0話 来日
私、リサ・スードは昔から異世界にある国、日本に憧れていた。
理由は面白い物語が多かったり、ここ、マオー王国と比べて治安が良かったりと、とにかく色々魅力的だったからね。
だから私は親に日本に住みたいと言い続けていた。最初は親も反対していたけど、12歳までは家族と暮らすことと、お目付け役を付けるということ。それと日本人の姿で生活することで合意したよ。
そしてとうとう先日私は12歳の誕生日を迎え、日本に旅立つ事になったんだ。
そんな事を考えていると、私の側にいた男に「リサお嬢様、心の声で自分語りしているのはっきり言って気色悪いですよ」と言われた。
…確かにその通りだな…。気をつけよう。
いや、待てよ。それより問題な事があった。
「ユーノー、人の心の声を勝手に聞かないで!」
ユーノーと呼ばれた男は、こちらの方を向いて、こう答えた。
「申し訳ございません、リサお嬢様。偶然心の声が聞こえてしまったので。つい読心魔法を切り忘れていたみたいです」
そんな訳がない。周りの心の声が聞こえているのに気付かない馬鹿がいてたまるか。つくづく悪趣味な男だ。頼むから他の方法で暇潰しをしてくれ。
「別に私は今暇ではありませんよ」
「まだ魔法使ってるでしょ!さっさと魔法を解かないと一生フォークも持てない体にすんぞ!」
「仕方ないですね。この貸しは高く付きますよ」
「よし分かった◯す」
人の心を読む事に少しは抵抗を持って欲しい。
…彼の名前はユーノー・トーテモ。ここマオー王国の魔物で、一般魔物から魔王の補佐役の一人まで成り上がったエリートで、今回私のお目付け役を務める男だ。
洗脳魔法や変装魔法などを使い私達の戸籍を偽装し、一軒家を購入するなどをしてくれたりと優秀ではある。
後は人の心をむやみやたらに読まなければ何も言う事はないんだけど…
この雑談の間に私達は日本に行くために魔王城の地下にある「異世界への扉」に向かっていた。
しばらくユーノーと雑談をしながら歩いて「異世界への扉」へ着くと、そこには家族が見送りに来ていた。私はそこで10分位家族と話した後、私はその扉をゆっくりと開けた。
扉の向こうには紫色に染まった空間が広がっていた。そこから私は船っぽい乗り物に乗り紫の海を渡っていく。
しばらくすると、向こう岸に扉が見えてきた。
扉を開けると私達の家のリビングがあった。どうやら日本に着いたみたいだ。
「ここって日本のどこなの?」
「東京ですね。住むならやっぱり首都が一番ですから」
「東京のどこ?」
「それは大人の事情で伏せさせてもらいます。無駄に駅だけ発達してる町とだけ言っておきましょう」
「あ、出た!大人の事情!なんで教えてくれないのさ!いいもん自分で調べるから」
「リサお嬢様が知るのは構いませんよ。
でも決して名前言わないでくださいね」
「え、何この地名NGワードなの?」
「ええ、リサお嬢様。うっかり地名を漏らさないようによく注意してください。さもないと貴方の身が危険にさらされますよ」
「う、うん。分かったわ」
私達はそんな会話をしながら家の中を一通り見た。城に比べたら狭い。というのが感想だった。それをユーノーに言うと、「城と比べる事自体間違ってます」と正論を言われた。私は「うるさいな」と返し、ユーノーに対し軽く怒った。別に私だってそれ位分かる。
そしてその後私達は引っ越し作業をした。といっても大体ユーノーが家具や装飾品を置いてくれていたのでほとんど私がやることはなかった。
一通り作業が終わった時にはもうすっかり夜になっていた。やはり魔王城と比べて星の見える数が圧倒的に少ない。そこは日本、というよりこの世界の欠点だろう。
星を見ていると時間がすぐに過ぎていく。気づいたら既に10時になってしまった。
もう随分遅くなっちゃったな、寝よ。
「ユーノー、私はもう寝る」
「分かりました。おやすみなさい、リサお嬢様」
ユーノーは電気を消してゆっくりとドアを閉めてくれた。
これから波乱万丈の日々になるのも知らずに、ぐっすりと。
ここまで見て頂きありがとうございます!
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