそうですね。
「…流生。俺の固有魔法は、精神操作だ。具体的には読心、洗脳、記憶のすり替えなどができる。これを使えば、お前の妹の暴走も止められる」
「だから入学式始まっちゃいますってば…って能有さん、あなた今なんて言いました?」
「だから、俺の固有魔法でお前の考えてること筒抜けで、しかも俺なら幽香の魔法の暴走も止められるって話だ」
「え?能有さん魔法使えたんですか!?それになんかサラッととんでもない発言してません!?」
「ま、気にすんな。それよりさっさと動物と視覚共有しな」
「あ、はい、分かりました」
流生は私にそう返事し、目を閉じて動物と視覚共有をする。
私も彼の視界を固有魔法で見ようとしたが、見ただけで頭が痛くなってきたのでやめた。
「あ…!!今めっちゃヤバい状況です!!中央階段で理沙さんが幽香を庇いながら幽霊達と戦っている感じです。早く行かないと理沙さんも幽香も死にますよこれ!!」
「なっ…急いで中央階段に向かいましょう!手遅れになる前に!」
「はい!」
そうして私達は急いで中央階段に向かう。
約三分たった後、中央階段に着くと、私達は急いで状況を確認する。
「幽香、大丈夫か!」
どうやら流生が幽香を見つけたらしい。
彼が叫びながら彼女の方へ走っていくのが見えた。
私も後から彼女のところへ向かうと、彼女はゆっくりと体を起こした。
私は彼女に「精神操作」を使い彼女の固有魔法の暴走を止める。
「私は…大丈夫…。でも理沙ちゃんが…!」
「理沙さんがどうしたんだ?」
「なんか…どこかに行っちゃったの!怪我も相当酷かったのに!」
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