表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/64

とある夏の日 家族旅行編 3日目 市場

長町武家屋敷跡を出た俺達は、次なる目的地へと来ていた。

次なる、というか予定している観光地としてはここが最後になる。


「おー!人がいっぱいだね!」


「…ん。」


観光客だけでなく地元民も多く訪れ、人で賑わう市場を見て、凛が目を輝かせ姉さんはちょっと億劫そうな顔をした。

姉さんは人混みが苦手だからな。

まぁ多いと言っても歩けない程ではないから、少しだけ我慢してくれ。


「ここが近江町市場か…」


「前にテレビでこの市場の特集を見て、一度来てみたいと思ってたのよねぇ。」


母さんがニコニコスマイルで言った。

近江町市場は、江戸時代からこの地の人々に食材を提供してきた市場で、通称"市民の台所"といわれるらしい。


「お兄ちゃん、お母さん、早く行こ!」


先行する凛が姉さんの手を掴んでブンブン振りながら、後ろにいた俺と母さんに手招きをする。

姉さんは無表情で腕を振られていた。

その様子を見て苦笑しつつ、俺と母さんは歩き出した。




この近江町位置に来た理由は、ただ賑やかな市場を見る為だけではない。

日本海で獲れる新鮮な魚介や加賀の野菜を見るのも楽しいのだが、主な目的はそんな魚介類を新鮮なうちに食べられるお店を回ること……つまり食べ歩きである。


市場の威勢の良い売り場の人達の声を聞きながら見て周り、まず最初に立ち寄ったのは回転寿司。

回転寿司とはいっても新鮮なネタを本物の寿司職人が握ってくれるらしく、特に観光客に人気の店のようだ。


「うわぁ!お兄ちゃん見て見て!」


凛が2種類の寿司を嬉しそうに見せてくる。

2つともネタはエビなのだが、1つは握りでもう1つは軍艦だ。

握りのエビはちょっと茶色く、軍艦のエビは真っ白だ。


「おぉ、ガスエビの握りだね。この時期にも食べられるのか。」


「がすえび?」


「北陸で食べられるエビだよ。身がぷりっぷりで甘みが強いんだって。」


前世で食べた事あったなぁ。

でも確か夏場は食べられないとか聞いた気がするんだけど……俺の知ってるのとは種類が違うのかな。


「ほへぇ…」


「そっちの白いのは白エビだね。俺も食べようかな。」


「一緒に食べよ!」


白エビの軍艦が2貫乗った皿を笑顔で差し出した。


「お、良いの?」


「うん!」


「ありがとう凛。それじゃいただきます。……うん、美味い!」


「凛も!……おいひい!」


ガスエビや甘エビなんかに比べると甘さは優しいけど、塊が一気に口に入るとエビの旨味が広がって気持ちが良い。

食感もぷりっというよりはもちっしてるような感じだ。



「ゆうくん、これも美味しいわよ。」


「これは?」


「のどぐろよ。」


アカムツだとぉ!?

高級魚じゃないか!


「のどぐろの握りか…凄いね。」


値段を確認すると白エビと同じだという事がわかった。

やっぱ高い……ていうか白エビがのどぐろと並ぶのかよ…高級品じゃん。


「凛も食べたい!」


「…ん。」


「なら頼みましょうか…あら、炙りもあるのね。折角だから2皿ずついただきましょう。」


ひぇぇぇ

札がどんどん飛ぶぜぇ。


「か、母さん…そんな高級品ばっかり良いの?俺、かんぴょう巻きでも良いよ…?」


「良いのよぁ。お母さんこれでもそこそこ稼いでるんだから。それに、ゆうくんはあんまりお小遣いも強請らないんだから、こういう時くらい好きなもの食べてほしいなぁ。」


「で、でも…」


気持ちは嬉しいけど前世から培った金銭感覚が……

いや、旅行連れてきてもらって散々観光しておいて今更な遠慮なんだけどさ。


「わがまま言わないの!ちゃんと美味しいもの食べなさい!ほら、活け鮑もあるわよぉ。」


ひぇぇぇぇぇ

わがままって何だっけ。





「んー!美味しかったわねぇ。」


「ね!うまうまだった!」


母さんと凛が満足げに店を出る。

姉さんも無言ながら同じような感じだった。

俺は……なんか疲れたけど、確かに美味しかったな。


「あぶったのどぐろ美味しかった!」


「りんちゃんは炙った方が好きだったのねぇ。はるちゃんは?」


「…普通の。」


まぁのどぐろは火を通すと脂がバッチバチのジュワジュワだから、人によってはキツすぎるらしいからね。

姉さんはマグロも大トロより赤身の方が好きだし、のどぐろも生の方が食べやすいんだろう。



「母さんは何が好きだった?」


「お母さんはウニかしらねぇ。」


「ウニか……母さん好きだよね。」


「ゆうくんはあんまり得意じゃないもんねぇ。」


「磯の香りが強すぎてちょっとね……」


「何が美味しかったぁ?」


「俺は…鮑かな。」


結局食べちゃいました。

めちゃくちゃ美味しかったです。

鮑って生だと凄いコリコリして味も深くて美味しいよね。



「お母さん!早く次行こ!」


「はぁい。」


凛が弾む足取りで母さんを引っ張る。

市場での目的は食べ歩き。

回転寿司でもそこまで色々なネタは食べなかった。

ここでしか食えないようなのだけ食べた感じだ。

というわけで、お腹にはまだまだ余裕がある。

次へ行こう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すっかり良い旅夢気分。 金沢観光行きたくなりました。。が、 話進んでない気が(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ