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とある夏の日 家族旅行編 2日目 入浴

「うわぁ!広いね!」


いち早く服を脱いで浴室に入った凛が声を上げる。

それに続いて中に入ると、凛がニコニコ笑って俺を手招きした。

家族風呂とはいってももう少し小さいのを想像していたんだけど、思いのほか大きいな。


「お兄ちゃん、こっちこっち!」


「はいはい。」


手招く凛はタオルを巻いていた。

ちゃんと年頃の女の子してるようで、お兄ちゃんは安心したぞ。

タオル越しにもわかる膨らみに目が向きそうになるのを理性で抑え、凛に歩み寄る。


「お兄ちゃん、頭洗って!」


「良いよ。座りな。」


「はーい!」


バスチェアに座った凛の頭からお湯を流す。

その間に母さんと姉さんも中に入ってきたようだ。

凛の隣に姉さんが座る。

どうやら姉さんの頭は母さんが洗うらしい。

2人ともタオルを巻いているはずだが、努めてそちらを見ないようにする。




ゴシゴシゴシゴシ…


「どこか痒いところございませんかー?」


「ございませーん。」


「あいよー。」


ルンルン気分の凛。

鼻歌は可愛いけど洗いにくいからあまり頭を振らないでくれ。


ゴシゴシゴシゴシ…


「お兄ちゃーん。」


「あいよー?」


「頭なでてくださーい!」


「あいよー。」


ナデナデナデナデ…

ゴシゴシゴシゴシ…

さて、そろそろ良いだろう。


「流すぞ。」


「はーい。」


ギュッと目を瞑る凛。

うん、良い子だ。


「はい、ばしゃー。」


「ゴボゴボゴボゴボ」


「こら、喋るな!」


「えへへ、ごめんなしゃい。」


やっぱり悪い子だった。

でも笑顔が可愛いから許す。



「お兄ちゃん、次!」


「体は自分で洗いなさい。」


流石にね。


「えぇ……だめぇ?」


上目遣い。

くっ……


「せ、背中だけだぞ。」


「やったぁ!ありがとお兄ちゃん!」


「ユウ……」


隣から姉さんの呆れたような視線を感じる。

俺も自分に呆れてます。




凛がタオルを外す。

白い肌、スポーツガールらしい引き締まった背中。

綺麗だな、と思った。


「あ、お兄ちゃん、手で洗って。」


「え?」


ボディソープをタオルで泡立てていると、凛がそんな事を言ってきた。


「な、なんで?」


「そのタオルで洗うとお肌によくないから。」


り、凛…いつの間にか女の子になって……

でもそんな女の子の背中を手で洗うってのはどうなのだろう。

何か言い訳はないか。


「…でも手でやると泡立たないぞ。」


これでどうだ。


「タオルで立てた泡を手に取って使えばいいんだよ。」


撃沈。

そりゃそうだ。


「いつもそうしてるのか?」


「お家では自分のスポンジ使ってるよ。でも持ってきてないから。だから昨日は手で洗ったの。」


なんでやねん。

持ってこいよ。

…いや、家族風呂で俺が洗うってのが想定外だから仕方ないのか。


「い、いやでもな……」


「?だめなの?」


純粋でつぶらな瞳。

何か自分がいかがわしく感じているのが情けなくなってきた。

そうだよな。

小学生同士で兄妹だもんな。

凛はまだそういう事に疎いだろうし、警戒する必要はないんだ。


「よし、洗うか。」


「うん!………やった」


「ん?何か言った?」


「ううん!何もないよ。」


「そっか。」


「………凛、手強い。」


…姉さんは何を言っているんだろう。




「さぁ、こんなもんで良いだろ。」


……鍛えてるのに、柔らかかった。


「ありがとう、お兄ちゃん!」


「あいよ。」


背中以外を洗い始める凛から目をそらし、隣にバスチェアを置いて座る。

さて、俺も洗うか。


「あ、待ってお兄ちゃん。」


「ん?」


「凛が洗ってあげる!ちょっと待ってて!」


凛が慌てて体を洗う。

……え、俺洗われるの?


「いや、自分でやるから良いよ。」


「だめ!凛が洗うの!」


駄目ですか、そうですか。



「……私も、洗う。」


「あら良いわねぇ。ならお母さんもさせてもらおうかしら。」


母さんに頭を洗われながら姉さんが言い、母さんはニコニコ笑いながら頷いた。

姉さんは凛より髪が長いから、洗うのに時間がかかってるみたいだね……ってそうじゃない。


「いや、え……何で?」


「たまには良いじゃない。」


「…ん。」


……先に洗っておこうかな。


「お兄ちゃん!自分でやったら怒るからね!ていうか洗ってもまた洗うから!」


駄目でした。

うちの家族は意外と頑固だな。

……念の為、前だけでも先に洗っておこう。






ゴシゴシゴシゴシ…


「かゆいところはございませんかー?」


「ございません。」


「あーい!」


ゴシゴシゴシゴシ…

ナデナデナデナデ…


「何故撫でた。」


「だめだった?」


「いや、良いけど。」


気持ち良かったし。

ゴシゴシゴシゴシ…


「流すねー。」


「あいよー。」


ばしゃー。

口は開きません。


「はい、終わったよ!」


「ありがとう凛。気持ち良かったよ。」


「うん、どういたしまして!じゃあ次、お姉ちゃんどうぞ!」


「……ん。」


姉さんが後ろにバスチェアを置いて座る。

審議の結果、凛が頭、姉さんが背中、母さんが腕を洗う事になったようだ。

………解せぬ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 両腕に母親と姉が抱きついて足の間に妹が入る入浴スタイルに成りそう(笑)
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