とある夏の日 家族旅行編 2日目 感想
お陰様で総合評価が10,000Ptを超えました。
本当にありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
「つかれたー」
旅館に戻るなりぐてーっとなる凛。
遊び疲れてしまったようだ。
俺もだけどね。
「今日も随分歩いたものねぇ。」
「…ん。」
「だね……それにしても、治部煮は美味しかったなぁ。」
「ゆうくん、すっかりお気に入りねぇ。」
「ワサビと肉の相性って抜群だよね。」
この旅館の治部煮は鶏肉だったが、今日行った料亭の治部煮は鴨肉が使われていた。
個人的には鴨肉の治部煮の方が好きだと感じた。
「あと、はす蒸しも美味しかったよね。」
「お兄ちゃんしぶーい。」
「えっ」
美味しいじゃんはす蒸し。
すりおろした加賀れんこんをエビなどと一緒に蒸した料理なのだが、粘り気の強い加賀れんこんを蒸す事でもっちりした食感になるのだ。
おまけにとろみのついた餡をかける事で更に面白い食感になっている。
エビの出汁も吸って味は抜群だ。
「お母さんはかぶら寿司が好きだったわ。」
母さんも渋いと思う。
「えー、凛は苦手ー。」
凛が口を尖らせて言った。
かぶら寿司はかぶらにブリを挟んで発酵させたもので、なれ鮨の一種だ。
発酵食品特有の香りと味があるから、好き嫌いは分かれるかもしれない。
姉さんもどちらかというと凛と同意見のようだ。
「俺は好きだけどなぁ。」
「流石ゆうくん!おじさん舌ね!」
それ褒めてないよね?
「お姉ちゃんは何が好きだった?」
「……ドジョウ。」
「うへ……」
姉さんの回答に凛が苦々しい顔をする。
ドジョウは味は良いんだけど独特の泥臭さがあるんだよな。
「ドジョウの唐揚げか……美味しかったけど、俺はちょっと苦手かも。」
「だよね、お兄ちゃん!」
俺の言葉に凛が嬉しそうに反応し、姉さんが拗ねたように頬を膨らませた。
可愛い。
「えっと、他には何かなかった、姉さん?」
「………いしる。」
お、いしるの貝焼きか。
「あれ美味しかったよね。ちょっと塩辛いけど、汗かいた日に食べるとより美味しそう。」
「……ん。」
今度は満足げな表情。
良かった良かった。
「いしるかぁ……お母さんには濃すぎてちょっと…」
母さんは苦笑い。
いしるは能登半島で作られる魚醤で、いしりともいうらしい。
魚醤らしく塩辛味が強いが、煮炊きの海鮮にはよく合う味である。
「凛はね、鯛の蒸したやつが好き!すっごく美味しかった!」
「鯛の唐蒸しな。確かに美味しかったね。見た目も豪華だったし。」
「お皿も綺麗だったわねぇ。九谷焼っていうらしいわよ。」
鯛の唐蒸しは、おからを刻んだれんこん等と一緒に炒めて出し汁や醤油等で味付けしたものを鯛のお腹に詰めたものだ。
加賀の武家文化の影響で、鯛は腹開きではなく背開きの場合が多い。
腹開きは切腹に通じるから縁起が悪いという事らしい。
基本的には婚礼等の祝い事で供される料理らしいが、今では郷土料理として料亭でも食べられるのだとか。
今日の観光先や食事についての感想を話しながら暫しゆったり。
20分ほど話していたところで、母さんが時計を見た。
「あ、そろそろお風呂の予約の時間ね。行きましょうか。」
「お風呂!」
凛が反応してバッと立ち上がる。
「………。」
姉さんは黙々と入浴の準備をしつつ、チラッと俺を見て頬を赤らめた。
おぉ……そういえばそうだった。
「ねぇ、本当に家族風呂入るの?」
「ゆうくん、今更何を言ってるのよ。当たり前じゃない。」
当たり前なんですか。
もう予約しちゃってるもんね。
それにしても、昨夜胸元を覗かれて恥ずかしがっていた人だとは思えない堂々とした姿。
やっぱり風呂で見せるのと気を抜いていて見られるのでは違うのかな。
「お兄ちゃん、かんねんしなさい!」
驚きのスピードで準備を終えた凛が逃すまいと腕を捕まえた。
そんなんしなくても逃げないって。
昨日の夜は気恥ずかしかったけど、よく考えたら家族で風呂なんて大した問題ないじゃないか。
ましてや俺は小学生。
間違いなど起ころうはずもない。
………実の姉とキスした奴が言える事じゃないな。
倫理ってどこにいったんだろう。
もうここまできたら気にしても仕方ない。
早く風呂に浸かりたいし、手早く準備しよう。
って言ってもタオルとかは向かうにあるから、持っていくのは着替えと貴重品くらいだけどね。
数分で全員の準備ができた。
いざ、出陣。




