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閑話  行列の出来る食堂クルミ

---食堂クルミ店長視点---


 私が店長をしている食堂クルミは、娘のクルミから名を取った店で、亡くなった夫が冒険者を引退すると共に立てた店です。


 バリバリの冒険者だった夫とは、私が森に薬草を取りに行った時に偶然出会ったのが馴れ初めでした。


 薬草探しに没頭して気がつくと夜になっていました。


 夜の森の中は昼間とは全く景色が違って全く違う森に入ったように錯覚し一瞬で迷子になりました。


 どこからか聞こえる魔物の声、ただの風が草木が音を鳴らす度に目に見えない所から魔物が近づいて来ていて、そのうち魔物に食われるのではないかという、夜の森が見せた恐怖に囚われて足がすくみその場で蹲ることしか出来ませんでした。


 そんな私の所に偶然、夜にしか出現しない魔物を狩りに来た冒険者が現れ、私を森の外まで連れ出してくれたんです。


 その冒険者が後の夫なんですけどね。


 助かった嬉しさから気が抜けてお腹を鳴らした私に、夫が作ってくれた冒険飯の味を私は一生忘れないでしょう。


 それがキッカケで、よく街中で会うようになり、恋人、結婚を誓い合う仲に...


 夫は結婚の際に、致死率の高い職だからと町娘の私と将来の子供を気遣って冒険者を引退して、これからの仕事として冒険者時代に溜め込んだお金で冒険飯の店を建てたんです。


 夫の作る冒険飯は、冒険者の中でも美味いと有名で毎日のように繁盛だったんです。


 私がウェイトレスをして、夫が仕込みや料理をする。控えめに言って幸せでしたね。


 お腹が膨らんできた時はウェイトレスのお仕事はすごく大変で、夫から何度も休むんだって言われたりしましたね。


 娘が生まれた時なんて夫は大喜びで、最初は冒険飯店だったお店の名前も娘の名前とおなじ食堂クルミに改名したぐらいなんですよ。


 ずっとこの幸せが続けばいいなって思ってたんですけどね。


.........


 半年前、夫が急に血を吐いて倒れたんです。神官さんに診てもらったら「末期ガン」って...先は長くないって...


 何度も治療できないかってお願いを続けたんですけど、出来ないってもう間に合わないって。


 夫も、お金を自分にかけるぐらいなら私と娘に残したいって...


 程なくして夫は死んでしまって。


 最初はもう、ずっと泣くしかできなかったんですけど、娘は笑顔で


「大丈夫!ぱぱの大事なお店をもっと大きくしよ!ぱぱならまた褒めてくれるはずだもん!」


 って...頑張るしかないですよね!


 でも、上手く行かないものなんです。


 夫のような料理、私の腕では作れなくて、夫の友人達は何度も食べに来てくれるんですけど、他のお客さんがどんどん減っちゃうんです。


 夫はレシピを残してくれてたんですけど全く同じように作ってもあの味が作れないんです。


 夫が残したお金はお店の維持費なんかで少しずつ減っていっちゃって、それで私、焦って何とかしなくちゃって、何度も料理を練習して、でもあの味にならなくて...


 そんな時に近くにすごいお店が出来たんです!


 説明書通りに使うだけですっごく髪がサラサラになるトリートメントを自動販売機?っていう初めて見た方法で売ってるんですよ!


 すごいなって、商売のできる人は全くやることが違うなって思いましたよ。


 そんなお店、カロ○ーメ○トっていう食品まで売り始めたんですよ!


 冒険先で手軽に美味しくエネルギーチャージですって。よく良く考えれば、冒険先で料理してるのって夫ぐらいで他の人はみんな保存食食べてるんですね。凄いところに着目したなって思いましたよ。


 1個買ってみたらすごく美味しいし...なんか負けたって...


 だからその店の店長さんが私の店に食べに来た時に私に言ったことにはもうビックリしましたね。あ、女性のくせに男口調なのは別ですよ?


「美味いな。美味いが...この料理は1番大切な調味料を入れ忘れているな。」


 って言ったんですよ!私、夫のレシピ通りに作りました!調味料はピッタリ計って全部入れてますよ!そう言い返したら、


「そっちの調味料じゃない。料理を1番美味くするあれがないじゃないか、ん?おい、目にクマが出来てるな。1回しっかり休め、何の調味料が足りていないかは...ヒントは、夫は何を考えて料理をしていたんだろうな?」


 って返してきたんです。その後この店は伸びるから俺がCEOってやつになろうって言ってきたり、向こうの言う事でなんか、ズルズル決まって行って。


 まぁ、あの店長さんが、この店のサポートをしてくれるって言うから、潰れちゃうような心配はなくなってその次の日、ゆっくり休めたんですよね。


 それでね、あの店長のヒントを考えながら、休みの時間で娘と1日遊んだんです。


 それで思い出したんですよ!それでやっと気づいたんです!


 確かに私はあの店長の言う通り1番大切な調味料を忘れてたってっ!


 それからは、夫が料理をしていた時ぐらいに繁盛して...あの店長にはもう足を向けて寝れませんよ!

 次の金曜日くらいまでは忙しくて投稿が遅れそうです。あと投稿内容が、書きやすい閑話なんかになるかもです。

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