悪い事したらバチが当たるっちゃけんね!
誤字報告、めっちゃ助かってます。
ありがとうございます。
因縁をつける1年坊主達の声に反応するように、泣いていた少女が立ち上がった。
「う、うちぶつかっとらんもん!そっちがぶつかってきたっちゃろ!」
「はぁ?なにいってんのかわかんねーし!」
「そうだそうだ!」
「いみわからんのはそっちたい!」
方言バリバリで反論する少女。
ただやられるだけの女ではないようだ。
「……って言ってるけど?」
「っ…あ、その……」
タケシくんに問うと、彼はまたもやアタフタと慌てた。
「タケシくん!はやくそいつやっつけてよ!」
「そうだそうだ!」
はやし立てる坊主達。
タケシくんは体を震わせながらも、前に進み出た。
「お、お、おい!」
「あ"?」
「ひぃっ!!」
おそるおそる話しかけられたらドスを効かせて返す。
これぞ様式美。
「おにいちゃんこわい。」
「うぁうぇ!?あ、いや…コホン……さぁ、どうしたのかな?」
凛に引かれた俺は慌てて紳士振る。
「そ、その……えっと…うっ……」
「……そもそも、君だれだっけ?何組?」
「さ、さ、3組。こうだたけし…です。」
こうだたけし……ん?
「もしかして、香田武?相撲やってる?」
「う、そ、そう…です。」
だから坊主共は頼りにしてるわけだ。
体も2年生にしては大きいし、力も強いだろう。
「あぁ、なるほど……1年振り…かな?」
「ひっ」
後ずさる武くん。
顔色が青を通り越して白くなっている。
彼とは一度喧嘩をした事がある……らしい。
武くんは俺とは別の幼稚園でガキ大将として君臨していたらしく、小学生となっても威張りちらそうとしていたが、クラスに従わない子どもが数名いた。
彼らに服従しない理由を聞くと、武くんよりもっと凄い子を知っているからとのこと。
……そう、俺である。
その服従しない子というのは、俺と同じ幼稚園にいた子達だ。
彼らとは別のクラスになっても交流があり、未だに俺への忠誠心を忘れてはいなかったのだ。
ともあれ、そんな話を聞いては見過ごせない武くんは、放課後に帰り道で俺を待ち伏せして因縁をつけてきた。
が、幼稚園に凛を迎えに行く為に急いでいた俺は、愛しい妹との約8時間振りの再会を邪魔された事に苛立ち、ろくに話も聞かないままに彼を打ち倒した。
もちろん怪我はさせないよう配慮はしたが、武くんはむしろその余裕のある態度にプライドを傷つけられ、以降ガキ大将振るのは控えるようになったらしい。
………と、後日彼のクラスにいる幼稚園時代の友人から聞いた。
俺はその一件で「空手を学んでいるのはそんな事に使う為ではなかったはずだ。」と自分を戒めたが、それ以来彼の名を聞く事はなかった為、すっかり忘れていたら。
1年坊主を侍らせているのは、またガキ大将気分に戻ったのだろうか?
「その子達は……君のお友達かい?」
「い、いや、こいつらは…幼稚園がいっしょで……」
言外に"また調子に乗ってんのか?"と問うが、武くんは否定したい様子。
なるほど、まだ彼が本当にガキ大将だった時の連れか。
「幼稚園ではあんまり関係なかったかもしれないけど、もう小学生なんだから。先輩として後輩に教えてあげないといけないよ?やっていい事と悪い事をさ。」
必殺のにっこりスマイル。
これ以上食い下がるならやっちまうぞ、というわけだ。
やらないけどね。
「ひぃぇっ!!わ、わわわかった!!」
俺の意思を本能で察した武くんは縮み上がった。
「うん、ならその子に謝ろうか。悪い事したら謝る、当たり前の事だよね?」
「はぁ?なんでそん「ごめんなさい!!」…えっ?」
「え……」
坊主がガン付けようとしたのを遮るように、武くんが女の子に頭を下げた。
坊主達はもとより、女の子まで驚いて呆然としている。
「た、タケシくんどうし「いいからおまえらもあやまれ!!」…うわっ!!」
武くんに頭を押さえられる坊主達。
そして武くんがチラッと俺を見る。
「こ、これでいい…か?」
「うーん……ねぇ君、どうかな?もう許せる?」
「ふぇっ!?あ、いや、えっと……う、うん。」
控えめに頷く少女。
何か引いてるように見えるけど、良いと言うなら良いんだろう。
「うん。許してもらえて良かったね。それじゃ、早く帰りな。もうするんじゃないよ。」
次したら…わかってるな?
「ひぃぃぃ!!わ、わかりました!おい、帰るぞ!!」
『うわぁぁぁ!?』
転がるように逃げる武くんと引っ張られる子分達。
とりあえず解決…で良いかな。
「おにいちゃんかっくいー!!」
「ふっ…そうだろそうだろ。」
妹に褒められたら何でもできちゃう。
…っと、今はふざけてる場合じゃない。
笹食ってる場合じゃねぇ!!
「さて……」
潤む瞳の少女を見る。
彼女はびくっと肩を震わせた。
こんな時には十八番の出番だ。
くらえ、にっこりスマイル!!
「やぁ、こんにちは。」
「っ!!」
「おにいちゃん……」
え、何で引くの?




