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いつの間にか6年生 前編

ブクマ2000件突破しました。

皆さんありがとうございます。


本日2話投稿。

1話目です。

朝、アラームの音で目を覚ました俺は、ベッドから起き上がって伸びをした。

枕元に置いていたスマホを手に取り、アラームを止める。


窓のカーテンを開け放てば、夏らしい燦々とした朝日が差し込んできた。

騒々しいセミの鳴き声が微かに聞こえる。

外はきっと暑いのだろうが、室内は社畜の如く働いてくれている冷房のお陰で快適な温度に保たれていた。

現代技術の詰め込まれた家電に感謝である。


部屋を出てリビングに降りる。

ちょうど仕事に行こうとしている咲苗(母さん)に会った。


「おはよう母さん。」


「あら、おはようゆーくん。今日から夏休みなのに、早いのね。」


「生活習慣が崩れるのは良くないからね。朝はランニングでもしようかと思って。」


「相変わらずしっかりしてるわねぇ。」


母さんが苦笑してそう言った。


「母さんは今から仕事?」


「ええ、そうよ。はるちゃんは今日が終業式だから、お昼頃には帰ってくると思うわ。」


「わかった。母さんは帰り遅くなる?」


「うーん…ちょっと遅くなるかも。」


「了解。なら夜ご飯は作っとくよ。」


「いつもごめんねぇ。本当にありがとう。」


「気にしなくて良いって。それじゃ、行ってらっしゃい。」


「行ってきます!」


歳を感じさせない若々しい笑顔を残し、母さんは出て行った。

母さんももうすぐ40代なんだけど、周りからは30歳くらいにしか見られない。

本気で若作りしたら20代でも悠々通せるのではなかろうか。

女性の神秘である。









俺がこの世界に転生して、早12年が経過していた。

俺はいま、小学6年生である。

妹の凛は5年生、(姉さん)は中学3年生になっていた。


俺は相変わらず空手道場と英語教室に通い続けている。

空手は以前まで週に2回通っていたのだが、4年生になってからは週に3回通うようになっていた。

大会等にも出るようになり、本格的に鍛えたいと思ったからだ。


英語教室は変わらず週に1回通っているが、その英語教室は対象が小学生以下の為、小学校卒業と同時に辞める事になる。

これは一緒に通っている綺音も同様だ。

というか、もう2年前くらいから俺と綺音は生徒として教わる事がほぼ無くなり、教室に行っても先生とガチの英会話をして発音等の粗を無くすか、低学年クラスの授業補佐をしたりしていた。


小学校では、自分で言うのもなんだが俺は学年のリーダー的な役割として子どもからも先生からも認識されるようになっていた。

男子も女子も俺の言う事に従わない者はいない。

だが人望があって様々な相談事をされる綺音と違い、どこか一歩引いたように付き従われていた。

何でこうなっちゃったんだろうね、本当。


ちなみに、後輩の美緒ちゃんの件で色々あった元ガキ大将の香田武は、クラスは別だが今では友達となり、夏休みも何度か遊ぶ約束をしていた。

今年の運動会では俺が青ブロックの応援団長を務め、武が赤ブロックの応援団長を務め、ライバルとして戦った。

結果は僅差で青ブロックの勝ち。

まぁ別に応援団長が誰だからってブロックの勝敗にそこまでの影響はないのだが、何となく白熱した熱血漫画的展開になっていたのだ。




姉さんは中学に入学してからますます大人っぽく、綺麗になっていき、度々告白などもされているようだ。

しかし一度も恋人ができた事はない。

というか、年々俺を見る目が明らかに女のソレになっている。

これは俺の行動のせいなのか、ゲームの世界における運命の収束的な云々なのかはわからないが、姉さん程の美人に想われるのは嫌な気持ちではなかった。

そもそもヒロインとしての守崎悠を良く知っている俺からすれば、近親恋愛への忌避感などはほぼない。

それは母さんや凛も同様であった。

だからどうだという話ではないが……まぁ、今はこれから先に来るであろう彼女らのNTRフラグを折る事に執心しよう。


姉さんは今でもピアノを習っており、大きなコンクールでも成績を残す程の腕前。

将来的にも期待されており、姉さん自身もそちらの道に進むつもりのようだ。

週に4回のレッスンを受けるようになり、家でも毎日のようにピアノを触っている。

ピアノに触れている時の姉さんは、一見して無表情のようだが、実は口角が微妙に上がっている。

周りから押し付けられるでもなく、楽しく弾いているようで何よりだ。

コンクールで入賞するようになってからはなるべく姉さんに料理はさせないようにしている。

その為、母さんが忙しい時などは基本的に俺が料理をするようになっていた。


かつて運動会の件(旭さん曰く、二人三脚事件)で仲が拗れた高坂は、中学受験で私立の中学へ行き、小学校を卒業してから顔を合わせる事はなくなったそうだ。

たまに高坂からアプローチを受けていた姉さんは心底ホッとしたように言っていた。

哀れ、高坂隼人。

また、高坂がいなくなったお陰で高坂ファンの女子達も正気に戻ったらしく、中学では何かあれば普通に話せるくらいにはなったという。

半ば虐めのような事をしやがった女共を俺は許せないが、姉さんが気にしていないのに俺が怒るのはお門違いというものだろう。

俺も特に気にしない事にした。


そして、二人三脚事件で仲良くなった旭さんとは未だに交流が続いており、姉さんが唯一親友といえる存在になっていた。

家にもよく遊びに来る為、俺や凛も何度も一緒に遊んだりした。

旭さんの幼馴染であり俺の空手の先輩でもある倉橋さんも一緒に遊ぶ事があり、倉橋さんは小学校卒業と同時に道場を辞めてしまったが、未だに親しくさせてもらっている。

ちなみに倉橋さんが空手を辞めた理由は、中学で柔道部に入る為であった。

今では柔道部の主将をしているらしく、大会でもかなり良い結果を出しているのだとか。



余談だが、倉橋さんと旭さんが去年から付き合いだしたらしい。

それを俺に伝えた時の姉さんが、何かを期待するように頬を染めていた。

今はまだちょっと、勘弁して下さい。

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