寝て起きたら……赤ん坊?
「………ぅぇ?」
目が覚めると、見知らぬ天井にキラキラと輝くおもちゃが回っていた。
辺りを見回そうとするが、どうにも動きが悪い。
立ち上がろうとしても上手く体に力が入らなかった。
「………ぅ」
言葉も出ない。
というか舌や顎が上手く動かない。
これはどうした事か。
もしや事故か何かで俺の体はどうかしてしまったのか?
「………ぇぅ」
いや、しかしそんな記憶はない。
俺は当直明けで飯を食ってすぐに寝たはずだ。
しかし…そもそもここは俺の部屋か?
頭の中が混乱してパニックになる。
そこにどこからか現れた1人の少女が覗き込んできた。
「ゆーちゃん?」
幼いのにどこか鋭さを感じる目だが、優しげな眼差しを向けてきている。
保育園児程度の小さな少女だ。
小さな少女……なのに、大きく感じた。
「……ぅ」
こんにちは、と言いたかったが無理だった。
だが少女は俺が何かを言おうとしたと察したのか、頬を緩めてどこかへと向かう。
「ママー!ゆーちゃん起きたー!」
少女は母親を呼びに行ったのか、遠くから女性の返事が聞こえてきた。
そしてこちらへ近寄る足音。
再びこちらを覗き込む少女の後ろには、やけに大きく見える妙齢の美女がいる。
「あらゆーちゃん、泣き声もないから気付かなかったわ。おはよ。」
女性は柔らかく微笑みながら俺に手を伸ばした。
……いや、やっぱりデカいな、巨人みたいだ。
逃げる事もできず俺は女性に捕まえられ、持ち上げ抱えられる。
なかなか豊かな胸部をお持ちのようだ。
思わず抱きつきたくなる。
「……………ぅぇ?」
いやいやいやいや。
おかしくね?
何で持ち上げられてんの?
何で抱えられてんの?
こわっ
「ん?どうしたのゆーちゃん?」
「ゆーちゃん、お顔へん。」
女性がキョトンとしてこちらを見て、少女も心配するように見上げていた。
「………ぅぅ……ぅ?」
何がどうなっている。
意味がさっぱりわからない。
あまりの恐怖に、女性に抱えられたままふらふらと視線を彷徨わせると、壁に備え付けられた姿鏡が見えた。
そこには男であればつい二度見してしまう程の美人と、その女性にどことなく顔の雰囲気が似ている小さな少女の姿。
そして女性に抱えられ、鏡に向かって間抜け面を晒している赤子が映っていた。
俺がぱちりと瞬きをすると、赤子も瞬きをする。
俺が試しに女性の胸に顔を預けると、鏡の赤子もその豊満なバストに顔を埋めた。
………ふむ、あれは俺か。
「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
赤ん坊らしいようならしくないような絶叫が部屋に響いた。