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とある夏の日 家族旅行編 2日目 撮影

怒涛の誤字報告をいただきました。

本当に助かっています。

いつもありがとうございます。

翌朝、目を覚ました俺が体を起こして辺りを見ると、布団が1つだけ空いて畳まれていた。

姉さんは猫のように丸まって寝ており、凛は何故か上下逆転してスヤスヤと寝ている。

どうやら母さんは先に起きていたようだ。


姉さんのあどけない寝顔を見て、昨夜の事を思い出して気恥ずかしくなり、俺はブンブンと頭を振って立ち上がった。




「あら、おはよぉゆうくん。」


寝所を出ると、朝日の差し込む部屋で母さんが急須からお茶を注いでいた。


「おはよう母さん。早いね。」


「お母さんもついさっき起きたところよぉ。ゆうくんも飲む?」


「貰おうかな。」


「はぁい。………どうぞぉ。」


「ありがとう。」


母さんが注いでくれた温かいお茶を口に含む。

朝の柔らかな空気と相まって、心地良い気分になりほっと一息ついた。


「はぁ……美味しい。」


「ふふっ、良かったぁ。」


母さんがふんわりと微笑む。

俺はこの笑顔が大好きだ。

ふと昨夜の姉さんの微笑みを思い出し、頬が熱くなった。


「…?どうかしたのぉ?」


「あ、いや、何でもないよ。」


誤魔化すようにお茶を飲む。

冷たいお茶にしてもらえば良かったかもしれない。



「凛達は何時に起きてくるかな?」


「そうねぇ…はるちゃんはちょっとしたら起きると思うけど、りんちゃんはどうかしらねぇ。」


凛は1度寝たらなかなか起きないからな。


「はるちゃんが起きたらりんちゃんも起こしましょうか。」


「それが良いかもね。今日の午前は凛の行きたいところに行く予定だし、あまり遅くなると時間が無くなるもんね。」


「起きたら食堂で朝ごはんを食べて、出かけましょうか。」


「オッケー。」




20分ほど母さんとのんびり話しながらお茶を啜っていると、寝所の襖が開いて寝ぼけ眼の姉さんが出てきた。

自分の鼓動がちょっと早まるのを感じる。


「はるちゃん、おはよぉ。」


「お、おはよう姉さん。」


「…ん……おは、よう。」


軽く目を擦ってパチパチとした後、俺の顔を見て小さく俯きながら挨拶をした。

その頬がほんのり赤く染まっていて、俺まで俯きたくなる。


「……??2人とも、どうかしたのぉ?」


「う、ううん、何もないから大丈夫だよ。」


「…ん。」


「そうかしらぁ?」


怪訝そうに首を傾げている。

いかん、昨日の今日で意識しすぎているな。

切り替えよう。


「凛を起こしてくるよ。」


「お願いねぇ。」



寝所に入ると、気持ち良さそうに眠る凛の姿。

浴衣の裾がはだけて程よく鍛えられた白い脚が覗いている。


「っ……」


いかんいかん。

何を小学生相手に欲情しているんだ俺は。


「おーい、凛。朝だよ、起きて。」


早く起こそう。

新たな扉を開いてしまう前に。






「うわぁー!きれー!!」


木が捻れたような柱に支えられた巨大な門を見上げ、凛が感嘆の声を上げた。

鼓門というらしいこの壮大な門は、金沢駅のシンボルの1つであるという。


「こりゃ確かに立派だな。」


「……ん、凄い。」


「大きいわねぇ…」


凛の希望した観光先は3つ。

その内の1つはまさかの金沢駅であった。

俺はあまり詳しく知らないが、何やらこの金沢駅は世界で最も美しい駅にランクインした事もあるらしく、今では人気の写真スポットなんだとか。

凛はSNSもよく使っているようだから、写真を撮ってアップしたかったんだろうな。


「お兄ちゃん!写真撮ってー!」


「はいはーい。」


凛のスマホを受け取って、いつも凛が使っているカメラアプリを起動する。

美肌効果やら何やらよくわからんが、撮った写真の映りが良くなるように自動修正してくれるらしい。


そんな加工しなくても凛は天使なのにな……と思ったが、いざ撮ってみるとあまり大幅な加工をされてはいないようだ。

凛は加工する必要もない、という事か。

カメラアプリ(お前)、よくわかってるじゃないか。


凛は元から目もパチクリして大きいしな。

これ以上大きくしたら化け物みたいになってしまうから、加工しないくらいでちょうど良いんだよ。


「次はお兄ちゃんも一緒にー!」


「はいよー。」


凛に誘われて一緒に映る。

撮影役は姉さんだ。

その後、通行人に頼んで家族全員で写真を撮ったり、場所を移してまた撮影したりした。

金沢駅には写真撮影の為だけに訪れたようで、終わり次第すぐに次に向かう事になった。






「……あめ屋?」


「うん、ここ行きたかったの!すごく古いあめ屋さんなんだって!」


凛が目をキラキラさせて見るその先には、一見して老舗とわかるような木造のお店があった。

スマホで軽く調べると、江戸時代から続く有名なあめ屋らしい。

そもそもあめ専門の店というだけで珍しいが、今風の派手な飴ではなく昔ながらの素朴な飴を今でも作っているという事で、結構な人気があるのだとか。


「へぇ…面白そうだな。」


「でしょでしょ!」


スマホで検索していた俺が呟くと、凛は嬉しそうに腕に抱きついてきた。

ニコニコ笑う凛の頭を撫でる。

そういえば凛は昔から飴が好きだったな、と思い出した。

俺も前世で田舎の婆ちゃんに食べさせてもらった自家製の飴を思い浮かべ、頬が緩む。


「飴を食べるのなんていつぶりかしらねぇ。」


「……ん。」


母さんも姉さんもあまりお菓子を食べない。

飴なんて特に食べる機会はないだろう。

2人も楽しみにしているようだった。


「入ろうか、凛。」


「うん!れっつごー!!」


スキップしそうな勢いで歩き出す凛を先頭に俺達は店に入り、昔ながらの飴の味を堪能するのであった。

瓶詰めの水飴や割って食べる飴など幾つか購入し、お土産用にも買った。

優しい甘さで体にしっとりと吸収されていくような感じがして、舐めているだけで心が癒されるような感じがした。


凛も頬にパンパンに詰め込むようにして美味しそうに食べていた。

飴の食べ方としてかなり間違っているとは思うが、凛が楽しそうで何よりだ。

こちらも宜しくお願い致します。


『学校ではクールな女教師が僕の前では可愛すぎる』

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